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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】パニック障害と鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

今日取り上げるテーマは『パニック障害』です。

突然の不安感とともに胸がドキドキとなり、呼吸が苦しく、めまい、発汗、吐き気、手足の震えといった、様々な症状に発作的におそわれ、しばらくすると自然と消えていく、病院では特に異常がないといわれたが、日常生活に支障が出てきて心配。。。。

今回は、こうした、つらい『パニック障害』の症状に対する鍼灸治療によるアプローチについてご紹介します。
本文の最後では、実際に、鍼灸治療により『パニック障害』の症状が改善した症例を一つご紹介します。

では、さっそくスタートしましょう!

1.パニック障害とは


パニック障害は、『パニック発作』、『予期不安』、『広場恐怖(外出恐怖)』の3つに分類されます。

1-1.パニック発作

『パニック発作』とは、突然、特にきっかけがないのに、激しい動悸やめまい、発汗、息苦しさ、手足の震えなどが発作的におこることをいいます。
発作的な症状であるため、通常は長くても数十分もすれば症状は自然とおさまっていきますが、時に身体症状に対する不安感から「死んでしまうのではないか」という恐怖感を伴うこともあります。
また、病院にいって検査を行っても、身体に異常がみつかることはなく、診断名がつかないことも少なくないようです。

パニック発作時の代表的な身体症状には、以下のようなものがあります。

・胸がドキドキする
・冷や汗をかく
・身体や手足の震え
・しびれやうずき感
・呼吸が早くなる、息苦しさ
・息が詰まる
・胸の痛み、つまり、胸部の不快感
・吐き気、腹部の嫌な感じ
・めまい、ふらつき、意識喪失
・不安感、恐怖感
・寒気または、ほてり

1-2.パニック障害

このようなパニック発作を複数回繰り返すことで、外出ができなくなってしまい、日常生活に支障をきたす状態を『パニック障害』といいます。
パニック発作の原因がはっきりしないのと同様、西洋医学において、パニック障害の原因ははっきりとは分かっていないようですが、脳内の「セロトニン」というホルモンが不足するためではないか、という説があります。
セロトニンは、自律神経(交感神経と副交感神経)の調節にかかわるホルモンであり、 交感神経は主に活動している時に働く神経で、副交感神経は寝ている時に働きリラックス効果をもたらします。
自律神経の乱れがおこることで心のバランスの乱れがおきることから、パニック障害の様々な症状がおきやすくなります。
一生の間にパニック障害になる人の割合は、100人に1~2人といわれており、現在では珍しくない病気です。
また、女性の発症率は男性の約2倍といわれています。

1-3.予期不安

『予期不安』とは、パニック障害を繰り返すうちに、「あれがまた起こったらどうしよう」と不安感が強まり、「再び発作が起こるのではないか」、「次に発作が起こったら気がおかしくなってしまうのではないか」という不安感・恐怖感が出やすくなることをいいます。

1-4.広場恐怖(外出恐怖)・行動回避

予期不安から、会社、学校、電車など、公共の場で発作が起こらないか不安になり、パニック発作をおこしそうな不安感を伴う行動を回避をするようになります。
具体的には、大勢の人が集まる場所を避けたり、人前に出るのを嫌って自宅に引きこもってしまう、といったようなものがあります。
これらを『広場恐怖』、『外出恐怖』といい、恐怖感から精神状態がさらに不安定になることから、一層パニック発作が起こりやすくなる、という負のスパイラルにおちいりやすいです。

2.パニック障害の診断

パニック障害の診断は、診療内科やメンタルクリニックなどでなされることが多く、ICD-10やDSM5という診断基準をもちいて問診を中心として行われています。
また、内臓の病気が背後に潜んでいないかどうかを調べるために、尿検査、血液検査、心電図検査、脳波検査などの検査も行われます。
パニック発作と同様の症状を引き起こす疾患としては、心血管系の病気、呼吸器の病気、低血糖、薬物中毒、てんかんなどがあります。
パニック発作時の症状そのものが心配な場合には、一度、病院で検査を受けておくと、安心です。

3.パニック障害の治療

パニック障害の治療には、パニック発作をおこりにくくすることを目指して、抗うつ剤や抗不安薬といわれる薬物を用いることが一般的なようです。
また、薬物療法に加え、段階的に不安を覚える場面を克服していくなど、成功体験を積み重ることで自信につなげてパニック発作がおこりにくくするように、カウンセリングや行動療法を行うこともあります。

