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この時期になると思うこと、あらためて経営企画の役割について思うこと


はじめに

自己紹介

 鈴木と申します。このたび、お世話になっている広瀬さんのご依頼を受けこちらの記事を書かせていただくことになりました。

 私のキャリアは、実は経営企画よりも営業のキャリアの方が長く、新卒で小売企業に入社してから、20年ほどを営業組織のなかで過ごし、その後、経営企画で約7年のキャリアを歩んできています。

 途中、所属する事業部の縮小にともなう異動も経験し、将来のキャリアについての不安がきっかけで企業固有のスキル以外の習得に力を入れるようになったことが、いまの仕事にもつながって良かったと思っています。
 1社の中で、ときに組織の論理で、ときに周囲の方々のサポートで、ときに自らの意思で、キャリアがつくられてきたのかなと感じています。

 なみいる専門家の方々に混じり、記事を書かせていただくことに気おくれしている感は否めないのですが、とある1つ企業のなかでの経営企画としての役割をあらためて考えてみて、シェアしてみて、少しでもみなさんの示唆みたいなものにつながれば幸いです。

私がいる経営企画組織の役割

 お話を進めるまえに、私が身をおく企業のなかでの経営企画組織の役割をご紹介します。業務分掌にはおおまかに以下のようなことが書かれています。

 ・中期計画、資本政策の立案
 ・予算編成、予算統制
 ・経営諸資料の作成
 ・市場調査、需要予測等、外部環境に関する調査
 ・その他経営に関して必要と認められる事項 ←なんでもやる

 この「なんでもやる」のなかに、M&Aや社内PJ管理、組織編制なども具体的に書いてあったりします。
 私なりに、組織にあるホワイトスペースを埋めること&より大きな視座からの課題発見、解決を図ることと解釈をしています。


この時期になると思うこと

 この時期は、来年度の予算や中計の話がもり上がってきます。
 事業の現場に近いところでやっていた時は、上司から「来期xxx%やりたいんだよね」とか聞きながら、目標数字が既定路線のように降ってくるように感じていました。

 そしていざ、自分がその事業の予算をつくる立場になると、自分が考えたプランを自分で実行して、自分の成長も実感できて、がぜん仕事がおもしろくなってきます。
 一方で、自分も数字を降らせていたことがあったなぁと反省もあったりします。

 このように、だれかが考えた数字をやるという構図になると、短期的には、外部環境の読みを外さなければ、数字はついてくるのですが、組織のメンバーの自律性がなくなるということを経験則として理解をしている方も多いのではないでしょうか?
 教科書的にいうなら、職務設計の職務拡大と職務充実をつうじて、メンバーの自律的な成長につなげることが大切ということでしょうか。

「考える」と「やる」がセット

 なので、本質的には、「考える」と「やる」がセットになっていないと、長い目で見たときの組織の活性はうしなわれていくのだと思います。

 組織が大きくなれば、「考える」と「やる」の分業がすすむことになって、それぞれが閉じた世界のなかで、「考える」だけ、「やる」だけになってしまう。分担して、それぞれが役割として職務をおこなうことが効率の面では必須だったりしますが、一定の非効率を許容しながら、役割を超えてそれぞれが主体的に、高い視座でコミュニケーションが取れることが理想だと思います。
 
 そう思うにいたった経緯がありまして、私が経営企画の担当になったときは、売上規模が500億円くらいでしたが、いまは、おかげさまで1000億円を超える規模にまでなってきました。
 当初は、営業のメンバーとも勝手しったる者どうし、たとえば、予算設定をするとき、前提となる内外の事業環境についての認識のすり合わせにはあまり労力をかけずとも、すんなりと数字の話ができていました。

 組織が大きくなる過程で、おなじ営業のメンバーとコミュニケーションをとるときでも、環境認識といった前提条件にギャップがあって、そのギャップがあるまま数字の話をしていった結果、やらされ予算をつくってしまうことになるのではと不安になっていました。
 また、いまから振り返ると、組織の人数や階層が増え、「考えない」人が増えていくような感覚を持ち始めたのもその不安を大きくしていたのだと思います。

「なんでもやる」役割

 そこで「なんでもやる」役割のある経営企画が、組織のコミュニケーションを活性化させる必要を感じたという次第です(ちなみに私はこの手の企画が得意ではないので、社内でできる人に経営企画にきてもらいました)。
 
 最近では、まずは上位レイヤーからということで、情報共有、認識合わせ、ブレスト、意見交換、諸々の時間が増えています(以前にもまして、役員の予定に空きがない、社内のミーティングルームの予約がとれない)。

