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59 花火大会

釣りを終わって、中村ジュニア

毎年お盆休みに、気の合う釣り仲間と安曇川朽木・船橋上流で釣りキャンプをします。お盆の十六日には、船橋袂で朽木村主催の花火大会があり、キャンプしながら見るのが楽しみなのです。
進入禁止になる前に侵入し、うち上げ場所から離れた堤防に駐車します。その年は中村ジュニアの徹君も参加しました。当時小学校三年生だったと思います。彼とは、友釣りに夢中になると息子を忘れる中村さんに代わって、何度か親代わりになって一緒に遊んだ仲です。ところが、このキャンプで私の面目は丸潰れになります。

夜はゆっくりと花火を見たいので、夕方早めに川から上がり食事の支度です。おなかが空いて目眩がしそうだという彼の為に、美味い鮎雑炊を作ってやると言って支度をします。ところが途中でガスが切れるは、水加減を間違って焦げるはで、どう見てもグロテスクな仕上がりになりました。
野外では何でも食べなくては駄目だと言って、無理やり食べることにします。まず私が毒見をし、見掛けは悪いが味は良いと良いかげんなことを言って、皆に食べさせようとします。しかし、亨君は一口食べただけで、後は無言で食べようとしません。大人どもも「遠慮するわ!」 の一言です。無理もないか。

仕方が無いので、彼にカップラーメンと茹で卵を作り、やっと一息ついたようです。大人どもはビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、野口さんが外国出張の際に手に入れたというアルコール度70%の酒、何でもこいで飲みまくり、いよいよ花火鑑賞です。
打ち上げ場所のすぐ近くなので、キャンピングベッドに寝転んで見ないと首が痛くなります。

田舎の花火大会、豪華なものはありませんが、花火を色褪せさせる街明かり一つもない真っ暗な夜空にクッキリと輝きます。ただ大輪が開くだけの素朴な花火、これが花火本来の美しさかもしれません。亨君もこれには大喜びです。花火の輝きで顔がほてるほど満喫し、花火大会は終了しました。

私はタープの下にキャンピングベッドを引っ張ってきて寝ます。晴天続きでボウフラの湧く水溜まりが消失し、蚊の心配が無いのが有難い。野口さんと秋吉さんは車中泊です。
中村さんはこれからテントを設営です。我々がキャンプしている奥の堤防でも、一家族が花火鑑賞をしていました。帰るには遅い時刻、当然泊まるのでしょう。「真夜中にここを通る車はないだろう」と言ったのですが、中村さんは轍と川岸の間のせまいスペースにテントを張ります。
だが、これが正解でした。

飲み過ぎと疲れで熟睡し、翌朝陽が高くなってから起きました。
中村さんが朝食の準備をしょうとすると、アルミ鍋と食器がペチャンコになっています。
フッと奥を見ると、あの家族の車が在りません。真夜中に帰ったようです。鍋にタイヤの跡がクッキリ付いています。どうも車に轢かれたようです。

中村さんがテントを畳もうとすると、ロープを張ってあるぺグがめり込んでいて抜けません。ここにもタイヤの跡があります。亨君が寝ていた直ぐ側です。「もうチョットで轢かれるところやった」と、中村さんが怒っています。

更にテントを畳んで周りを見ると、直径15cm前後の花火の殻が無数に転がっています。よくタープに火が点かなかったことだ。毎年花火鑑賞しているが、こんなことは初めてだ。今年は打ち上げ場所の風下だったようだ。

中村さんが亨君に「今後はあのオツチャンのいうことだけは絶対信用するなよ」と忠告しています。中村親子にスリルを味わせ過ぎたようだ。


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