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スタートアップにおける経営企画の役割とは

最近ファンズ社のアドベントカレンダーを投稿してホッと一息をついていたところなんですが、今年は新たなトライとして『経営企画アドベントカレンダー』が企画され、そのうちの1日を担わせていただくことになりました。

タイピングし始めてから、1ヶ月に2回アドベントカレンダーを作成するというスケジュールがいかに無謀だったのかを痛感し、加えて締め切り日を1週間間違えて、完全に涙目になりながら投稿しておりますが、温かく見守っていただけますと幸いです。。


簡単に自己紹介

はじめましての方も多いと思いますので簡単に自己紹介を…まず所属しているファンズについてご紹介します。

FYI:ファンズとは
ファンズは資産運用したい個人と、資金調達したい企業をマッチングするマーケットプレイス"Funds"を運営するFintechのスタートアップです。金融的に言えば、擬似的な個人向け社債をオンラインで発行できるサービスとも言えます。12月時点で累計500億円以上の取り扱いを達成し、特に上場前後のスタートアップ企業の新たな資金調達手段として活用していただいております。

Funds(ファンズ) - 貸付ファンドのオンラインマーケット

ファンズではCFOを務めており、財務・管理、経営企画(人事)、オペレーション部門を管掌しています。本題に関わる経営企画経験については、キャリア1社目のスタートアップから一貫して経営企画を務めており、(スタートアップでの)経営企画キャリアは通算して5~6年程経ってきています。

よく自分はスタートアップor/andファイナンスオタクと言われるのですが、そんな趣味を持ちながらも、社会課題を本質的に解決するような本物のスタートアップにファンズがなれるよう日々活動しています!

また、今年7月に京都で開催された国内最大のスタートアップカンファレンス "IVS" では、NEXT CITY企画責任者を務めました。この辺がスタートアップオタクと言われる所以なので、こちらもせっかくなので紹介しておきます。


テーマ

さて、本題に入っていきたいと思いますが、今回のテーマは『スタートアップにおける経営企画の役割とは』とさせていただきました。

諸先輩方がアドベントカレンダーで経営企画という職種に対する優良なTipsをまとめてくださっていますので、そのノウハウを背景にスタートアップという企業フェーズや制約の中で、それがどのようにワークするのかを原体験を踏まえて書いてみたいと思います!



経営企画とは何か

スタートアップの経営企画を語る前に、念の為経営企画機能とは何かという話しを置いておきたいと思います。この点については同アドベントカレンダーに参加されている黒田さんの記事が端的にまとめられていたので、引用サせていただきたいと思います。

■経営企画の主な機能
・中長期経営計画の策定
・中長期経営計画の進捗管理
・単年度事業計画の策定
・単年度事業計画の進捗管理
・M&A、新規事業戦略の推進
・取締役会、経営会議の企画進行
・社長の意志決定のサポート
・社長特命案件の推進

経営側視点と事業側視点から見る経営企画機能とは、こうあるべき?/2023年経営企画アドベントカレンダー|黒田浩志 (note.com)

また、もう少し上位概念である経営企画の存在意義という点では、同じく山田さんの投稿が素晴らしかったので引用させていただきます。

一般的に経営企画とは、事業計画の策定や管理、市場動向や競合企業に関する調査分析等を行うとされています。確かに、全体としてそういう業務を行っていることは多いものの、どうも説明としてしっくりこないなと感じています。
前述したようなキャリアを歩んできた私だからこそ考える経営企画とは、「組織を前に進めるためのあらゆることに取り組む存在」だと考えています。「組織を前に進める」とは、その組織が掲げるビジョンの達成や解決したい課題に対するあらゆることに取り組むことを意味しています。つまり、その時その場で必要な役割に自らを変えながら、組織の今とみらいを考えて動くのだと思っています。こう思えたのも、キャリアの各段階において、組織の中で自らの役割を外圧によって変えざるを得ないことも、自発的に変えてきたこともあったからだと感じています。
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とある方と経営企画について話していたとき、その方は「経営企画とは名前の付いていない仕事に名前を付けることだ」と言っていました。言い得て妙だなと思いました。誰も拾っていない仕事を拾い上げ、形にしてどこかの部署に渡す役割を果たすのも、経営企画としての重要な役割の一つだと思います。

