見出し画像

『天使の翼』第12章(33)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしは、立ち止まってしまった。
 (大問題だわ。わたし、何て馬鹿なの……)
 取りあえず、小休止。
 目敏く、椅子になりそうな岩を見付けて、ドカッと腰を下ろした。
 立ち止まると、10メートル程の波打ち際から、静かな波の音が聞こえだす……
 荷物を順番に全部おろして、水を一杯いただく……
 「ふぅー……」
 大きなため息。
 人間の性なのだろう、無駄と分かってて、自分のバッグの中を検めるわたし……
 「!……」
 ごちゃごちゃのバッグの中をかき回すわたしの指先が、何か冷やりとして固いものに触れた……覚えがない……
 ちょっとドキドキしながら、引っ張り出した――
 「あっ!」
 わたしは茫然として、その物体を見詰めた。――ごついメガネのような……
 暗視スコープだった。
 ミロルダの洞窟隊商路、あの悪魔の口腔でシャルルがさりげなく使ってたやつ……

この記事が参加している募集

#SF小説が好き

3,120件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?