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奴隷商人とその時代 Ⅱ

奴隷商人とその時代 Ⅱ

奴隷商人とその時代 Ⅰ の続き。

1.塩野さんはそれでもよく書く方だが、ローマ史、ヘレニズム史の文献や小説を読んでいても、そこに生きた人間たちの生活がさっぱりイメージできない、
2.あまりに17~19世紀のアフリカ―アメリカの黒人奴隷貿易の印象が大きすぎて、紀元前から続いた奴隷制度、それが現在の白人至上主義の時代ではなく、コーカサス系の白人蛮族もいたし、ギリシャ系の白人種もいた、ということを書いているものが少ない、
3.同じく、17世紀のオスマン帝国のハレム制度の印象が大きすぎて、紀元前から続いてあった一夫多妻・一族制度はイスラムのハレム制度と違った形態であったのに、それを書いているものが少ない、
4.例えば紀元前49年と言ってもピンと来ない、

 1.で、例えば、女性にとって重要な鏡。

古代の鏡

 これも古代ローマで21世紀の鏡を想像されては困ります。あんな平板で昔は銀メッキされたガラス製の鏡など、1317年、ベニスのガラス工によって発明された。ガラスに皺のない錫箔を置き、その上に水銀を放置。1カ月ほどかけて水銀アマルガム(水銀と他の錫との合金)として密着させ、余分な水銀を洗い流すというものでした。

 ガラス鏡を日本に伝えたのは、スペイン人宣教師フランシスコ・ザビエル(1506年~1552年)。天文18年(1549)年、ザビエルは周防の大名大内善隆に対し、望遠鏡・時計・鏡(手鏡)などのヨーロッパ製の珍しい道具を贈りました。

 それまでは、鏡として、黒曜石の板状のものを磨いたり、平らな青銅を磨き上げたりしたものを使っていました。

 天照大神が天の岩戸に隠れて、天之鈿女命が八咫鏡で誘い出した、その八咫鏡は平らな青銅を磨き上げたものです。教科書などで見るのは鏡の裏側。表側は平板でした。

縄文海進と古神道、神社、天皇制(20)八咫鏡

※第5章 ●奴隷商人3、紀元前47年

絵美が転位してしまったエミーの体を見たいとムラーに言います。

「せっかく入った体だから、安いよりも高い方がいいでしょ?自尊心の問題よ。まだ、鏡でよく自分を見てないけど」
「エミー、この時代、キミの考えるようなガラス鏡はないぜ。あるのは、黒曜石を磨いた石板の鏡や金属板を磨いた金属鏡だ。銅の鏡だな
「あら!時代をよく忘れちゃうわね」

※八咫鏡(やたのかがみ)、本当はどんな色?

 同じく第5章で、

 大広間は、中心に大理石のベンチの演台が設けられている。演台の上には、地中海世界の津々浦々から集められた男女の半裸の奴隷がポーズを付けて立っていた。さっき、私、じゃない、エミーと同じようだ。

 その周りを、男女のバイヤーが集っている。体を触って筋肉を調べる者、陰部に手を這わせる者。商人はビジネスライクに奴隷を試しているが、一般のバイヤーは目的が夜伽にある。男も女もフェロモンを撒き散らして、奴隷に触れている。

 アラサーの漆黒の肌をした美しいマダム(ムラーは彼女はたぶんエチオピア人だと言った)が、金髪碧眼のアディゲ人(チェルケス人)の半袖で丈が膝上までしかないリネンのチュニックをまとったティーンであろう男子の奴隷の股間をまさぐっていた

 根本から局部の硬度を試すためにすりあげているようで、その奴隷は羞恥と心地よさに複雑な表情を浮かべていた。入荷して間もないんだよ、とムラ―が説明する。こういう場面にはこの子は慣れていなさそうだ。

「なんだ、アフロダイテじゃないか?」とアブドゥラがマダムに声をかけた。「あら、アブドゥラの旦那。こんなところでお会いするとは恥ずかしい」と漆黒の肌のまだ色気が失せない美女のマダムが上目遣いにアブドゥラを見た。「なんだ、おまえ、発情でもしているのか?この男の子がいちもつをおっ立てて身悶えしているじゃないか」

