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【エッセイ:宇宙大好き小僧】

【宇宙大好き小僧】 

僕らが生まれてくるだいぶだいぶ前にはすでにアポロ11号が月に行ったのだと言いますけれど。 

1969年7月20日のことです。

月面着陸、テレビ中継したと聞いています。そんな一大イベントを生で見られたなんてうらやましい。と、昭和末期に生まれた宇宙大好き小僧の私はずっと思っていました。人類が月面に降り立つ瞬間が見られるなんて、一生のうちに一度あるかないかですよ。今のところ一回しかなかったわけですからね。

夜、空を見上げて月を見るたびに思うのですが、誰があそこまで行けるなんて考えますか?

「数年後にあそこに着陸しますよ」なんてケネディに言われたアメリカ国民はいったいどう感じたのでしょうね。私がもし当時のアメリカ国民なら「馬鹿なこと言ってんなあ」くらいは思ったかも知れません。でもその宣言から十年と経たずに本当に着陸したわけですから、当時の宇宙大好き小僧は熱狂したでしょうね。

人類が月に到達するような、そんなビッグイベントをいつか見られたら良いなぁ。なんて幼少期から思っていました。私と同じような想いを抱いている宇宙大好き小僧は多いのではないでしょうか。

そんな小僧どもに朗報です。

人類が再び月面に立ちます! 

3年後の2026年、NASA主導で進められているアルテミス計画によって再び人類は月面着陸を目指すのだとか。

アルテミス計画の目的は月に人類が長期滞在できる拠点を作ることで、月面着陸はその前段階。まずは月軌道にロケットを飛ばして月上空を飛行し、それから月面着陸の計画を進めるようです。

人類が月面に二歩目の足跡を刻む時がきました。ついに70年代以降に生まれたすべての宇宙大好き小僧の夢が叶いますよ! 楽しみです。現地観戦チケットとか発売されたりしてね。テレビ中継はしてくれると信じているのですが。テレビは無理でもサッカーや野球みたいにどこかの企業がネット中継してくれるんじゃなかろうかと期待しています。

月面に長期滞在可能な基地をつくったあとはアルテミス計画で得たノウハウと技術を使っていよいよ火星の有人探査に乗り出すつもりだとか。いつか本当に月や火星に人が移住する時代が来るかも知れませんね。

月や火星で生まれ育った子供たちは自分を「月人」や「火星人」だと思うのでしょうか。地球に住んでいた頃の思い出語りでもしようものなら「地球時代の話をするのは地球ハラスメントですよ!」とか若い子たちに顰蹙を買うのでしょうか。SFみたいな話ですが、夜空に輝くあの月に着地した人間が今から五十年も前にいたのですからね。事実はSFより奇なり。五十年後はいったいどうなっているのでしょうね。

宇宙の科学的な話も好きですし、星の神話も大好きです。不思議なことですが、日本には自然にまつわる神話や伝説が多いのに、星の神話はあまりないですね。私の暮らしている相模原市にはだいだらぼっちの伝説があり、だいだらぼっちの足跡に水がたまって沼になったから「大沼」「小沼」という地名になったのだ、という伝説の残る土地があります。

そういった伝説は各地で聞きますね。富士山を盛り土してつくったのもだいだらぼっちと聞きますし、掘った穴に水がたまって湖になったのが琵琶湖だとも聞きます。いやいや琵琶湖をえぐった土は海に埋められ淡路島になったのだ、とかも聞いたことがあります。働き者だな、だいだらぼっち。

昔の人たちは、地形や自然を観察しながら想像力をたくましく働かせて語り合い、物語が生まれたのでしょうね。「この岩は金太郎がお手玉にしていた大岩だ」とか土地や自然に関する伝説はいくらでも見聞きするのですが、「金太郎が空に向かってぶん投げた熊が星座の大熊座」とかは聞きませんね。日本に星の神話が少ないのは何か理由があるのでしょうか? 不思議です。私が知らないだけでもしかしたら日本中に星に関する神話があるのかも知れませんが。日本の星に関係する神話、誰か知っていたら教えてください。ちなみに熊をぶん投げて大熊座にしたのはギリシア神話の問題児ゼウスさんです。

 昔々の日本人だって、空を見上げて星を眺めては「月のあの形は餅つきするウサギだ」とか空想していたと思うのですけど。

 宇宙誕生から約140億年、宇宙の寿命はあと1200億年で、この途方もない数字の中で人生はせいぜい百年、物語に触れられる期間がそれだけしかないというのは、あまりにも短すぎますね。地球の寿命はあと5億年と聞きます。5億年ほどで地球は海が蒸発して生物の住めない星になるのだとか。果たしてそうなったらどうやって人類は物語を遺しておけばいいのでしょうか。紙の本やハードディスクや、ソリッドステートドライブではとてもその頃の地球の熱には耐えられないでしょうね。石板や銅板、ゴールデンディスクにでも刻んでおけば億年を越えて残るかも知れませんが、50億年後には地球そのものが膨張した太陽に飲み込まれ消滅するようなので、アウトです。

 果たして人類はその時代を生き残り、物語を遺していくことができるのでしょうか。人類が月面に着陸したのを第一歩として、何億年も技術を蓄積していけば今の私には想像もつかないような解決策も出てくるかも知れません。もしくは人類は残念ながら地球とともに絶滅してしまって、その痕跡を他の星からやってきた人間が見つけて「宇宙人は実在した! この星に生命活動の痕跡が!」みたいなニュースになるのでしょうか。

 今でも宇宙大好き小僧の私は毎夜、途方もない宇宙・地球・太陽系・人類の行きつく先に想いを馳せて、するとすぐに眠くなるのでいつもぐっすり眠っています。

 【了】


■ここからは文フリの話。

上記のエッセイのほか、「星」がテーマの小説や短歌や詩を含んだ総合文芸同人誌をもって、5/21の文学フリマ東京36 に参加します!

・サークル名:ペンシルビバップ
・ブース:第一展示場 N-34

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