Ubukata_To
少女とワタシというテーマで、ショート小説を書いてみました。 それぞれ、独立しているお話ですので、どこからでも読めます。 お気に入りの一本を見つけてみてください
ワタシの日課は喫茶店に行くことだ。 年配の店主がやっている、いわゆる純喫茶というやつ。 落ち着いた店内に、フカフカとしたクッションのきいたソファ席。ひかえめ…
コーヒーメーカーからコーヒーが落ちる。コーヒーの香ばしい香りがワタシの一人暮らしの部屋に広がった。 ワタシは朝のこのひと時がたまらなくお気に入りだった。 コ…
話があると中学時代の友人に呼び出されたは、駅近くのファミレスだった。 ワタシが店内に入ると友人はすでに席について待っていた。 「よう、久しぶり」 友人は中学…
「あー、疲れたー」 仕事から帰ってきたワタシは、カバンを投げ出し、上着を椅子の背もたれにひっかける。そのまま、ドカリと椅子に身を沈めた。 コンビニのビニールか…
ワタシの仕事部屋には一枚の絵葉書が飾ってある。 シンプルな額縁に入れて、仕事机の隅に置いてある。 美しい少女が描かれた絵葉書だ。 差出人は、古い友人である…
友人と旅行に行くことになった。一泊二日の小旅行だ。 旅行なんて何年振りだろう。ワクワクする。 旅行に行く前日の夜、ワタシはクローゼットからキャリーケースを…
ワタシは人形をいっぱい持っている。 自分の部屋には収まりきらなくて、リビングや玄関にも専用の棚を設置して置いているほどだ。 いい年をして人形を集めているだ…
洗濯カゴの中に、美しい少女がいた。 今日はいい洗濯日和だった。ワタシは縁側の物干し台に洗濯物を干そうとしていた。 洗濯物を一つ手に取ろうとしたときだ。洗濯カ…
美しい少女がいた。 ワタシはウサギ小屋当番だった。 「くさい」 「さっさと終わらせようよ」 「うわっ、汚い」 うさぎは可愛いけれども独特の獣臭さがある。 ワ…
カップ麺の向こう側に美しい少女がいた。 少女はこたつの天板に頬をつけて、じっとカップ麺を見つめている。 「えっ、誰?」 ここはワタシが一人で住んでいるアパー…
美しい少女がいた。 ワタシには長い髪の毛と黒い後ろ姿しか見えなかった。 けれども、ワタシにはそれが少女で美しいのだという確信が芽生えていた。 少女は海辺…
2023年12月12日 10:55
ワタシの日課は喫茶店に行くことだ。 年配の店主がやっている、いわゆる純喫茶というやつ。 落ち着いた店内に、フカフカとしたクッションのきいたソファ席。ひかえめな BGMに静けさの漂う店内。そんな落ち着いた雰囲気が気に入って、ワタシはこの喫茶店に通っている。 ワタシはいつもブレンドコーヒーを注文する。この喫茶店の売りは、昔ながらのパンケーキなのだが、あいにくと注文したこたおがなかった。 カ
2023年12月6日 11:23
コーヒーメーカーからコーヒーが落ちる。コーヒーの香ばしい香りがワタシの一人暮らしの部屋に広がった。 ワタシは朝のこのひと時がたまらなくお気に入りだった。 コーヒーメーカーはブォォォと低音を立てて、コーヒー豆を挽き始める。 ちょっと奮発してお高いコーヒーメーカーとお高いコーヒー豆を買ったかいがあるというものだ。 そして、コーヒーメーカーの音が響きだすと、この時だけ現れるワタシの小さな同居
2023年12月2日 08:19
話があると中学時代の友人に呼び出されたは、駅近くのファミレスだった。 ワタシが店内に入ると友人はすでに席について待っていた。「よう、久しぶり」 友人は中学の卒業写真から抜け出してきたのかと言うほど、風貌が変わっていなかった。 一目で、誰が待ち合わせ人か分かってしまって、思わず笑ってしまう。「変わってないな、おまえ」 そう、軽口を叩いてやれば、友人はかすかに微笑んだ。そんな癖も変わって
2023年12月1日 11:30
