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リュックを背負って鮎釣り

コソ泥釣り師がやって来て

ある年の八月お盆休み、福井・今庄、日野川。
その年のシーズン前、ある釣り具メーカーから「プラスチック製引き船」が売出されました。それは自作の「木製引き船」より軽く、収容量が大きく、掛かり鮎の生存率も高く、非常に便利な道具でした。その引き船をシーズン前半使用してみて、シーズン中に一度、この舟を腰に結んでリユックを背負い、ノンストップで釣り歩こうと考えました。

それを実行すべく、今朝九時前、八乙女橋下に来ました。天気は上々、熱くなりそうです。ここから正午まで、竿を出しながら湯尾辺りまで下り、午後もまた同じ様に竿を出しながら此処に戻ってくる予定です。
小さいリユックに水筒、弁当、缶ビール一缶入る自作アイスBOXを詰め込み出発です。

流石にお盆休み、竿出す人が多い。殆どの人が、狭いけれども河原のある左岸側から竿を出しています。仕方なく猫柳の茂る右岸側に立ち込んで、竿を出しながら下ることにします。しかし、道中ポッリポッリとしか掛かりません。真夏の渇水期、多くの釣り人が両岸から差を出す、野鮎も用心深くなっています。
それにしても釣り人が多い、混みあっているポイントを避け、空いている隙間、隙間で竿を出します。その繰り返し、竿を出している時間より、歩く時間の方が長いようです。あまり掛けない内に途中の堰堤にたどり着きました。

此処からは流れが絞られるので、左岸側に渡ります。竿出す隙間があまり無く、ウロウロしているうちにお昼になりました。午前中に湯尾辺りまで下りたかったのですが、今庄インター辺りです。リユックを下ろし昼食にします。
釣れなくても、河原で飲む冷えたビールは最高! オーバーヒートした体を冷やし、欲求不満を解消してくれるのはこれしかありません。ゴクゴク一気に飲み干し、一缶では全く足りません。
下手にはあまり釣れないせいか、見るからにだらけた感じで竿出す人が居ます「オーイ、缶ビール飲んでお昼にしょう」と声を掛けたくなります。

今日はあまりノンビリしておられません。五時には八乙女橋に戻りたい。
更に下流を目指し、しばらく左岸側を釣り下ります。午前中と同じ様に、釣り人達の隙間、隙間で竿を出し、歩き続けます。賢くなった真夏の野鮎達、更に釣り人の隙間狙い、釣り残し狙い、掛かるはずがありません。追いが無ければ直ぐに見切りをつけ、引き舟片手に下手に移動。かなりのハイペースで下流に下り、湯尾辺りまで来ました。時間は午後二時、釣果が少なく2リッターの大型引き舟、水量だけの重さです。

ここでU-ターン、前半と同じく、釣り人の隙間狙いで上流に上がります。前半ペースより少し掛りが良くなりました。
途中あるポインとで良い思いをしました。地合い前の、追いが悪い午後の時間帯、対岸の釣り人の殆どに疲れが見えます。お盆休み、早朝から竿を出していたのだろう、置き竿にして休んでいる人もいます。お陰でポイントも休まり、追い立てられていた野鮎達も、ホッとして気が緩んでいるはずです。

対岸では釣り仲間数人、全員が河原に横になり駄弁っています。その前の岩盤底の深みを狙う。狙い通り直ぐにガーン、今日一番の力強いアタリ、やっと納得出来る掛りです。休まっていたポイント、五匹迄入れ掛かりで来ました。それに気づいた対岸の釣り人達、オイ、掛けてるぞ! と慌てて起き上がり、置き竿をオットリ刀で構えオトリを急かす。しかし、時すでに遅し、私が掛けた五匹で終了でした。

対岸の釣り人達の寝こみを襲ったような、後ろめたい気持ちで上手に移動。何となく悪いなとは思うのですが、「皆様、早朝から竿を出しお疲れでしょう、そのままお休みください」と言いたい。

あるいはコソ泥の様な気もしますが、私は釣り人達に対してより、野鮎達に対して申し訳ない気がします。早朝から多くの釣り人に攻められ続け、その釣り人達が疲れてダウン、やっとひと時の安らぎを得たのに、何処からともなくコソ泥釣り師がやって来て仲間を掛けていく。
「気の休まる暇がないぞ!」とぼやいていそうです。

その後も、他の釣り人の気が抜けていたり、休んでいたりしている間隙を縫って竿を出し、何とか満足できる釣果を得て八乙女橋に戻って来ました。竿出す時間より歩く時間が長く、やはり疲れました。
それでも、竿を担いだ渡り鳥、何となく気ままな風来坊、またフラッとノンストップ鮎釣りをしてみようと思う。



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