「いえね、夫がね、最近、若い女奴隷にばかり相手にして、私を相手にしてくれないんですよ。それで、文句を言ったら、『しょうがない、一人、買っておいで』って、アウレウス金貨を十枚くれたものですから、それでね、出物を選んでいるところなんですよ」「アフロダイテ、目が潤んでるぞ。アラサーなのにもうエロババアの面をしている。よほど体が飢えているんだな」「そうですよ、アブドゥラの旦那、体が疼いて疼いて」「しょうがないなあ」

「あら?ムラー様じゃあありませんか?連れているのはコーカサスの女ですか?」「なんだ、旦那様に初見か?ムラーの旦那、こいつは、私がアラビアから買ってきたアフロダイテです。もう4年前になるかな?ここへ私が連れてきた時は、清楚なエチオピアのお姫様だったのが、ワイン商人のムラビに売って、奴隷からなんと正妻にまでなっちまったんです。4年前は体を触られるのも恥ずかしがって嫌がったのに、今じゃあ、自分の弟の年みたいな奴隷の股間をまさぐって、目を血走らせてやがる」

「ムラーの旦那様、はじめまして。ムラビの妻のアフロダイテでございます。アブドゥラの旦那にはお世話になりましてね。私に夜伽の術を教えてくれたのもアブドゥラの旦那なんですよ」「あの頃はお前もピチピチだったからな」「あらいやだ、旦那、女はおぼこのティーンよりも私みたいな年の方がいいんですよ。酸いも甘いも噛み分けてますからね」「ふ~む、まあ、女も変わるものさね」

「あら!この子のぶつがちょうどいい具合になったわ。旦那様方、失礼して試してみますわね」とアフロダイテはチュニックから腕を抜くと、奴隷のチュニックをはいで、人目もはばからず、男の子の股間に顔をうずめた。

 そこここで、ひと目もはばからず、奴隷のお試しをしている光景が周囲に散見された。男のバイヤーは陰部に指を差し入れて締りを確かめていたり。女のバイヤーは男のものを舐めたりさすったり。

 古代ローマ時代のことだから、奴隷市場などこんなものだ。ちゃんと試さないと金を捨てることになる。女の子は、持ち主の子供を孕むのだから、良い持ち物をしていて、安産型が選ばれる。男の子は、たいがい、玉抜き竿ありで宦官にされて女主人の慰みになるのだ、とムラ―が説明した。

 中学高校の世界史の授業で習う『奴隷』というと、『アメリカの植民地化と奴隷貿易』であって、それは奴隷商人によってアフリカ大陸から連れてこられた黒人奴隷のことです。16~18世紀のこと。奴隷というと、アフリカの『特に西海岸から連れてこられた鼻が低く広い黒人』をイメージします。

 しかし、奴隷狩り、奴隷貿易などというものは、貧富の差の生まれたメソポタミアの昔から起こっていたことです。

 16~18世紀の旦那様は、アメリカに入植した英国、フランス、スペインなどの白人種で、奴隷は『西海岸から連れてこられた鼻が低く広い黒人』でした。

 しかし、紀元前67年の頃の奴隷主は、ローマ人、ギリシャ人、フェニキア人、エジプト人の支配者階級であり、同国人でも奴隷にしていました。

 さらに、エミーの種族である『アディゲ人(チェルケス人)』は、黒海の東海岸の山間部に住むコーカソイドです。コーカソイドと言えば、ローマを滅ぼしたゲルマン民族の先祖であり、ゲルマン民族が西ローマ帝国滅亡後、今のヨーロッパの主要な白人種になったりしています。

 紀元前46年では、コーカソイドたちはまだあまり欧州方面に北進していません。地中海沿岸のローマ人などの先進民族からは野蛮人と思われていた金髪碧眼の人種です。

 まだ、キリスト教も始まっていない時代、信仰は原始自然宗教だったのでしょう。エミーはその族長の長女で、巫女長という設定です。巫女は神殿娼婦となりますが、族長の娘の巫女長は処女であるはず。卑弥呼みたいなものです。