「あー、疲れたー」 仕事から帰ってきたワタシは、カバンを投げ出し、上着を椅子の背もたれにひっかける。そのまま、ドカリと椅子に身を沈めた。 コンビニのビニールから、温めた弁当を取り出す。割り箸を乱暴に、割って弁当を掻きこんだ。「飽きてきたな」 最近は似たような弁当しか買っていない。食べる気も失せようというものだ。 弁当を適当なところまで食べると、ワタシはテーブルの上に置かれていたタブレッ
2023年11月30日 13:18
ワタシの仕事部屋には一枚の絵葉書が飾ってある。 シンプルな額縁に入れて、仕事机の隅に置いてある。 美しい少女が描かれた絵葉書だ。 差出人は、古い友人である。 友人とは中学校からの付き合いだ。 メールでのやり取りを経て、最近ではスマホのメッセージアプリを使って交流している。 遊ぶ約束だとか、好きなアーティストの新曲の情報だとか、日々のちょっとした愚痴だとか。ごく普通のやり取りをしてい
2023年11月21日 08:38
友人と旅行に行くことになった。一泊二日の小旅行だ。 旅行なんて何年振りだろう。ワクワクする。 旅行に行く前日の夜、ワタシはクローゼットからキャリーケースを引っ張り出した。 前回使ったのは随分と前だった。埃をかぶっているキャリーケースは随分と重かった。 嫌だな。前の旅行の時の荷物をそのままにしてしまってしまったのだろうか。 中で、何か腐っていたら嫌だな。どうしよう。心配になる。 そ
2023年11月20日 09:06
ワタシは人形をいっぱい持っている。 自分の部屋には収まりきらなくて、リビングや玄関にも専用の棚を設置して置いているほどだ。 いい年をして人形を集めているだなんて。と言われることもあるが、ワタシにとって人形を集めることは人生そのものと言っても良かった。 ガラスのケースに入れられた人形を眺めらながら、紅茶を飲むことがワタシの至福の時間だった。 コレクションは、人形といっても幅広い。ビスク
2023年11月18日 07:45
洗濯カゴの中に、美しい少女がいた。 今日はいい洗濯日和だった。ワタシは縁側の物干し台に洗濯物を干そうとしていた。 洗濯物を一つ手に取ろうとしたときだ。洗濯カゴの中に、白いエプロンドレスを着た少女たちがいることに気がついた。 少女たちは、洗濯物を投げたり、潜り込んでみたり、遊んでいる。「濡れちゃうよ」 ワタシは思わず、声をかけた。少女たちは一斉にワタシを見上げる。「え〜」「楽しいよ」
2023年11月16日 06:59
美しい少女がいた。 ワタシはウサギ小屋当番だった。「くさい」「さっさと終わらせようよ」「うわっ、汚い」 うさぎは可愛いけれども独特の獣臭さがある。 ワタシもそうだけど、一緒にうさぎ小屋掃除をするみんな、この当番が嫌いだった。 うんちがコロコロ落ちているのも不快だった。 ワタシたちはうさぎ小屋当番の時はうさぎを可愛がるばかりで、そうじはおざなりなのがいつものことだった。叱られるこ
2023年11月15日 08:45
カップ麺の向こう側に美しい少女がいた。 少女はこたつの天板に頬をつけて、じっとカップ麺を見つめている。「えっ、誰?」 ここはワタシが一人で住んでいるアパートの一室だ。1Kの狭いアパートだ。 今、ワタシは一人寂しく、夕飯にカップ麺を食べようとお湯を入れて時間を待っているところだ。 友人も家族も誰も部屋には呼んでいない。 なのに、少女が一人、ワタシのこたつに入ってカップ麺を見つめている。
2023年11月13日 18:39
美しい少女がいた。 ワタシには長い髪の毛と黒い後ろ姿しか見えなかった。 けれども、ワタシにはそれが少女で美しいのだという確信が芽生えていた。 少女は海辺の堤防の上に立って月を見上げていた。岸壁に打ち付ける波の音だけが月夜に響いていた。 大きな大きな満月が少女を黒いシルエットに仕立てている。 ときおり、優しい風が吹いて少女の長い髪の毛を揺らしていた。 もう霜月も半ばで、夜は寒い。