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ライ麦畑でとっつかまえてくれよ

もし君が、ほんとにこの話を読みたいならだな、まあ、そんな猿の空念仏を唱えたところで何もならないからやめとく。話を前におっ進めるよ。
つくづくサリンジャー著・野崎孝翻訳『ライ麦畑でつかまえて』ってのは本編の語り口とタイトルのマイルドさが、マッチしてないって思ってるんだ。ほんとだって。

僕の印象なんて聞いたところで何にもならないし、反吐をはいちまうだろうからここらへんにしとく。『ライ麦畑でつかまえて』って8・5調は、何とも耳心地がいいしね。まいったね。

コラムニストの堀井憲一郎が週刊文春か何かだったかな、忘れちまった。とにかく連載で書いてたんだ。
野崎孝翻訳の『ライ麦畑でつかまえて』は江戸の言葉で書かれてるってね。それに対して、村上春樹翻訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は上方の言葉で書かれてるんだってさ。いや、違うな、東日本の言葉と西日本の言葉だったかな。どっちでもいいや。そんなチャチなこと誰も気にしちゃいないだろうから、まあ放っておく。

こんなことを言いたくて、駄文をつらつら書いてるわけじゃないんだ。ここからが話のミソってやつ。

いいかい。アメリカの殺人犯の本棚には必ず、『ライ麦畑でつかまえて』があるそうな。つまり、あの小説には読者を殺人に駆り立てる何かがあるってわけ。
おったまげたろ。僕だっておったまげたさ。
もしかしたら僕も、殺人犯になっちまうってことだからな。

嘘だよ。騙されてやがんの。そんなわけないだろ。
嘘って言うのは、殺人を駆り立てる何かがあるってことについてだ。たいていの殺人犯の本棚に『ライ麦畑でつかまえて』があるのは事実だけどさ。
でもよく考えてみなよ。そりゃそうだろ、世界で一番売れてる小説のうちの一冊なんだから本棚に眠ってたっておかしいことはない。
こうやって人間って騙されるのかね。そんなもんかね。

こじつけってのは陰謀論って名前を変えて世の中に溢れかえってる。
コロナ禍を経た今、どんだけの連中が他人の死に便乗してこじつけてきたか思い知ったろ。
アメリカ大統領選だってそうさ。未だにトランプ勝利を疑わない奴がいるってんだから、目も当てられないよ。
311に関しても同じことが言えるな。福島産の物は食べたくないなんて、狂気の沙汰だね。
そうだそうだ、関東大震災までもうすぐ100年ってことで思い出した。朝鮮人虐殺がなかったって言ってる奴らがいるんだって。冗談じゃねえや。
こんな感じで、誰もが簡単に騙されちまう。あながち、僕だっていつ殺人犯になってもおかしくはないってのは間違いじゃないのかもな。まいったね。

でもさ、こじつけの向こうにすぐタネ明かしが待ってるって言うなら、そこまで嫌いじゃないかな。
この文章の冒頭から途中までは本題から外れた話ばっかりしてる。世の中にはこんなどうでもいい駄話で溢れかえってる。だったら、こじつけを聞いていた方がマシじゃないかって思えてくるよ。
現に身辺の奴らの駄話を聞いたところで、物足りなくなって来るんだから。


※これは小説ではなくブログです。