4.鍼灸によるアプローチ

「パニック障害に対して鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、パニック障害の諸症状も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つとされています。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

一方、東洋医学では、パニック障害という一つの病名を参考にしながらも、どんな症状により一番辛く悩んでいるのかに注目をして、治療にあたっていきます。
また、様々な症状があったとしても「それらの症状が起こっている根本の原因は何か?」ということを追究して、それを正すことによってパニック障害の様々な症状を取り除くとともに、パニック発作をおこさないような身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「季候、体質、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、体内循環が停滞、または身体を十分に栄養することができないために、身体機能が上手く働かず、パニック障害の症状がひきおこされる」と考えて治療にあたります。

5.東洋医学的におけるパニック障害とは

東洋医学においても、パニック障害そのものにずばり該当する病名はあるのでしょうか?

東洋医学では、1800年以上も昔の古い文献『金匱要略』の中に、『奔豚気病(ほんとんきびょう)』という病名で、類似する病の記載がされています。

『奔豚気病(ほんとんきびょう)』とは、恐怖や驚きから、発作的に下腹部から胸・のどあたりに衝き上げてくる激しい動悸や不快感の症状で、胸腹部を子豚が走り回るような感覚があることから、このように呼ばれています。

パニック障害は、現代病のように思われがちですが、実は大昔からすでに同じ症状で悩んでいる人々がいて、東洋医学による治療が行われていたということは驚くべき事実ですね!?

また、パニック障害の各症状に該当する東洋医学の病名としては、以下のようなものがあげられます。

1)動悸
  心悸(しんき)、驚悸(きょうき)、怔忡(せいちゅう)
2)発汗
 自汗(じかん)、絶汗(ぜっかん)、手足汗出(しゅそくかんしゅつ)
3)震え、痺れ
 手顫(しゅせん)、麻木(まぼく)
4)息切れ
 短気(たんき)、少気(しょうき)
5)呼吸苦、胸のつまり、胸部の不快感
 胸悶(きょうもん)
6)吐き気、嘔吐
 嘔心(おしん)、嘔吐(おうと)
7)めまい、意識喪失
 目眩(もくげん)、眩暈(げんうん)、暈厥(うんけつ)
8)不安感、恐怖感
 善恐(ぜんきょう)、善驚(ぜんきょう)
9)寒気または、ほてり
 悪寒(おかん)、発熱(はつねつ)

いかがですか?
パニック障害と一言でいっても、東洋医学的に、症状をわけて細かくみていくことから、こんなにたくさんの病名にたどり着くのです。

6.東洋医学的におけるパニック障害の原因

では次に、このパニック障害のおこる原因を、東洋医学的にみていきましょう。
なお、今回は、さきにご紹介した症状のひとつひとつについてではなく、『奔豚気病(ほんとんきびょう)』の原因をとりあげています。

6-1.精神的な緊張、興奮によるもの(肝鬱気滞、肝気逆、肝鬱化火型)

普段から、イライラしやすい、絶えず我慢を続けている、いろいろと考え込むだり落ち込んだりすることが多いなど、精神的なストレス状態が続くことで、身体はしだいにガチガチに固まり、過緊状態となっていきます。
この身体の過緊張状態は体内の循環停滞を引き起こし、極度の精神的興奮(驚き、恐れ、情緒の抑鬱、考えすぎ、恨みなど)をきっかけとして、異常な熱(東洋医学では火と呼びます)を伴い、身体の循環を一気に上向き方向に動かします。
この、身体の循環が上向き方向になることを、東洋医学では気逆といいます。
気逆がおこることで、体内の循環停滞で溜まっていたものが一気に動き出してあふれ出てくることから、身体に様々な症状がおこります。
これが、まさにパニック障害のさまざまな症状である、と言えます。

6-2.身体の冷えが原因となるもの(水寒上衝型)

普段から、身体に冷えを感じやすく、手足に冷たさを感じやすい。
こういったタイプの人は、身体を温める作用が低下しがちなことから、下半身や足元を冷やしたことなどをきっかけとして、気逆がおこりやすくなります。
冷えによる気逆にともない、体内に溜まっている余分な水分が上半身に流れ込み、下っ腹の動悸を伴うパニック障害の症状をひきおこすします。

ここまで、東洋医学におけるパニック障害について、その原因をみてきました。
実際には、原因は上記のどちらかだけに限定されることは少なく、東洋医学上の五臓六腑が関連しあい、いくつかの原因が複雑にからみあって症状をひきおこしているケースがほとんどですので、素人判断せず、ぜひ東洋医学の専門家に相談してみてくださいね!

