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高校2年

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弱小演劇部で起きた奇跡のお話
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2024年2月の記事一覧

高校2年 秋④ボーイッシュなあの子の正体

高校2年 秋④ボーイッシュなあの子の正体

無事、本番を終えた僕たちに残されたものは、残りの高校の舞台をひたすら観ること、だった。

この会場は海沿いの街で、僕らはまったく土地のことに詳しくはなかったのだけれども、

この街が地元である友人、秀才だいちゃんとホリジには、どこを観に行ったらいいとか、近所のスーパーとかラーメン屋とかいろいろ教えてもらっていた。

そんな彼らの舞台がついに始まった。

地元なだけあって、彼らの舞台の時には観客席に

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高校2年 秋③すべてはステージに置いてきた

高校2年 秋③すべてはステージに置いてきた

いよいよ高校演劇界の晴れ舞台、県大会が始まった。

合宿で同じグループだった仲間もちらほらと。

秀才だいちゃんとホリジの高校は今年も出場していた。

全国に出ていた憧れた顔ぶれと同じステージに立てる。

これはとても光栄なことだ。

まだスタート地点。

でも、興奮は尽きなかった。

1日目は僕らは特にやることはない。

ひたすら観劇。

そして空き時間で練習をするのみ。

幸いなことに初日に見

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高校2年 秋②日本海の岬でバカヤロウと叫んだ馬鹿者

高校2年 秋②日本海の岬でバカヤロウと叫んだ馬鹿者

県大会への切符を手にした僕ら。

意気揚々とテンションはアゲアゲうっひょーみたいな感じだが、冷静になった時いくつか問題が発生したことに気付いた。

まず会場への距離。

今回は海沿いの街での開催とのこと。

我らの地域から会場までは電車でも3時間ほどかかる。

移動時間がキツすぎる。

それと、大道具(主にススキの山と、武将のベンチ)とか鎧とか刀とか、衣装とか小道具の運搬どうしようという問題。

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高校2年 秋① すすきの揺れた日

高校2年 秋① すすきの揺れた日

文化祭の成功から地区大会突破を確信した僕らはその勢いのままに大会に向けた猛練習を引き続き行う。

普段寡黙で絶望的な滑舌のおっしーがある日

「あだしはですねぇ、今回大会で勝でなかったら教師になっで、生徒を育ででこの脚本で絶対に全国にいぎますから!」

といきり立って、叫んだ。

ここで部員全員の気持ちが固まった。

"こいつが教師になったら、絶対生徒からいじめられる。教師になるのを阻止するために

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高校2年 夏③東北文化祭リベンジャーズ

高校2年 夏③東北文化祭リベンジャーズ

文化祭の日が訪れた。

今年は体育館での発表。

去年が市民会館だったことを考えると残念極まりないけど、まぁ仕方ない。

朝からせわしなく準備が進む。

今回の演目は郷土史に絡む内容だったこともあり、

校長がやたらと楽しみにしているらしいと顧問から言われた。

やめてくれ。ハードルがただただ上がっていくではないか。

緊張の中、僕らの上演がスタートした。

この舞台の全容はこうだ。

慶長5年(

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高校2年 夏②進路と部活とビタミンスゥーマッチと

高校2年 夏②進路と部活とビタミンスゥーマッチと

夏が本格化。

真夏は暑すぎて弁当腐るの怖いからと

500円をお昼代にもらって学食に行くか、パンとか買うかしていたのだが

食欲がびっくりするくらい湧かなくて、僕は毎日エネルゲンかマッチを飲んでいた。

そしてこの頃には、クラスのムードメーカーフミヲが修学旅行で作ったCDに録音されてた"あの紙ヒコーキくもり空わって フミオver"が

なぜか毎日の昼の時間の放送部のオープニングで使われるようにな

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高校2年 夏①修学旅行は突然に

高校2年 夏①修学旅行は突然に

夏を迎えた。

今年は昨年のように全国大会のスタッフ業務はない。

また観に行きたいものだが、こればかりは仕方ない。

昨年、僕らがボロボロだった大会でトップだった人たちは今年どんな舞台を上映するんだろうか。

来年は僕らがその場に行ってやる。

そんな想いを胸に日々を過ごしていた。

さて、そんな僕らの想いは抱きつつも、学校行事は普通にある。

そしてついに修学旅行となった。

僕らの修学旅行は

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高校2年 春⑤誰かのオススメは蜜の味

高校2年 春⑤誰かのオススメは蜜の味

僕は選択科目で美術を専攻していたのだけれども、

そこで、1年の時に一瞬だけ演劇部だったショコラと一緒になった。

ショコラは、パッと見は普通の可愛らしい女の子だけど

なんというかぶっ飛んでいた。

普通が一番こわい。

僕がそれを実感するようになったのは

演劇部の、見た目が普通でめちゃくちゃ真面目そうなのに中身が真性の変態だった"あそうたまきこーじ"と

そしてこのショコラがいたからである。

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高校2年 春④悲しすぎる定期公演

高校2年 春④悲しすぎる定期公演

合宿での手応えを感じた僕は、通常の部活に戻ってからどうしてもダンスをしたくてたまらなかった。

そこで、定期公演ではダンスをしようと熱弁。

無事受け入れられることになった。

僕らにとっては2回目となる定期公演。

せいこちゃん先輩が脚本と演出を担当。

妖精たちを主役にした、おそろしくファンタジーな冒険ストーリーになった。

3年生が配役を行い、それぞれのポジションも決定。

僕は妖精(ダンサ

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高校2年 春③合宿でダンス無双

高校2年 春③合宿でダンス無双

新入部員も入り、そこそこな部員数になった僕ら。

6月の定期公演を前にして、僕らにとってとても重要なイベントが待っていた。

それは毎年恒例の合同合宿。

県内中の高校の演劇部員が集まって、それぞれのコースに分かれて2日にわたって講習を行うというものだ。

前回は基礎のコースでパントマイムだったけど、今年はなにがなんでもやりたいコースがあった。

それは"ダンス"

僕もプロダンサーのレッスン受け

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高校2年 春②新歓公演で部員ゲット

高校2年 春②新歓公演で部員ゲット

4月になって新入生が入学してきた。

街ではHysteric Blueというバンドがめちゃくちゃ流行ってて、どこに行ってもこの曲が流れていた。

春だなぁ。

ちなみに、僕の通った高校は山の中腹にある。

そして、その山に生えている木の大半は桜の木で、春になるとそれはもう見事な景色に変わる。

校則も厳しくて、いろいろなことに縛られがちなこの高校に通い続けられた理由のひとつになるくらい素晴らしい景

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高校2年 春①ナイトスクープオタクと過ごすモーニングライフ

高校2年 春①ナイトスクープオタクと過ごすモーニングライフ

進級した。

いよいよ高校2年生。

上京した彼女とは毎日連絡するようにしていたが、徐々に返信が届かなくなることが増えた。

新しい生活が充実している証拠だろう。

でも、寂しさは募るばかりだった。

当時流行っていた椎名林檎のギブスに自分を重ねながら、

でも彼女は椎名林檎とは明らかに違うところへ行っているのだと思うとより心は深く青く染まっていった。

学校では文系と理系でのクラス分けも行われて

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