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淡園 織葉
2024年10月1日 17:25
給食を食べ始めて五分と経たずに思いっきりゲロをぶちまけた吉田の顔を思い出して笑ってしまったのは、妻の香澄が用意してくれた朝食の味噌汁を啜った時だった。「どうしたの?」と香澄が咎めるような視線を向ける。 彼女は過去の話を嫌う。思い出話は止そうと思った矢先、娘の沙也加が僕の膝の上にちょこんと座った。「パパ。何かいいことあったの?」「どうして?」「笑ってたから」「んー、それはねぇ」 鬼の
2024年10月1日 00:14
最近変わったことがあった。 五月の声が、耳から離れなくなったのだ。 僕の耳が僕のために動くのは寝ている間だけで、それ以外の時間はいつだって五月の声をリピート再生し続けるようになってしまった。 愛してる、愛してる、あいしてる、アイシテル……。 正直、気が狂いそうだった。もともと休みがちだった大学はとうとう休学を余儀なくされ、僕は日がな一日この拷問みたいな時間に耐えなければならなくなった。