鮎ロマンを求めて

自称友釣り名人の自己満足エッセー、  詩のようなエッセーを書きたい

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最近の記事

リュックを背負って鮎釣り

コソ泥釣り師がやって来て ある年の八月お盆休み、福井・今庄、日野川。 その年のシーズン前、ある釣り具メーカーから「プラスチック製引き船」が売出されました。それは自作の「木製引き船」より軽く、収容量が大きく、掛かり鮎の生存率も高く、非常に便利な道具でした。その引き船をシーズン前半使用してみて、シーズン中に一度、この舟を腰に結んでリユックを背負い、ノンストップで釣り歩こうと考えました。 それを実行すべく、今朝九時前、八乙女橋下に来ました。天気は上々、熱くなりそうです。ここから

    • 93 母のこと

      水面を通して真っ青な夏空 その日の夕方、明日の鮎クラブ例会に出席するため美山へ出掛けるところでした。 出掛ける前に、嫁さんと二人で寝たきりの母の着替えを済ませ、シーッを取り換える間、椅子に座ってもらっていました。シーッを取り換えている時、何となく視線を感じ振り向くと、ジーッと私を見つめる母の目と合いました。その目は、はっきりと私を見つめる黒く深い眼差しでした。その頃の母は認知症が進行し、私のことが全く分からなくなっており、その眼差しも何となく焦点の定まらない状態でした。 しか

      • 7 根掛かりを全く気にしない私

        根掛かりは必要悪だ 私は友釣りの最中、よく根掛かりをします。 追ってくる野鮎の絡みを良くするため、細いハリスや柔らかいハリスを使い、また掛りを良くするため、針先が外向きの針を使う等いろいろ工夫しています。しかし、その工夫の全てが根掛かりに直結しています。 オトリが元気な間はスイスイ泳ぎ、その勢いで掛け針が垂れ下がることなく、ほとんど根掛かりしません。オトリが弱って来て、泳ぎのスピードが落ちると、どうしても掛け針が垂れ下がり底石を掻き、根掛かりし易くなります。後は竿操作で、ど

        • 27 幻の大鮎

          あの大鮎は何処へ行ってしまったのだ 安曇川・朽木漁協が、シーズンを通して大物賞大会を開催していた頃の話。 ベストテン入賞者全員に豪華な賞品があり、更に抽選で3名に来シーズンの年間優待券が当たります。年券を発行しない朽木で、シーズンに20日以上竿出す私にとって、年間優待券は喉から手が出るほど欲しい賞品でした。 大会期間終了間近、9月中旬、船橋下流右岸側ブロック前。良型を順調に掛け、元気な野鮎をオトリに交換。オトリの鼻先を狙うポイントに向け放そうとした瞬間、その狙うポイント、大

        リュックを背負って鮎釣り

          59 花火大会

          釣りを終わって、中村ジュニア 毎年お盆休みに、気の合う釣り仲間と安曇川朽木・船橋上流で釣りキャンプをします。お盆の十六日には、船橋袂で朽木村主催の花火大会があり、キャンプしながら見るのが楽しみなのです。 進入禁止になる前に侵入し、うち上げ場所から離れた堤防に駐車します。その年は中村ジュニアの徹君も参加しました。当時小学校三年生だったと思います。彼とは、友釣りに夢中になると息子を忘れる中村さんに代わって、何度か親代わりになって一緒に遊んだ仲です。ところが、このキャンプで私の面

          86 野鮎と子供達

          安曇川朽木・船橋上流。 午前中、日曜朝市がある本陣裏で竿を出し、十匹ほど掛け満足し、ゆったりと昼食をとっていました。昼食後、まだ居るはずと同じポイントを狙う。しかし、柳の下にドジョウが二匹、とは行きませんでした。時間は二時、竿を担いでトボトボと下流に移動、たどり着いた船橋下。 八月、夏休み、河原は焼肉家族でにぎわい、川の流れはハシャグ少年少女で満杯です。子供たちは橋下が涼しいのか、橋桁周りに集中し、下手はガラ空きです。下手の方が広く浅く遊びやすいと思うのですが、鮎師たちに遠

          86 野鮎と子供達

          バラシ鮎、奇跡の回収?

          38 福井小浜・南川・中名田橋上流 橋上流、支流田村川との合流点。緩い流れ込みなのに狭く深く暗くえぐられ、その底には大鮎のキラメキ、胸躍らせオトリを沈める。しかし、キラメキはあっという間に消え、何の反応も無し。少し粘った後、オトリを対岸の岩盤沿いに上らせる。さっきまで確かに食んでいた大鮎の姿も無くなる。 仕方なくそのままオトリを進める。次第に広くなる川巾、岩盤が途切れた先 、川底につやのある黒石が並ぶ。目を凝らすとその周りに鮎の群れ、あれを狙わぬ手はない。 オトリが上手

          バラシ鮎、奇跡の回収?

