新たな領域でビジネスを創出する、DX人材に求められる能力とは?
グローバル化が進むビジネス市場において、ますます求められる「DX人材」。その名称はさまざまな場所で見聞きするものの、具体的な像が浮かばないという人も多いのではないでしょうか。ヒューマンホールディングス株式会社 IT戦略室長 兼 情報システム本部長である志村弘樹さんに、社会で求められるDX人材についてお話を伺いました。
DX人材に必要なのは、ハイレベルのIT知識ではない。
昨今、ヒューマングループを含めビジネスの世界ではDX人材が求められています。Dはデジタル、Xはトランスフォーメーションつまり「変革する」という意味ですね。ここで間違えてはいけないのは、DXとはD(デジタル)の話ではなく、X(ビジネスの変革)の話であるということです。
よく混同されるのですが、DX人材とIT人材はそれぞれ異なる人材です。システム構築やプログラミングといったITスキルを備えた人がIT人材とされる一方で、DX人材にはハイレベルのIT知識が求められません。「あの技術を使えば、こうしたビジネスが可能である」「その問題を解決するには、このような技術が必要である」。そんなふうに、物事を俯瞰して見通すことができ、問題解決に必要なアイデアを正しく提示できる力を備えた人がDX人材になり得るのです。
ITをわかっている人とビジネスをわかっている人の、どちらがDXの主役になれるかというと、ビジネスをわかっている人です。DXを説明するとき私はよく、ドラえもんとのび太くんの例え話をします。寝坊して学校に遅刻しそうなのび太くんが「一瞬で学校へ行ける道具があれば間に合うのに」と言えば、ドラえもんが便利な「どこでもドア」を出してくれますね。
この課題を解決できれば良い方向に進めるのに…、ということを発信できるのび太くん。その課題解決法を提示できるドラえもん。DXでは、ビジネスを変革する上での課題を把握し、声を出せるのび太くん的発想が大切なのです。ドラえもんやどこでもドアがたくさんあっても、解決すべき課題がなければビジネスの上では役立ちません。
ビジネスに携わっている人が、「この課題を解決すればビジネスが変わる」という発想を持てるようになる。それがDX人材です。デジタル技術に詳しければそれに越したことはありませんが、必須ではありません。なぜなら、課題の解決手段はデジタル技術かもしれないし、たとえばM&Aによるリソース確保かもしれません。ケース・バイ・ケースで、それぞれの専門家に任せればよいのであって、どういう専門家にまかせればよいのかという程度の知識を持っていれば十分です。
変革を目指すDX人材の評価基準とは?
私は、DXの定義は2つあると考えています。1つめは「既存のビジネスの、デジタル技術による効率化」。2つめは「デジタル技術による、ビジネスの非連続的な変革あるいは創出」です。2を簡単に言うと、「新しい領域にビジネスを生み出すこと」ですね。近年では、コロナ禍をきっかけに急成長したUber Eatsのような配食サービスなどが当てはまるでしょう。
今後の課題は、2を可能にする人材の育成です。これがなかなか難しい。既存のビジネスの延長線上に変革はありません。誰も踏み入れなかった場所を開拓して、はじめてビジネスの変革が達成できるからです。
とすれば、評価の基準も変えるべきでしょう。既存のビジネスでは、打席に立ったときにヒットを打てる率が高い人ほど認められてしかるべきです。しかし2を目指す人も同様に、打率で評価するわけにはいきません。むしろ打席数、つまりチャレンジの回数で評価するべきではないでしょうか。100回打席に立って三振ばかりでも、101回目で場外ホームランを打てばよいのです。ビジネスの変革とは、それくらい難しく、リスクも伴うのです。
そのためにも1のように、既存のビジネスをデジタル技術で効率化できる人材もとても大切なのです。企業として、まずは足元を固めておかないと、挑戦したいという人材を100回打席に立たせてあげられませんからね。
私は、ヒューマングループで働くすべての方がDX人材になり得ると思っています。1はもちろん、2を任せてみたい人材もグループ内にたくさんいます。そもそも私がビジネスの世界に入った1980年代には、コンピュータを使える人などほとんどいませんでした。それがいまでは、誰もがデジタルツールを使いこなしています。人は変わっていけるもの、個人の行動様式も自然と変化していくものだと、仕事を通じてこの目で確かめてきました。むしろなかなか変われないのは組織です。人々の変化・変革の意識を、組織が見逃さないようにすることこそ重要だと考えます。
最後に、デジタルネイティブの若い人たちへ。
どうか広い視野を持ち、グローバル市場を見据えながら仕事に取り組んでください。デジタル技術の発達で、自宅やオフィスから世界中とつながることができるようになりましたが、海外出張や海外赴任のチャンスがあれば、それを逃してはいけません。実際に海外へ行くと、異文化体験を通じて日本との違いを思い知らされます。国内にいたら経験できないことをたくさん吸収すれば、かならず皆さんのビジネスに活かすことができます。このように、リアルな体験で培ったグローバル感覚もまた、これからの時代を創るDX人材に必要な素質だと言えるでしょう。
<プロフィール>
志村弘樹(しむらひろき)
ヒューマンホールディングス株式会社 執行役員
IT戦略室長 兼 情報システム本部長
大学卒業後、婦人服小売チェーン店のバイヤーを務めながら販売・物流・会計管理システムを構築。ザ・ヒューマン株式会社(当時)に転職し、情報システムおよびコンピュータ教育の開発責任者等を歴任。その後、外資系IT企業等を経て、2018年にヒューマンホールディングスへ復職。
<ヒューマンホールディングス株式会社・会社概要>
ヒューマングループは、教育事業を中核に、人材、介護、保育、美容、スポーツ、ITと多岐にわたる事業を展開しています。1985年の創業以来「為世為人(いせいいじん)」を経営理念に掲げ、教育を中心とする各事業を通じて、労働力不足、高齢化社会、待機児童問題など、時代とともに変化するさまざまな社会課題の解決に取り組み、独自のビジネスモデルを展開してきました。
人と社会に向き合い続けてきたヒューマングループは、いま世界全体で達成すべき目標として掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んでいきます。SDGsへの貢献を通じて、「為世為人」の実現を加速させ、より良い社会づくりに貢献していきます。
※2022年7月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
肩書き・役職等は取材時のものとなります。
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