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経営企画のミッションと企業の未来

今回、『経営企画アドベントカレンダー2023』を企画し、多くの執筆者の方々にご協力いただき、無事、最終日を迎えることができました。
あらためて、師走の大忙しの中で執筆いただいた執筆者の方々、そして読者の方々に感謝申し上げます。

経営企画アドベントカレンダー2023』の最終日は、僭越ながら私からお届けしたいと思います。


経営の最適な意思決定を支える

経営企画は、その業務範囲が曖昧なゆえに「何でも屋」になってしまっていて、「経営企画業務の定義(=存在意義)」に悩んでいる方は多いです。
その定義の仕方はいろいろあると思いますし、その点に関しては、『経営企画アドベントカレンダー2023』の各執筆陣の方々も各人の視点から整理されているのでぜひご覧ください。

しかし、逆の見方をすれば「定義が決まっていないからこそ面白い」とも言えるのではないでしょうか?
ちなみに、個人的には、「定義やルールややるべきことが決まってて、それをこなすだけ」というよりも、「定義やルールややるべきことが決まっていない中で、それらを創りあげていく」方が好きで、それが可能な領域(=余白)が多いほど燃えるタイプですw

話を元に戻して、「定義が決まっていないからこそ面白い」と考えれば、経営企画というポジションは、積極的かつ主体的に活動すればするほど、活躍の領域は広がっていくと思います。
しかし、一方で、「忙しすぎて活動の領域を増やしている余裕はない!」という声が聞こえてきそうです。
そのためにも「仕組みをつくって時間を創出する」ことが大切です。

たとえば、経営企画の多くの方が携わっている予実管理業務。

Excelやスプレッドシートといった表計算ソフトをつかって業務をこなしていらっしゃる方が多いと思いますが、表計算ソフトは運用すればするほど、関数が複雑になり、ファイルやシートが増えるなどして、経営企画の方(場合によってはその中の一部の方)しかわからない(=メンテナンスできない)といった状態(=属人化)になりがちで、仕組み化の逆を行ってしまいがちです。

結果、表計算ソフトの作業屋になってしまっていて時間が忙殺されるということになりかねません。

経営企画業務の中には、「仕組みをつくって時間を創出する」ことに「向いている仕事」と「向いていない仕事」があると思いますが、表計算ソフトを扱っている仕事の中には、前者の仕事が多い気がします。特にルーティン業務であればあるほど前者の要素が強くなるのではないでしょうか。つまり、仕組み化することで時間を創出できる領域が広いと思われます。

究極的には、「経営企画がいなくてもいい状態」がつくれたとすれば、それは「仕組み化できた状態」とも言えるかもしれません。
わたし自身はどんな業務でも「自分がいなくてもいい状態」をつくるにはどうすればいいかを常に思考しながら仕事をしています。
その状態をつくりつつ、できた余白(=余裕)で新しいことにチャレンジしていきたいと常に思ってます。
現実的にはとても難しいことですが、チャレンジする価値はあるはずです。

さて、経営企画の定義に話を戻します。
あらためて、いろいろな定義はあると思いますが、経営企画の定義(=ミッション)の1つとしては、「経営の最適な意思決定を支えること」があると思ってます。

いきなりクイズですが、この数字がなんの数字かご存知でしょうか?

35,000

選択肢は3つです。

1 経営企画に従事する人の数
2 経営企画として毎月エクセル作業をしている時間
3 人間が1日に意思決定する回数

そうですね、正解は3です。

人間が1日に意思決定する回数は35,000回だそうです。

経営企画のミッションが「経営の最適な意思決定を支えること」とすれば、この1日35,000回もの意思決定の精度と速度を上げることができたら、会社の未来は大きく変わるはずですよね。

経営の意思決定の精度と速度をあげる

では次に、その「意思決定の精度と速度をあげるために必要なこと」についてです。

そのためには状況を立体的に把握する必要があります。
たとえば、これを見てください。

コップですね。

目の前にコップがあるとします。
これは真横から見れば台形に見えますね。
でも、真上から見れば円に見えますし、

斜め上から見れば立体に見えます。

コップでさえ見る視点が異なれば別の顔を持つわけなので、事業においてはもっと異なる顔を持ちます。

たとえば、真横からの情報がマーケティング部のKPI、真上からの情報が営業部のKPI、斜め上からの情報が経理部からのPLかもしれません。

これらの異なる顔をそれぞれの部分だけで見ても、事業全体で起きている状況を正しく認識できないですよね。
つまり、事業全体で起きている状況を立体的に正しく把握することができれば意思決定の精度は上がるはずです。

