見出し画像

鮎を食らう

鮎友釣りは、野鮎を誘って、追わせて、掛けて取り込む狩猟本能だけでなく、鮎を食べたい食欲をも満たしてくれます。
掛り鮎を美味しく戴く、それが奪った命に対する供養、いや掛り鮎に対する精一杯の敬意かもしれません

塩焼き
鮎料理にも色々ありますが、メインはやはり塩焼きです。塩焼きは難しい、しかし楽しい。
七輪の底に丸めた新聞紙、その上に割ったかまぼこ板、新聞紙に火をつけ団扇であおぎ、割気が燃えてきたら炭を乗せ、更にあおぎ続けます。備長炭は中々火がつかず、その上にピキーン、ピキーンと爆ぜて落ち着かない。最初は普通の炭を置き、火が熾ってきたら備長炭を被せ、引き続き扇ぎ続けます。

待機中の鮎

食材の鮎達には踊り串を打ち、各ヒレに化粧塩を擦り込んで待機して頂き、七輪には遠火になる様に上置きをセット、備長炭が炎をあげ熾ってきたら、通風口を少し塞いで塩焼き開始。
焼けて行く鮎を見ながら栓を抜く、ほのかな香りと薄煙が鼻腔を満たし、実にビールが美味しい。

まず裏面を強く焼き、頃合いを見て表面、跳ねている尾っぽが焼け焦げぬよう気を配り、ジワーッ、ジワーッを油がしたたり落ちて来て、口の中がジュクジュク泡立ち、目玉が白くなればいつでも火からおろしてオーケー。

塩焼き中

皿に並べてしばらくして、肌にしっとりチリメン皴、美味しく焼けている印です。

塩焼き完了

この香り隣家にも漂っていることだろう。美味く焼けた数匹をタデ酢とともに持参する。

こんな事をしていたのはいつの頃までだったろう。
それがいつの間にか、釣り終わって帰宅して、嫁さんにガスレンジで焼いてもらってビールを飲む、というパターンになっていました。
ところがさらに最近は、老人と呼ばれる年域に入ったせいか、鮎を掛けるということに精力を使い果たし、帰宅して風呂に入って、食事して、更に釣り道具の手入れをして、というのが面倒になって来ました。

シーズン中殆ど安曇川朽木で竿を出しており、釣り終わってテンクウ温泉に入り、ついでに食事も済ませて帰宅、塩焼きで嫁さんを煩わせることも無くなりました。
それで鮎達は、十分に糞を絞り、冷蔵庫で保管し、翌日塩焼きです。ただ炭火で焼くならこれで何の問題も無いのですが、ガスレンジで焼くと、どうしてもお腹がグズグズになります。味に変わりはないのですが、箸をつけた時の見た目が良くありません。

鮎煮つけ

塩焼きの他にも鮎料理は色々ありますが、実を言うと私も嫁さんも、塩焼きより煮つけが好きなのです。鮎を煮つけに、勿体ないように思えますが、これが実に美味しい。煮つけは酒の肴にも、ご飯のおかずにもなります。塩焼はご飯のおかずにはなり難いと思うのです。
それで釣ってきた鮎の大きめの数匹は塩焼き用に、その他は冷凍庫に保存し,数がたまればまとめて煮つけにしています。

煮つけ中

生臭さの無い鮎、煮つけは簡単です。鍋に水、酒、みりん、醬油、砂糖を適当に入れ火に掛け、沸騰したら冷凍庫から出しておいた半解凍鮎の塊をドバット入れ、山椒の実を振り入れ、落し蓋を乗せ再沸騰させ、後は弱火にして焚き続け、出汁加減をを見て酒,みりん、醤油を追加し、汁が少なくなるまで焚き続ければ完成です。

良い匂いと山椒の香り

 問題は嫁さんが時々焦がすことだけです。熱々も冷めたものも、少し焦げた鮎も美味しいのです。日持ちもし、賞味期限は冷蔵庫保存で10日はあると思います。

嫁さんが勤めていた頃は職場にゴッソリ持っていかれ、同僚と分け合って食べ、喜ばれたと言っていました。
私は朝ごはんのおかずに、夜のビールの友に、何日もかけて消費しています。この方がゆっくりジックリ味わえ、掛り鮎により敬意を表しているように思えるのです。
満足! 満足! 自己満足。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?