コンサル→スタートアップを経た非営利セクターでの経営企画 / 2023年経営企画アドベントカレンダー|山田佳介 (note.com)

引用させていただいた2つのレイヤーから見た経営企画で概ね輪郭は掴めてきたかと思いますが、別の観点から経営企画の費用対効果をどう推し量るか(=つまり経営企画の優秀さの尺度は何か)という点で補足させていただきますと、個人的には経営企画が手掛けた意思決定によって、生み出したインパクトの総量が評価対象になると考えています。

具体的な成果指標としてポジティブインパクトにおいては財務リターン、非財務リターンのような企業価値の向上に与えた影響を評価し、ネガティブインパクトにおいては競合脅威の排除、コンプライアンスリスクの低減、予実ボラティリティの低減等といった、企業価値の毀損に関わるリスクを抑止したことで防ぐことができた価値の総量を評価するイメージかと思います。

この成果指標を念頭に、経営企画の果たす役割についてスタートアップという環境で考えてみたいと思います。


スタートアップにおける経営企画

さて、本題のスタートアップにおける経営企画というテーマになりますが、一般的認識との差異がある点をまず整理したいと思います。

  • 一般的な経営企画の環境

    • 投下可能な資源を豊富に保有しており、全体最適による意思決定を導くことで飛躍的に企業価値の向上が実現できるような環境

    • また成熟産業、事業において、概ね回帰分析を行う中でトレンドラインが見えており、中長期計画が線形で策定しやすく、そのアウトプットについてサプライズが少ない

    • 職務分掌も明確であるために経営企画と事業部の役割分担がハッキリとしている

  • スタートアップにおける経営企画の環境

    • 投下可能な資源は極めて有限であり、事業仮説もビジョンもトレンも大きく変わりうることから、過去から未来を見通すことは困難

    • 経営者と伴走することで非言語化領域を言語化、数値化し、事業や組織等の各構成要素の理想定義することが求められる(加えて非言語化領域が広いため、意思決定の解釈にズレが生じやすく合意が困難)

    • 分掌は曖昧であるがゆえに、必ずしも計画策定や管理だけが役割ではなく時には自身が先陣を切って問題解決に向かわなければならない

※あえて差分が強調できるように記載しておりますので、必ずしもそれぞれ正確な定義とは言えませんが、概ねこのような前提環境にあると思います。

この整理からも分かるように、スタートアップの経営企画とは用意されたデータや環境から示唆を生み出すのではなく、そもそも取るべきデータの定義から収集環境、仕組みの構築を行うことが求められます。

そして時にそれを自らで分析し、示唆を出した上で経営判断もしくは事業推進に生かすという意思決定のライフサイクルを一貫して担うことが求められます(ここから上場に近づくに連れ、経営企画が主導とした管理体制から各部門への移管や、仕組みによるガバナンスの構築等、より再現性を求められるようになります)


経営企画を立ち上げるべきタイミング

さて、では経営企画はどのフェーズになれば効果的になるのか少し考えて見たいと思います。

  • シード期(プロダクトローンチ前)

    • まだ事業仮説を構築する段階であり、仕組みの構築やチームにおける再現性とは無縁のフェーズであり、経営企画は基本的に不要

  • アーリー期(プロダクトローンチ後)

    • プロダクトがリリースされ、少しずつトラックレコードが生まれ始めている状況。一方でPMF(Product Market Fit)まではまだ道のりがあり、最適解を模索するよりかは量を追って仮説精度を高めるフェーズであり、経営企画の本領発揮にはまだ遠い

  • ミドル期(PMF後)