 紀元前のこの時代、アメリカの黒人奴隷と違う、漆黒の肌のエチオピア人の開放奴隷の商人の妻が、近世であれば、支配階層となるコーカソイドの白人奴隷の股間をまさぐるという光景も珍しくなかったのです。

 ちなみに、有名なミケランジェロのダビデ像のように、欧州人は結構包茎、半包茎が多い。エチオピア人のアフロダイテが買おうとしているアディゲ人の若者も包茎、半包茎だったのでしょう。

 だから、『アフロダイテはチュニックから腕を抜くと、奴隷のチュニックをはいで、人目もはばからず、男の子の股間に顔をうずめた』ということをしないと、性病持ちだったり、包茎、半包茎で不潔だったり、サイズが満足ゆかなかったりするので、せっかくの金貨十枚をドブに捨てるようなものです。

 アフロダイテは、奴隷身分から解放奴隷にしてもらい商人の正妻になりました。旦那が相手をしてくれないので、このアディゲ人の若者を夜の伽に使うのですが、もしも若者を去勢しないで、アフロダイテが妊娠して出産したら、子供が旦那の子かどうかわかりませんから、その子は奴隷身分になります。

 手っ取り早いのが、若者を去勢してしまうことです。中国の清朝の宦官は、玉なし竿なしでしたが、この時代の宦官は、使用方法が一家の後宮であるハレムの女性の性欲を満たすことだったので、生殖能力をなくすために玉なし竿ありとしました。

※第7章 ●奴隷商人5、侵入者、紀元前47年

 アブドゥラは今年で十八才になる。十年前、黒海沿岸から海賊に拉致されてきたコーカサス系の奴隷だ。俺が買い上げた。十代前半の処女のベッピンだったら五十アウレウス(金貨)するが、絶世の美少年のアブドゥラもかなり値がはって、人さらいの海賊共、俺に三十アウレウス(金貨)を要求しやがった。しかし、出してやった。ちょっと話をしたが、美少年であるだけでなく、性格が素直そうであったからだ。

 家に戻ると、執事に命じて、東の国の漢(ハン)から伝わった少年を宦官にする医術を施した。高い金を払ったんだ。竿をちょん切って死なれても惜しい。三割は死んでしまうものな。

 だから、竿(陰茎)は温存して、玉(睾丸)を摘出するだけにとどめた。この方法は、種無しになる代わりに性欲が温存されてしまう。まあ、ハレムに女はたくさんいることだし、俺も全員は面倒が見きれないので、執事のナルセスにも女の性欲処理はさせている。アブドゥラにも「俺のハレムの女はどれでも犯していい。ただ、恋愛感情は持つなよ」と言ってある。

 アブドゥラは「もちろんです、旦那様」と誓った。彼としたら、嫉妬深く力も何もない女には興味がないのだ。それよりも自分の生存を保証してくれる俺が好きなのだ。

 俺はハレムにはめったに泊まらない。よほど女がしつこく求めてきて、疲れすぎて表に帰る気がなくなった時以外は、ハレムの外の表の俺の寝室で眠る。その時は、以前はナルセスに同衾させていたが、ナルセスも年がいってしまって二十二才になったので、最近は、アブドゥラに同衾を申し付けることが多い。

 ナルセスは、丘の家のハレムに残して、女どもの餌食にさせることが多くなった。彼も大変だ。一晩で十三人いて妊娠していない女どものの相手しないといけないのだから。一人では可哀想なので、黒人奴隷のパシレイオスもハレムに通わせる。パシも同じく、竿あり玉なしだ。

 玉なし竿ありのアブドゥラもナルセスも、少年の頃からムラーと同衾していた。彼らは、中国の司馬遷の宮刑のような施術を行い、ムラーの宦官になった。もちろん、刑罰ではない。この時代、普通に行われていたことだった。

