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盲導犬エルとの日常〜ユーザー家族の視点から

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2022年9月、全盲の夫のパートナーとして我が家にやってきた盲導犬のエル。一緒に暮らす中で感じたことや残したいことをユーザーの家族の視点で綴っていきます。掲載している文章と写真は…
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#エッセイ

「Dog Education」で緩んだネジを締めなおし

「Dog Education」で緩んだネジを締めなおし

最近のエルの様子をいくつか残しておきます。

耳掃除が大好き

三日に一度ほどのペースで夫がエルの耳掃除をしています。ラブラドールはたれ耳なので耳の中に湿気がこもりやすいとのこと。コットンに耳掃除用の液体を付けて、耳の中を丁寧に拭いていきます。

「エル、耳掃除するよ」

呼ぶと、夫の前にゴロンと横になります。

「気持ちええわぁ。俺も協力するわ」

と、耳掃除しやすいように顔を夫の方に傾けていま

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エルのがんばり、エルの不思議

エルのがんばり、エルの不思議

我が家の長男坊、盲導犬エルのがんばりと不思議なお話。
まずはがんばりのエピソードからご紹介します。
信号を渡るとき、渡り口の真ん中で止まって、夫の出発するよという指示

「ゴー」

を待っています。音響信号のときは、夫が左側に寄ってボタンを押してから渡り始めることを憶えたようです。

「ここにボタンあるよ」

と言うように押しボタンのところでぴったり止まると教えてくれました。

「すごい!天才やん

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盲導犬エルとの家族旅行in函館

盲導犬エルとの家族旅行in函館

12月2日、3日と初めての家族旅行で函館に行ってきました。エルと一緒の初めての遠出、私たち家族だけの初めての旅行です。旅行記を残したくて書き始めたのですが、6000文字を超えました。写真には画像説明を入れています。目次を作っているので興味のあるところから読んでいただければと思います。

旅行までのお話

9月の終わりころ、立て続けに5人以上から

「ラビスタ函館ベイっていうホテルがあるんだけど、海

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ドナドナ・エル

ドナドナ・エル

すっかり寒くなり、エルは去年買ったベッドがお気に入りです。出してあげるとすぐに

「これ俺の!」

と寝転がっていました。最近のエルの様子をいくつか残しておきます。

夫がダイニングでスマホを見ていたときのこと。エルはそーっと近づいて夫の腕に顎を乗せて

「どれどれ?俺にも見せて?」

と一緒にスマホをのぞき込んでいました。私と娘は

「エルかわいい!」

と大騒ぎ。夫が

「エル、今買い物してる

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1年記念日

1年記念日

9月16日でエルが夫の盲導犬として我が家に来て1年が過ぎた。当日ケーキでお祝いをした。日々エルから、たくさんの癒しと微笑ましい気持ちをもらっている。心がささくれ立っているとき、フワフワの頭、大きな背中、長くて立派な尻尾を撫でながらエルに話しかけている。背中に顔をくっつけると、毎日夫がブラッシングで使っているミスとの臭いにエルのにおいが混ざっていて、優しい気持ちになる。

「アロマのにおいやなぁ」

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新しい家での生活

新しい家での生活

エルと家族になってあっという間に9カ月が過ぎました。書きたいエピソードはたくさんあったのですが、娘の卒業入学、5月には引っ越しもあり、なかなか書けずにいました。少し時間ができたので、新しい家での様子を残しておこうと思います。同じマンションの広い家に引っ越しました。間取りもほとんど変わらないのですが、エルが新しい家に適応できるのか少し心配していました。引っ越す前には

「エル、新しい家に引っ越すから

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シリーズ「盲導犬に優しいお店」(1) 京都きん家(江戸川区西葛西)

シリーズ「盲導犬に優しいお店」(1) 京都きん家(江戸川区西葛西)

先日、脚本家の今井雅子さんご家族とご飯を食べに行った。縁あって数年来家族ぐるみで仲良くさせてもらっている。今井さんが提案してくれたのが「京都きん家」という我が家近くのお好み焼きと京料理のお店だ。

テイクアウトでお好み焼きを頼んだり、何度か家族で食べに行ったこともある。盲導犬がいることを伝えるため、夫が予約の電話をした。快く受け入れてくれ、ほっとして当日を楽しみにしていた。このお店は今井さん脚本の

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三歳の誕生日、最近の様子

三歳の誕生日、最近の様子

1月21日でエルが三歳になった。誕生日プレゼントは何がいいか家族で相談し、洋服とケージの中に入れられるフカフカのベッドをプレゼントした。洋服を着て夫と一緒に仕事に出かけ、帰ってからはベッドでリラックスしている。そんなエルの様子を娘がたくさん写真と動画を撮ってくれた。家族みんなで

「エル、誕生日おめでとう」

を言ってお祝いした。こうして我が家にエルが来てくれたのは、関わってくれたたくさんの人のお

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新しい家族の形

新しい家族の形

4カ月前、我が家に新しい家族が増えた。夫のパートナー、盲導犬のエルだ。
生まれつき全盲の私、人生の途中で全盲となった夫、目が見えている小学六年生の娘に盲導犬のエル。三人と一頭で暮らし始めた。

年明け、初めて夫とエルと買い物に出かけた。これまで近くのスーパーの入口まで送ってもらったことはあったのだが、お店に入ったことはなかった。家を出て歩き出すと夫が

「今日のエルはすごいルンルンで歩いてる」

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盲導犬エルとの日常〜2ヶ月

盲導犬エルとの日常〜2ヶ月

盲導犬のエルが我が家に来てもうすぐ3カ月になる。残しておきたい家での様子をいくつか書いておきたい。盲導犬はハーネスを外すと「お仕事モード」から「リラックスモード」になる。家では「入っていい場所」を自由に歩き回ることも多い。ただ、リラックスモードと言ってもペットではないので、盲導犬として外でやってはだめなことは、家でもやらないようにルールを決めて家族みんなで教えている。

まず、私とエルの関係が変わ

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盲導犬エルが家族になった日

盲導犬エルが家族になった日

我が家に盲導犬がやってきました。夫のパートナー、エルという黒ラブの男の子です。夫から初めて名前を聞いたのが8月の終わり。盲導犬センターでの3週間の訓練を追え、9月の半ばから盲導犬見習いとしてうちで暮らし始めました。一週間一緒に暮らしたところで夫と娘がコロナに感染し、10日ほど盲導犬協会に預かってもらいました。療養機関が終わり、訓練も無事終了し、10月6日エルは晴れて盲導犬となりました。一緒に暮らし

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動物恐怖症の私が盲導犬ユーザーの家族になると決めるまで

動物恐怖症の私が盲導犬ユーザーの家族になると決めるまで

子供の頃から動物が怖かった。犬や猫だけでなく、鳥やウサギなど触れるものは何もなかった。少しでも触れれば、大声とともに飛び退いていた。

「わざとやってるんちゃう?声でかすぎやろ!」

と言われるほどのリアクションで、私の叫び声に周りが驚くほどだった。もちろんわざとではなく、怖くてどうしようもなかった。全く動物と関われないまま大人になった。そんな動物恐怖症の私が、盲導犬ユーザーの家族になる日が近づい

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