    • PMFが達成され、今後一定の事業仮説に対して経営リソースを大幅に投下し、一気にグロースを目指していくフェーズ。この段階から「どれくらい踏めるのか」「何の指標を見て投資判断すれば良いのか」「そのためにいくらお金がいるのか」といった、数的根拠に基づく意思決定と統率が求められるようになり、経営企画の立ち上げ段階と言える

  • レイター期(事業拡大・多角化)

    • 基幹事業が好調に成長するようになってからは、過去蓄積してきたアセット、ケイパビリティを生かして、事業拡大やマーケットの多角化に挑戦するフェーズ。この段階では機能別組織から事業部別組織への移管や上場準備に伴う予実管理の高度化等の管理側面と、最適資本構成の検討やMake or Buyの判断を経た事業推進・買収等の事業側面の両方を求められることもあり、経営企画のような全体最適・整理を行う機能の必要性が必須と言える

したがって、個人的な原体験も含めてですが、スタートアップにとって概ねミドルフェーズ(シリーズB以降くらい)からが、経営企画の効果を最大化できるフェーズと考えられます。


スタートアップ経営企画の人材要件

次にスタートアップで活躍する経営企画の人材要件を考えてみたいと思います。最終的には経営企画が管掌する領域および役割分担次第ですので、あくまでこの記事で紹介している経営企画のスコープを前提に整理してみます。

※全然MECEではないのですが、個人的に大事だと思うところを程よく適当に羅列してみました。笑

  • スキルセット

    • Must

      • スタートアップのゲーム理論に対する知識

      • 管理/財務会計に関する知見(最低でも財務三表が作成できる)

      • 資本政策に関する知見(調達ありきなので)

      • 基本的な戦略・計画策定に関する知見

      • 基礎的な統計知識(自らでデータ抽出もできると望ましい)

      • ステークホルダーとのコミュニケーション能力

      • 社内部署の横断的なコミュニケーション、関係構築能力

      • MOSの高度な実務能力(時間ないので本当に大事…)

    • Nice to have

      • M&A、PMIに関する実践的経験や知見

      • IPOおよび上場準備に関する実践的経験や知見

      • 資金調達に関する実践的経験や知見

      • 新規事業の立ち上げ、事業グロースに関する実践的経験や知見

      • 多言語コミュニケーション能力

  • マインドセット

    • Must

      • アンラーン思考(前提から変わることが多いので)

      • コトに向かう姿勢(辛い真実をきちんと伝える)

      • 別解力(問題定義~答えを見出す力)

      • インテグリティ(ステークホルダーとの信頼構築力)

      • 論理的思考(≒構造化/合理的説明能力とも言える)

なお、マインドセットについては、実際には経営者のタイプとの相性も極めて重要になります。

経営者が数字に疎いタイプであれば、その弱みを補うために自らの計数管理能力の向上や、数的根拠に基づく別解力のパラメーターを強めるべきですし、その逆であればステークホルダーとの対話や事業グロース等のフロントサイドに強みを置くべき、といったチームでの総合力で必要な要件を定義することも重要と思いますので『自社なりの経営企画とは』という問いから整理されることをオススメします。


最後に

ということで、やや駆け足的に執筆を進めてきましたが、一通り書けたので一旦このあたりで締めたいと思います。。(既に納期に遅れており、反省でしかない。。)

本来であれば、自己のキャリアの1場面を切り取ってもう少し深いエピソードトークをしたいなとも思っていたのですが、個別性が高く、ハイコンテキストになりそうでしたので、まずはスタートアップ経営企画の概観という形で投稿させていただきました。

もし個別エピソードも興味ある方については、是非ランチや飲みの場でカジュアルに語りありましょうー!

まだまだ短いキャリアではありますが、2度スタートアップの経営企画立ち上げ~管掌役員までのプロセスを経験し、おおよその再現性が見えつつある状況ですので、もしスタートアップの経営企画(FP&Aや社長室等の関連含む)キャリアで悩んでおられることがあれば、遠慮なくご相談ください!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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