 古代オリエントの戦争捕虜の場合、睾丸を残して陰茎だけを切断して奴隷にした風習があったが、この場合は逆で、陰茎はそのままに、睾丸を除去して授精能力を奪ってしまう。

 性交という行為自体を不可能にすることが目的ではない。ハーレムの主人が認めれば、子供は作れないのだから、ハーレムの女の性欲を満たすことも可能なのだ。そして、生殖能力がないので、家族の元に戻ったりもできず、生涯、主人に使えさせるのが目的だ。

 睾丸を除去するということは、授精能力がないだけでなく、男性ホルモンが分泌されないことでもある。中世の教会の男子少年合唱団のソプラノ歌手のようなもので、カストラートと呼ばれる。男性でお女性ホルモンが分泌され、男性ホルモンの分泌が抑えられたカストラートはふくよかな体形になる。

 正常な男性に比べると性欲は劣るものの、それなりにあり、性器の機能としては問題なかった。また、前立腺などから精液は分泌されるので射精はあるが、精子を作る睾丸がないので、子供ができないため、ハーレムのリスクの無いセックスには好都合だった。

 男性ホルモンの分泌がなく、女性ホルモンだけが分泌される状態では、女性らしい体型になる。日本の戦国時代の稚児とは違う。そして、性格も女性化する。愛情深くなり嫉妬心が強い。そして、女性との性交よりも男性との性交という受け身を好み、その男性に強い恋愛感情を抱くのだ。

 時代が時代とはいえ、まあ、面倒くさい話だ。ハーレムの女だけではなく、宦官にまで気を使わねばいけない。

第9章 ●奴隷商人7、パトロヌス、紀元前47年

 このお話の舞台は、紀元前47年頃の共和制ローマの頃。この頃のローマは、ローマ市民権を持つローマ人が人種ヒエラルキーのトップだったが、決して、有色人種差別をしていたわけではない。

 有色人種(セム系・ハム系・アラブ系も含めて)のローマ特権支配階級が、コーカサス系の白人金髪碧眼の奴隷を持つ、ということも多々あった。共和制ローマは、奴隷基本性の経済社会だった。しかし、ローマ人種であろうとも、一旦転落すればたとえ元貴族といえども奴隷となったのである。

 人類のヒエラルキーで、白人種優位、有色人種下位という差別感はこの時代にはなかったのだ。それが生まれたのは、ごくごく最近の近世の頃だ。イエス・キリストだって、セム系かハム系のユダヤ・アラブ人で、21世紀で言う有色人種だ。決して、アングロサクソンやゲルマン系の白人種ではない。

 ユダヤ人、アラブ人の区別だって、近世に生まれた。紀元前の世界では、まだイスラム教は成立していない。彼らが話す言語も原始アラビア語、フェニキア語、コプト語、ラテン語だった。少なくとも言えるのは、遺伝子的にほぼ同じだが、ユダヤ教を信仰する人々とそれ以外ということだ。イエス・キリストだってまだ生まれていない時代だ。


奴隷商人 Ⅰ

奴隷商人 Ⅱ

奴隷商人 Ⅲ

奴隷商人 Ⅳ

奴隷商人 Ⅴ

奴隷商人 Ⅵ

奴隷商人 Ⅶ

奴隷商人 Ⅷ

奴隷商人 Ⅸ

A piece of rum raisin - 単品集


ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編1

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編2

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編3

挿入話第7話 絵美と洋子、1983年1月15日/1983年2月12日


登場人物

宮部明彦 :理系大学物理学科の2年生、美術部
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子:外資系サラリーマンの妻。哲学科出身

加藤恵美 :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子:明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻

森絵美  :文系大学心理学科の2年生
島津洋子 :新潟出身の弁護士


シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」

第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)-第4ユニバース

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)

 ●クリスマスイブのホテル・バー
 ●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
 ●森絵美の家
 ●御茶ノ水、明治大学
 ●明大の講堂
 ●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


シリーズ「雨の日の美術館」


フランク・ロイドのブログ


フランク・ロイド、pixivホーム

シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」

シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

A piece of rum raisin - 第3ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス-雅子編」

フランク・ロイドの随筆 Essay、バックデータ

弥呼と邪馬臺國、前史(BC19,000~BC.4C)


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