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読書

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2024年2月の記事一覧

漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

漱石が蔵書余白に残したメモを読みたくて、そして東北大学付属図書館 漱石文庫

前回こちらの記事で、漱石が読書中の本の余白に書き込みをしていたことを書いた。

その書き込みをどうにも読みたくて、時々あるんだが、こういうことになると私は妙にシツコイ。寝る前にもまだ諦めきれず、考えてみれば『漱石山房』や『国立国会図書館デジタルコレクション』など、ピンポイントで探しすぎる。忘れていたGoogleという広大な検索ツールを。というわけで、検索バーに突っ込んでみた。

で、見つけたのが、

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漱石とジェイン・エア

河出書房新社の全集から阿部知二訳の『ジェイン・エア』を図書館から借りてきたのは訳を比べてみたかったからなのだが、気がつくとそんなことはすっかり忘れて文字を追うことを止められない。

阿部知二訳はハードカバー二段組、525頁。
大変に長い。

吉田健一訳は文庫635頁。

吉田健一訳はおそらく特に短いんだろうけど、阿部知二訳は特に長いように思える。全集の525頁で、ハードカバーでもあり、重量もたっぷ

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『辞書になった男』、そして辞書と私

『辞書になった男』、そして辞書と私


『辞書になった男』188頁以前より気にかけていたこの本を開いたのは日曜日で、その日一日でほぼ半分を読みきってしまった。翌日の通勤電車の中で、会社の昼休みで、やはり読み続けた。

そうしてさしかかった188頁。その中央の段落を切った後の五行の文章。

そのわずか五行の文章を読んだとき、まるで時間が止まったように感じた。時間も空間も凍りついたようで、そこにあるたった数行の文字をただひたすら凝視してい

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『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

『毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術』が“とても面白かった”ということ

言葉に関しても興味があって、辞書や校正に関する本はついつい読みたくなる。今回はこちらの本である。

とても寒い以前に、そういう話を聞いたことがある。見坊豪紀氏の書籍だったろうか。それを読んだとき、今度は私の方が飛び上がるほど驚いた。

なんで「とても寒い」に驚くんだ?

「とてもきれい」「とても美味しい」など、いつでもどこでもありそうな表現だ。どういうことなんだろう。

実は「とても」という言葉は

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「ジェイン・エア」阿部知二訳がどうにも読みたくなってきた

「ジェイン・エア」阿部知二訳がどうにも読みたくなってきた

「ジェイン・エア」のことをあれやこれや書いていたら、どうにも阿部知二訳を読みたくなってきた。ぼんやり読みたいを通りすぎて、無性に読みたくてたまらない。頭の心がウズウズするというか、胃の腑がモゾモゾするというか、腰が落ち着かないというか、もう、こうなるとじっとしていられない。

古書で安ければ手に入れたい。そう思っていくつか検索してみたんだが、「現在お取り扱いができません」のオンパレードである(どう

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シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』 吉田健一訳を語りつくす

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』 吉田健一訳を語りつくす

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』は愛読書と言っていいかもしれない。中でも吉田健一訳である。初めて読んだのは確か20代の頃で、その時に何故吉田健一訳を選んだのかというと書店の本棚にあったというそれだけでしかない。翻訳については長く気にせずにいたのだが、ある時、図書館で『ジェイン・エア』の別訳をパラパラとめくって、ほとんどのけぞった。先日、オースティンの『高慢と偏見』の翻訳を比較してみたが、そ

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ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 外国語を日本語に翻訳するということ

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 外国語を日本語に翻訳するということ

こちらの記事に刺激されて。

「外国語を日本語に翻訳するということ」などという御大層なタイトルを付けたものの、翻訳のなんたるかを私が理解しているわけではない。

ジェイン・オースティンやブロンテ姉妹のような古典的作品は、様々な方が翻訳を手がけられている。例えば、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』であれば、既に次のような訳がある。

高慢と偏見(平田禿木訳)

自尊と偏見(海老池俊治訳)

高慢

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