 いかに、「考える」と「やる」をセットで組織のいたるところで実行できるか、ひとつひとつの取り組みは小さくても、当事者が成長しているかに組織の将来がかかっているという思いでやっています。
 そして、あきらかに、まさにこれからつくろうとしている計画策定が進めやすくなったと実感がでてきました。

 このことが、業績や企業価値としてはね返って、答えが出るのは、何年も先かもしれませんし、答えが出ないかもしれませんが、短期目線と長期目線のバランスをとるというか、両立をめざすのが経営企画の役割であり、それを担う者の仕事の悩みでもあり、醍醐味であると思います。


とはいえ、本来的な経営企画の役割をまっとう

 つらつらといろいろ書いてしまいましたが、経営企画の一番の役割は、やはり、企業価値を上げるために、定量的な分析によって、全社戦略や事業運営に重要な示唆を提供することだと思います。
 その分析のために大切なものは、
・深い「事業理解」
・それに基づく「管理会計のデザイン」
・それを実現できる「オペレーションとツール」
だと考えています。

事業理解

 これはいろいろな方々もおっしゃっていることなので、説明のいらないポイントかもしれませんが、個人的には、戦略レベルの理解から、事業の現場オペレーションレベルの理解まで必要を考えていて、そのためには、一定の現場経験があった方がよいと考えています。

 経営企画の組織のメンバーは事業推進の主体者ではないことがほとんどです(主体は営業組織のメンバー)。とはいえ、↑でも書いたように、「考える」だけでなく、あたかも「やる」主体者であるかのように「考える」ことができるかが大切だと思うので、経験に裏打ちされた深い事業理解が経営企画組織のなかで共有されていることが必要だと感じます。

管理会計のデザイン

 ここでのデザインは、財務情報と非財務情報を用いて、様々なKPIの管理をするというレベルから、事業戦略に合わせて管理会計の根本的な見直しをするというレベルまでを含んでいます。

 根本的な見直しをするときの大きな論点は、従来コストセンターだった部署のプロフィットセンター化とそれにともなう配賦基準の再構築だと考えています。
 あくまで、事業戦略に照らして必要な場合という前提ですが、より多くの組織をプロフィットセンター化することは、採算意識の醸成という意味で目指すべき方向だと考えます。

 ただ、配賦基準が適当だと、組織全体でつかえないものになってしまうので、その設計がポイントになってきます。事業サイドで配賦コストの負担についての当事者としての考える経験があると、このあたりの設計の精度(=納得度)も変わってくるという実感があるので、先述したような事業理解も大切になってくるというつながりです。

 一つの事業の視点だと、チャネルミックスや商材カテゴリミックスを管理していくことになりますし、グループ経営の視点では、事業ミックス(=事業ポートフォリオ)を管理していくことになり、私の目下の課題は、大きくなっていく事業に合わせて、グループの事業会社の枠を超えて、これらを統合的にみていけるように管理会計のアップデートをすることだと考えています。

オペレーションとツール

 管理会計の枠組みができたら、それを実現するオペレーションが必要になってきます。経理であれば仕訳を変えたり、営業上のアクションの定量データをとる仕組みをつくったりと、特にKPIの設計や採算管理の粒度に合わせてオペレーションを整えたり、IT基盤を整える必要が出てきます。

 また、それを運用できる管理会計のツールも必要です。↑で書いたことにも関係するのですが、組織の一部の人のための管理会計よりも、より多くの人が考えて、行動に移すための管理会計という位置づけがポイントだと思います。

 主催者の広瀬さんのScale Cloudのような社内のコミュニケーションを前提にした良いツールもあります。

 あとは、リアルタイムの情報更新ができるオペレーションができれば、組織全体の「考える」→「やる」サイクルが早く回ることで、人が育ち、事業がより成長していく。

 こんなことを考えながら、理想像をこれからも追い求めていきたいです。「なんでもやる」経営企画じゃないと実現できないな・・・と話がループしたところで締めたいと思います。

おわりに

 この企画の主催者の広瀬さんからの依頼があったときは、なにを書いていいか考えがまとまらずにおりましたが、いろいろと考えを巡らせて、言葉にしていくことで、あらためて、私自身の振り返りができたり、最近もやっとしていたことが、少しクリアになったりして良かったなと思います。
 この機会をいただきました広瀬さんに感謝です。
 また、最後までお読みいただいた方もありがとうございます。どこかでお会いすることがありましたら、あれ読んだよと声をかけていただけるとうれしいです。

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