7.鍼灸治療におけるパニック障害の診断

次に、少し専門的に鍼灸治療によるパニック障害のポイントを解説していきます。

7−1.肝鬱気滞、肝気逆、肝鬱化火型

①肝鬱気滞
肝気の鬱滞で、疏泄機能が低下し、気が停滞することをいいます。
気分の落ち込み、ため息、喉の異物感、胸や腹が張りやすい、月経不順などの症状を伴うことが多いです。
督脈上の圧痛、臍周の冷えと緊張、脇腹(肝相火)の邪、肝兪・胆兪、太衝、合谷、後渓といったツボに反応が出やすくなります。
②肝気逆
肝気の亢進によって、身体の上半身が影響をうけることから、のぼせ症状がでやすくなります。
目眩、頭痛、顔面紅潮、耳鳴り、耳聾(じろう=難聴)、胸脇満痛、吃逆(しゃくり)、呑酸(すっぱいものがこみ上げる)、吐血などの症状を伴うこと多いです。
実脈、百会の熱感や圧痛、神道や霊台、至陽、八椎下、筋縮などの圧痛、天枢の左右差、といったツボの反応が出やすくなり、全体的に上実下虚、舌先紅刺、舌先から舌辺の赤みと無苔になりやすくなります。
③肝鬱化火
肝気が鬱滞して火に変化することから、のぼせ症状がでやすくなるほか、熱症状を伴いやすくなります。
精神抑鬱、過敏症、イライラしやすい、胸の膨満感と灼痛(やけるような痛み)、目の充血などの症状を伴うことが多いです。
内関、百会、行間、肝兪や胆兪、神道、膻中といったツボに熱感を伴う反応が出やすくなります。

7−2.水寒上衝型

陽虚体質であり、日ごろから冷えの症状として、寒がる、四肢の冷え、顔色が白い、尿が多いなどの症状が伴うことが多いです。

8.パニック障害に対する鍼灸の施術例

次に、鍼灸によるパニック障害に対する施術例をご紹介したいと思います。
一度の施術で使うツボは1つです。施術時間は休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、メパニック障害の症状以外、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。
そのため、パニック障害の症状、原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

では、以下に施術の一例をご紹介します。

【患者】40代後半女性、身長160cm程度、体重50kg後半
【初診】202X年9月X日
【主訴】発作的なめまい、不安感、胸のつまり、呼吸苦、外出困難
【問診】
めまいは、ふわふわした感じ、急な落下感、起床時の視界回転、立ち眩み。
めまいに対する不安感がある。
専業主婦で、家事一切はこなせている。
胸がつまり、自分で解消するために、深いため息をよくつく。
ふわふわ感は一時的な休息でおさまるが、恐怖感から冷や汗がでて、思考がストップする。
買い物やイベントなどの外出時も、めまいが不安で、できれば出かけたくない。
十年以上前から、同様のパニック発作症状を何度もくりかえしている。
眼を閉じても眠りが来ない、入眠困難がある。
便秘がち、数日に一回程度、少量しかでないことからすっきり感があまりない。
性格は少し神経質でいろいろなことが気になりなりやすい。

【診断と治療方針】
問診、および身体全体の状態を診て、今回の症状の原因は、以下の証が混在する状態であると診断。
・心肝気欝、心気不暢
・心血不足
従って、余分な体の緊張を取り除くとともに、不安感を取り除く治療を行う。

【日常生活での注意点】
・適度に散歩程度の運動する。
・自ら不安を感じるようなニュースやネット記事をみないようにする。

【経過】
初診 施術直後、胸がつまりが消えて、呼吸が楽になる。
2診 初診後、発作的なめまい、不安感、胸のつまり、呼吸苦、外出困難の症状は改善傾向。
3診~6診 週1回6回ほどの治療により症状は気にならなくなることから、本人の希望で一度、略治とする。
それ以降、精神的な負荷が高まるタイミングで、ふわふわ感がでることから、 その都度、鍼灸治療を行い、次第にふわふわ感も解消方向にある。

9.まとめ

今回はパニック障害について、症状ごとのタイプや原因、治療方法について解説をしました。
東洋医学においても、パニック障害に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132

画像の出典:https://www.photo-ac

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