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太宰治「秋風記」の空白を解く

太宰治「秋風記」の空白を解く

私は、太宰治の作品を読むのが好きだ。
痒い所に手が届くように、心のパズルにピースがすっとはまるように、冒頭の一文がありがたくて思わず天を仰ぎ、胸の内は拍手喝采、声に出して読めば心は夜の海のように静かになって、あるいはうっとりとした気持ちにさせてくれる。そういう、不思議な魅力がある。私にとっては、物語の内容というよりも、言葉の並びがそうさせているのだと思う。

もはや、物語を読んでいる感覚ではない。

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宝石の国を読んで2

宝石の国を読んで2

※最新話まで内容に触れています

買ってからもずっと本棚にしまったままだった宝石の国12巻を、タイミングが来てやっと読んだ。
また行き場のない感情になってしまったので、文字を打っている。

前に感想文を書いた後、奇跡的に連載が再開されることを知った時はびっくりした。

12巻を読んだら、前に読んだことのある箇所がところどころ変わっているような気がして、あれ、こんな台詞だったっけ…?ってなったりした

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宝石の国を読んで

宝石の国を読んで

地獄は地獄に存在するとは限らない。

まず、『宝石の国』にはある。

主人公がこんなに報われない漫画を読んだのは初めてだった。シンジくん(エヴァ)も理不尽に遭う面でかなり可哀想だと思っていたけど、味方がひとりも居ないことで地獄の薄まり方がかなり違う。

読み終えた後、体調に影響を及ぼすくらいの、どす黒い何かが体内に溜まっている気がする。本を閉じて、悪夢から現実に戻ってきても、思い出す度にやるせなさ

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ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見て

ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見て

※内容に触れています

ヴァイオレット・エヴァーガーデンの特別編集版と外伝を見た。

何も知らずに予告映像を見た時、それだけで少し泣いてしまったので気になって見た。どっちもラスト数分間はずっと泣いていた。外伝では日常的なシーンでもなんだか涙ぐんでしまったり、ストーリーが終わった後も泣いていた。

愉快な音楽の中で足元や作業だけが映る場面は、ジブリみたいでワクワクしたり、衣装や小道具、髪や瞳の色が映

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真実は心の中に-シン・エヴァンゲリオン-

真実は心の中に-シン・エヴァンゲリオン-

※今までのエヴァンゲリオンのネタバレを含みます

心の拠り所

エヴァンゲリオンというのは、最初からとにかくシンジくんが可哀想すぎる。

自分を捨てた父親から突然呼ばれたと思ったら、訳の分からないものに乗って敵と戦えと言われ、嫌だと言ったら、じゃあもういらないと言われる。

事あるごとにそうやって逃げるのねと言う周りの大人の人達に困惑する。

旧劇ではトウジ、新劇ではアスカが乗ったエヴァを自分の意

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「影裏」にみた最大の謎

「影裏」にみた最大の謎

(賢い解説などはなく、私の感想です。内容に触れているので、まっさらで見たい方はご注意を...!)
※画像は全て公式サイトや 、予告映像にあるものです。

映像について「影裏」

昨年映画情報が出た時点で日本俳優2pickの最高映画じゃん!と楽しみにしていた。

そして、綾野剛と松田龍平の最高かっこいい映像ではあった...!(好きだから)

儚げな危うさがある綾野剛と、淡々としていて掴めない空気を纏

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パラサイト−半地下の家族−を見て

パラサイト−半地下の家族−を見て

この映画は、見終わったあと感想や疑問をいろいろ話したくなってしまう映画だけど、同時にネタバレ厳禁なのでここに残したい。

以下ネタバレ注意!
(これから映画を見る人は読まないで!!)

ギウとダヘの愛

まずチェウシクさんがかっこよかった〜〜!
脈の演出がよかった、、
(韓国作品は何かを見るたびに必ず出演俳優を好きになってしまう悲劇...)

血塗れの惨劇の中、目の前に刺されたギジョンがいようとも

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