ただ、現実問題として、部門ごとにバラバラに数値管理をしていることが多いため、事業全体を横断的に正しく把握するのはかなり苦労しますよね。

一方で、皆様の経営を取り巻く環境も刻一刻と変化していると思いますが、そういった変化の激しい環境では意思決定の精度だけではなくて速度も大切です。

そのためには事業のボトルネックをリアルタイムに検知できるかどうかがキーポイントです。
その上で、たとえば、商談数が減っているから来月の成約数は減ってしまいそうだ、というような予測をして、それを踏まえて早め早めに対策を練って行動していくことが大切です。

まとめると、事業の状況を立体的に把握してボトルネックを見つけ出して、かつ、その状況を早く把握して未来を予測することで、経営の意思決定の精度と速度を上げられるはずです。

最適な意思決定にKPIを活かす

これに役立つのがKPIです。

KGI(Key Goal Indicator)とは:
最終的な業績目標を定量的に評価するための指標のこと。重要目標達成指標とも呼ばれ、例えば、売上や利益、キャッシュ・フローといった経営指標がよく使われます。

KPI(Key Performance Indicator)とは:
KGIを達成するために必要な各プロセスが適切に実行されているかどうか、その達成度合いを定量的に計測・モニタリングするための指標。つまり、KPIは KGIの達成までの「中間目標」になります。

KPIマネジメントは、KGIに至るプロセスの途中にある中間地点をKPIで可視化して、問題となっているポイントをKGIの成果が出る前に早く見つけて早く改善することです。

売上をKGIとした場合の例として、Webから見込客を獲得して商談をして契約して売上につながるというプロセスがあったとすると、Webリード数、商談数、契約数がKPI、売上がKGIになります。

これをKPIツリーで表現するとこうなります。

KPIツリーとは何かというと、KGI(この例では売上)を構成する要素をロジックツリーのフレームワークを使って構造分解したものです。

KPIツリーをつくるときのポイントは2つです。
1つ目はロジックツリーのフレームワークに沿ってやること、2つ目が上の階層のKPIと下の階層のKPIの関係を四則演算、つまり足し算、引き算、掛け算、割り算で表現できるように分解することです。

この図に沿って説明すると、

  1. 売上を分解すると「売上 = 契約単価 × 契約数」になる。

  2. 契約数をさらに分解すると「契約数 = 成約率 × 商談数」になる。

  3. 商談数をさらに分解すると「商談数 = アポ獲得率 × Webリード数」になる。

といった具合に、ロジックツリーのフレームワークに沿って、どんどん四則演算で分解していくイメージです。
このようにすることで、「売上(=KGI)」を構成するKPIがMECEに洗い出せます。

このようなロジックツリーのいいところは因果関係がわかりやすいということです。
たとえば、契約数の達成状況が悪かった時に、その原因は下の階層である成約率か商談数のどちらかに問題があるはずという、因果関係がわかりやすくなります。

経営企画はどこまでのKPIをモニタリングするべきなのか?

再び、Webからリードを獲得して、それに対して架電してアポをとって商談し、新規の契約に繋げて売上に至る、というプロセスで考えてみます。

たとえば、次の3つのKPIツリーを見比べてみてください。

ケース①は結果指標のみで、ケース②はもう少し範囲を広げてセールスチームのKPIまで、ケース③はさらに範囲を広げてマーケティングチームのKPIまでがKPIツリーに入っているケースです。

ケース③のように、マーケティングとセールスをつなげて、売上というKGIに至るプロセスの全体を俯瞰して見ることが重要です。

このうち、右側に行けば行くほどプロセス指標(または先行指標)で、左側に行けば行くほど結果指標(または遅行指標)になります。

この例で言うと、売上がKGIですが、これを解像度を上げて分析するために、「拠点別の売上」や「商品別の売上」のデータをとって分析している会社も多くあります。
つまりケース①の類似パターンです。

しかし、これらは結果指標(KGI)の見え方の粒度や角度を細かくしたものであり、あくまで結果指標であってKPIではない、と思います。
KPIの定義を思い出してください。
KPIは KGIの達成までの「中間目標」でしたよね?
なので、KPIはプロセスの途中にあるものであって、結果の細分化ではないです。

そして、経営企画がモニタリングする範囲は、ケース①よりケース②、ケース②よりケース③が望ましいと思います。
広い範囲がモニタリングできていればいるほど、事業全体を見渡せている状態でしょう。
モニタリングする指標のすべてが、経営者への報告対象になって意思決定に活かされるとは限りませんが、その前提として、経営企画としては、まずは横断的に把握しているかしていないかは大きな違いです。