          23 逆光の中で友釣り

          眩しさで目印を見失う 真夏の安曇川・朽木、船橋下流 そのシーズンは、橋下手が広く浅いチャラ瀬になっていました。小石底の流れ、所々に少し大きめの石が頭や顔を出しています。深さは踝くらい、石底全体が明るく、流れも輝いています。野鮎が居ることは間違ありません。分かっていても、竿を出す気になれません。鮎のキラメキが無い流れは、何となく信用できないのです。また、竿を出しても真夏の炎天下の野鮎達、人影、竿影に敏感に反応し中々追ってくれません。 ただ、夕方近く、太陽が西に傾き始め低い山の

          23 逆光の中で友釣り

          森田&山口さん

          チョット浮世離れした二人 森田さんを初めて福井・今庄、日野川に案内した日、そのファッションを今でも覚えています。学生時代に山岳部だったせいか、チロルハットにニッカーボッカーという鮎釣師とは思えない笑える格好でした。大丈夫かいなと呆れながらも、取り敢えず10匹以上は釣ってもらわなければなりません。 これは絶対に釣れると、当時私がはまっていた「尾結び仕掛け」を勧め、掛け針をオトリの尻尾にセットし、こうやってオトリを引けばよいですよと言って竿を返すと、もう野鮎が掛かっていました。

          67 焼肉&ビールと交換

          安曇川朽木・船橋河原 その日は船橋下手の河原に車を停め、下流の出会い、野尻の瀬、高岩の瀬と竿を出し、満足でき釣果を得て早めに上がって来ました。 着替えを済まし、椅子を出し、心地よい疲れを癒しながら、噴き出る汗が収まるのを待ちます。遠くで竿出す釣り人達、少し涼しげになった空、流れにハシャグ子供達、ゆったりとくつろぐ私。満足できる釣りができた日は気持ちも落ち着きます。 この後、テンクウの温泉に浸かり、夕食を食べて帰る積りです。その時一人の若者がやって来ました。何か用事かなと思っ

          67 焼肉&ビールと交換

          19 糸鳴り

          長良川郡上にて 当時、釣り糸はナイロン糸のみ、もちろんメタルラインは無く、フロロカーボン糸が出てくるのはもう少し後。 使用する道糸の太さは0.4号~0.6号、今と比べればかなりな太糸。荒瀬で大鮎を掛け、走り回られると、キーンキーンと糸鳴りがしました。 竿出したのは長良川郡上、稲荷橋上流の荒瀬。ズボッ! 目印が沈む。キターッ、竿を立て目印の泳ぐ先を追いかける。荒瀬を縦横無尽に疾走する野鮎、竿を溜めるもコントロール効かず、限界まで伸び切ったナイロン糸、川風を切る不気味な糸鳴り。

          5 掛けると掛かる

          友釣りの場合、積極的に思い通りに野鮎を掛けると、偶然まぐれで掛かる、更にその中間、どっちかなと言う掛りがあるように思います。掛けた喜びに差はないのですが、ただ、その喜びの種類(?)に差があるように思うのです。 川岸を移動しながら流れを眺め立ち止まり、野鮎の付いていそうなポイントを見定め、手早く竿を伸ばし仕掛けをセット、もどかし気にオトリに鼻環を通し放す。 狙ったポイントのどの石とどの石のどの辺りに野鮎が付いているのかを読み、どの流れの筋を泳がせポイントに向かわせるのか。イメ

          5 掛けると掛かる

          127 赤トンボ

          涼風が吹き、河原の石も冷めて来て、タデが蕾を付ける頃、川面を赤トンボが飛び交い始めます。高原で避暑していた赤トンボ、秋の気配を感じ里に下りて来ました。 天高く空突く穂先に赤トンボ一匹、爽やかな初秋の風物詩。しかし鮎師にとって、それはシーズン終了間近のシグナル。ああ、来シーズン解禁までの長い忍耐の日々の始まり近し、考えないでおこう。感傷を振り払い目印に集中する私。 赤トンボが穂先を狙う。私の鼓動に小刻みに震える穂先、カリカリ滑りながら取り付く足音。一瞬、当たりか! と緊張する

          85 幸せの一日

          鮎シーズン終盤、仕掛け作りが面倒で、使い古しの仕掛けを使う。前回釣行時、後半に張り替えた道糸、切れることは無いだろう。         場所は福井小浜・南川、名田庄大橋上流。早めの昼食を済まし、十一時開始。 まずは前回よく掛かった淵を縦断する深瀬を狙う。その深瀬は、上手の短いが勢いある瀬が淵に落ち込み、勢いを保ったまま淵の左岸寄りを縦断して行きます。底石の色が先日より明るい、野鮎は必ず潜んでいる。まずは瀬落ち、そこを目掛けてオトリを放す。すぐにググッと来る。狙い通り! まだ

          96 浅葱斑(アサギマダラ)

          その年の鮎シーズンが終了した10月中旬、腑抜けのように縁側でボーッとしていると、目の前を一羽の蝶がフワーッフワーッと優雅に飛んで行きます。まるで私に来訪の挨拶を告げに来たように。 アッ、アサギマダラだ、今年もやって来てくれたのだ。嫁さんが何時の年に植えたのか、庭に茂っているフジバカマ、ユックリ上下に飛んで行きボソッボソッとついている花弁にぶら下がる。旅の疲れを癒しているのだろうか。しばらく休んだのち別の花弁に飛び移りまた蜜を吸っている。この蝶は台湾辺りまで南下するらしい。かな

          96 浅葱斑(アサギマダラ)

          48 養殖業者、重孝さんのこと

          鮎ロマンを理解できる人 重孝さんとは、JR湖西線唐崎駅近くの呑み屋で知り合いました。 その店の名は「酒房たかはし」と言い、常連客ばかりの感じの店で、初めての私はカウンターの端で一人寂しくビールを飲んでいました。その常連客の中に白髪交じりの、声のデカい、顔のデカい人が居ました。イヤでも耳に入ってくる話では、彼は若狭湾での「筏のチヌ釣り」の帰りらしく、隣席の客に 「今日も又ボーズか」と冷やかされています。それに対して彼は 「俺は養殖業者だ」と言い返しています。それを聞いて、私は彼

          48 養殖業者、重孝さんのこと