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『天使の翼』第12章~吟遊詩人デイテの冒険~

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サンス大公国の秘密警察機関SSIPのデビルハンター捜査に巻き込まれたデイテ、シャルル、ローラの一行は、指揮官クラレンス少佐の計らいでハイアンコーナまでパトロールエアカーに同乗させ…
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#洞窟

『天使の翼』第12章(55)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(55)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 それは、最初肉眼で見た遠くの星雲のようにはかなく、そして、徐々に明るさと広がりを増していった。わたしは、ゴーグルを外した。
 登りの為か、そのぽっかりと空いた洞窟の出口から見えるのは、燦々と陽の照る青空だけだ……何故か、標高の高い山の上なはずなのに、アンコーナの海べりで感じたより、余程暖かく……いや、暑い位に感じる……洞窟の入り口から流れてくる空気は、初春のものではない……
 と、何か大きな影が

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『天使の翼』第12章(54)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(54)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 洞窟……わたしが運命の導きで迷い込むことになった洞窟は、気流などの不可抗力で、マウンテン・デビルが本来の生息地の外にランディングしなくてはならなくなってしまった時、彼らの王国へと取って返すための避難路のようなものだった。
 手早く食事を済ませ、暗視ゴーグルを装着して、わたしは、デビル達の後を追った。彼らは、幼獣の気配にただならぬもの、つまり、わたしの存在を察知して、9匹で山を――もちろん、洞窟の

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『天使の翼』第12章(48)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(48)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 「また飛べるようになるわ」
 わたしは、彼女の鼻面を撫でた。
 彼女の傷を、洗うべきか、わたしは悩んだ。下手に水をかけて洗っていいものやら……それは、きっとこの子のお母さんが――

 「えっ?」

 わたしは、声をあげていた。――なにか、感じた。間違いなく、何かを……
 わたしの前腕から、肩、全身へと、鳥肌が走った!
 わたしは、洞窟の入り口の方を向いていたから、まるでスローモーションになっ

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『天使の翼』第12章(41)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(41)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 無数のデビル・ハンター達が、折り重なって飛ぶ蝶の群れのように、SSIPのパトロール・エアカーを覆い尽くした――
 エアカーがその重みに耐えかねたように車体の平衡を崩して墜落していく!
 「シャルルゥーー!」

 わたしは、がばと上半身を起こし、後頭部をしたたかに洞窟の壁に打ち付けた。
 「……痛い……夢?…………」
 洞窟の入り口からは、燦々と朝の光が差し込んでいる。……もしかしたら、昼の光か

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『天使の翼』第12章(39)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(39)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、荒い息を肩でつきながら、目を見開いて、洞窟を凝視した。……さすがに、入っていいものやら……
 …………こくり、こくり。これはまずい。立ったまま寝てしまうなんて……何かを持続的に考える余力はもう残っていない……
 「もう、どうなってもいいわ!寝させてもらいます」
 わたしは、猪突猛進、洞窟へと足を踏み入れた。
 洞窟は、今来た道と同じように、くねりながら、上へ上へと続いている。いくらも行

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『天使の翼』第12章(38)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(38)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 今までのことを考えれば、この道は、エアカー誘導路だ!わたしは、登りであるにもかかわらず、快調に飛ばして距離を稼いだ。どんどん山の奥に分け入っていく感じ……暗視ゴーグル越しにも、周囲が荘重な趣のある巨木の森に変わってきたのが分かった。……砂漠地帯から、突然豊かな水の存在をうかがわせる植生への切り替わり……
 心地よい疲労がもたらす陶酔の中、わたしは、何の根拠もなく、この先起こることへの期待感を感じ

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『天使の翼』第12章(33)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(33)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、立ち止まってしまった。
 (大問題だわ。わたし、何て馬鹿なの……)
 取りあえず、小休止。
 目敏く、椅子になりそうな岩を見付けて、ドカッと腰を下ろした。
 立ち止まると、10メートル程の波打ち際から、静かな波の音が聞こえだす……
 荷物を順番に全部おろして、水を一杯いただく……
 「ふぅー……」
 大きなため息。
 人間の性なのだろう、無駄と分かってて、自分のバッグの中を検めるわたし

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