「横断的に把握する」という一例を考えてみます。

たとえば、マーケティングチームで「リード数が計画通り獲得できていない」という報告が経営会議であったとします。
マーケティングチームという「部分」で考えればこれは課題かもしれませんが、果たしてそれが全社的な「全体」の課題でしょうか?
たとえば、リード数が計画通り獲得できていない状態であったとしても、セールスチームがリソース不足で獲得リードのすべてをさばききれずにいたら、「全体」としてのボトルネックは、マーケティングチームのリード数ではなくてセールスチームのリソース不足か、または生産性が低いか、という点に事業全体の課題があるかもしれません。

結果指標とプロセス指標の両刀使いになる

KPIにはKGIに至るプロセスの中で、成果(KGI)に近い結果指標と、成果から遠いプロセス指標があり、できるだけプロセス指標を設計して把握できるようにしておけば、早め早めに成果をコントロールできます。

たとえば、Webリード数の実績が計画に対して減っているとなれば、アポ獲得率が計画通りだとしても、そのうち商談数が減りそうだと予測できます。さらに、商談数が減ってしまえば、成約率が計画通りだとしても、そのうち契約数が減りそうだと予測できます。そうなれば、契約単価が計画通りだとしても、そのうち売上が下がるということが簡単に予測できるので、「別の方法で商談数を確保しよう」といったように「売上が下がる」という結果が出る前に先手先手でコントロールをしやすくなります。つまり、プロセス指標をもとにKGIを予測して、そこからの逆算でマネジメントしていきます。

このように、

  1. まずは未来を予測する。

  2. 次に、その予測結果と目標とのギャップを知る。

  3. そして、その差分を埋めるにはどうするかを考えて実行する。

こういったサイクルを早めることができれば、予算達成の再現性は高まるはずです。

このようなプロセス指標は、KPIツリーの階層を深く分解すればするほど出てくるので、ぜひ一度、KPIツリーを10階層くらいまで分解してみてください。

一方で、先ほどのケース①よりケース②、ケース②よりケース③の方がモニタリングするKPIの数は増えるので、「それだとさらに忙しくなる!」と思われるかもしれません。しかし、ここは前段でお話しした「仕組み化」です。

そもそも、KPIは「重要な業績評価指標」なので、「そんなにたくさんあるのはおかしい(=もっと絞り込むべきだ)」という考えがあるかもしれません。

たとえば、血液検査を思い出してみてください。
血小板、コレステロールなどなど、たくさんの指標がありますが、その結果を1つ1つ見ることは私はしないです。
その中でも、基準値を外れて赤色になっている指標や、前回と比べて悪くなってしまっている指標だけを見ます。
モニタリングする指標が多い方が健康に近づきやすいのと同じように、多くのKPIをモニタリングする方がより目標達成に近づきやすいはずです。
KPIというと重要な業績評価指標なので、その中でも重要なものだけを見ればいいと考えがちですが、その絞り込みがとても大変です。
先ほどのようなKPIツリーをつくって100個のKPIが出てきたとして、その中から5個重要なものを選べと言われたらどうしますか?仮に頑張って決めたとしてもみんなが納得するかというとそうでもないですよね。
血液検査の例で言うと、「あなたはこの指標だけ見てればいいから」と言うことで検査結果表に5個の指標しか記載されていなかったら納得いかないですよね。
つまり、いきなり5個を選ぶのではなく、まずは100個のKPIをモニタリングしながら、その中で異常値を特定して、みんなでその改善に取り組むと言うPDCAをまわす中で、だんだんと重要な5個が絞られてくると思います。

予算とKPIの両刀使いになる

KPIの数が多くても、その中から、達成率が低いもの、下落傾向が続いているもの、下落率が大きいものといった課題となっているKPIを誰でも発見しやすい「仕組み」を作って、それらを重点的に改善します。
ただ、それぞれのKPIの状況が良いかどうかを判断するためにはその基準値がないと判断できません。

そのために、予算をKGIとして、それを達成するためのKPIをKPIツリーで設計し、予算を達成するために必要なそれらKPIの計画値を予算(KGI)からの逆算でたてておきます。
そうすれば、実績が出た時に、予実差異の原因として、どのKPIがよくてどのKPIが悪いのかの判断をしやすくなります。

繰り返しになりますが、これを部門横断的にやることが大切です。
たとえば、マーケティングチームのKPI、セールスチームのKPI、管理部が持っているPLなど、部門ごとにバラバラに管理されがちなKPIを横串で刺して全体を俯瞰して鳥の目で全体最適な視座で見れるようにします。
あとは、PDCAのスピードを早めるために週次でPDCAをまわす。

これを繰り返して組織として習慣化することで予実の精度がきっと上がるはずです。このように、予実管理という業務1つにしても、仕組みをつくって組織として習慣化することが経営企画のミッションであって、作業をすることでは決してない、と個人的には思ってます。

ただ、多くの指標を管理するには表計算ソフトでは限界だし、関数が崩れたり、メンテナンスが特定の人に依存するなどのガバナンスの問題もあります。
上場企業やIPOを目指す企業にとってはこの辺りはかなり問題になるはずです。

少し脱線しますが、私たちのScale Cloudは、そのような問題をクリアして、予実管理とKPI管理を一元化して運用しやすいクラウドシステムを提供してますし、KPIツリーの設計や、KPIの運用面でのサポートもしています。
予実管理をするためのシステムはたくさんありますが、KPI管理も一元的に管理ができて、かつ、その設計や運用のノウハウがあってサポートが受けられるという会社は他にはないと思いますので、もしご興味があればぜひデモ画面含めてご案内させてください。

さて、話を元に戻して、予実の精度を上げるためのポイントは、マーケティングやセールスといった現場にあるプロセス指標となるKPIまで範囲を広げて経営企画がモニタリングし、予実管理と紐づけて一元的に管理をしていくと言う点。
つまり、PLだけの管理ではなくKPIまで一元的に管理できているか?どの範囲のKPIまで一元管理できているか?それらが事業側と管理側が一体となって共通認識を持ってPDCAをまわせているか?という点が重要です。
これは、管理部と事業部が二人三脚でゴールを目指すイメージです。管理部だけが頑張っても思うようにゴールできません。

経営企画の未来と企業の未来

経営企画がその活動領域を広げ、事業部も巻き込みながら全社的な仕組みをつくる上では、主体的かつ積極的に動いていくこととコミュニケーションが大切です。
私たちは、定期的に経営企画の方限定の飲み会をしていますが、そこにはそのような方々が多く、「経営企画の未来は明るいな」といつも感じます。
来月は新年会をやりますので、もしご興味あればこちらからエントリーしてください。

経営企画の方々の、「横のつながりが少なく情報交換の機会がなかなかない」という悩みを解決していいご縁の場になればいいなと思って開催しており、毎回、上場企業や上場準備企業を中心に、経営企画の方々が30名ほど集まって、カジュアルに情報交換等をしていますので気軽にご参加ください。

さて、また話が脱線してしまいましたが、そろそろまとめに入ります。

この国を支えるビジネスの場では、部門と部門、人と人の間には多くの「境界(=壁)」が存在します。事業部と管理部の壁、マーケティング部と営業部の壁、部内でもAチームとBチームの壁、チーム内でもCさんとDさんの壁といった具合です。
このような壁があればあるほど、有機的なつながりが薄れ、豊かな自然界とは対照的に、持続的に発展する生態系を維持できなくなると思います。
その結果、不確実性が高まり先行き不透明感が増す現代社会において、激しい環境変化に柔軟かつ迅速に対応できず、持続的な事業成長や経済成長が難しくなっています。

そこで私たちは、Scale Cloudをとおして、部門やチームや人が有機的につながって、共存共栄しながら持続的に発展していけるエコシステムを創り、育て、未来に届けていきたいと思い、日々邁進しています。

組織全体の業績目標と部門ごとの目標を紐づけ、部門同士が連携して実行し、進捗状況や結果について共通認識を持って振り返り、議論し、次の施策を意思決定して、また実行する。
この事業サイクルを、部門横断的に連携しながら推進するインフラを構築し、組織全体の連携と組織横断型のPDCAが促進される仕組みをつくることが、きっと、企業の持続的な成長につながるはずです。

そして、「企業内でそういったことを推進していける人は誰か」となるとやはり経営企画の方々ではないかと強く思っています。

経営の最適な意思決定を支え、それを実行する仕組みと習慣をつくる。

経営企画のミッションをこのように捉えるとワクワクしませんか?
そのワクワクの先に、皆様の企業が持続的な成長を成し遂げている未来があると信じていますし、私たちも皆様と一緒になって、その未来を実現していくお手伝いをしていきたいと思います。

さいごに

最後に、今回『経営企画アドベントカレンダー2023』に執筆いただいた方々の記事をこちらでご紹介します。
とても素敵な記事ばかりですので、ぜひあわせて読んでみてください。
みなさんの業務に彩りが出る一助になれば幸いです。


書籍を出版させていただいています。
起業してからの約16年間で多くの企業とお付き合いさせていただきましたが、成長する企業や組織には、「数値の大切さを知っている」という共通点があるように思います。
単に知っているだけではなく、数値を使って事業の状況を客観的に見て、考え、意思決定して行動することが習慣化(仕組み化)されていました。
本書では、KPIという数値を活用して、ロジカルに、スピーディーに、組織的に、PDCAをまわす仕組みを書いています。
事業目標を達成するための仕組み、さらに、その目標達成を一時的なもので終わらせるのではなく、継続的に達成し続けることができる仕組みづくりを、具体的に実践することにこだわって書いていますので、少しでもみなさまのご事業のお役に立てれば幸いです。

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