Ubukata_To

少女とワタシというショートストーリーを書いています。 少し不思議なワタシと少女の物語を…

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少女とワタシというショートストーリーを書いています。 少し不思議なワタシと少女の物語をお楽しみください。

マガジン

  • 少女とワタシ ショート小説集

    少女とワタシというテーマで、ショート小説を書いてみました。 それぞれ、独立しているお話ですので、どこからでも読めます。 お気に入りの一本を見つけてみてください

最近の記事

少女と私と喫茶店

 ワタシの日課は喫茶店に行くことだ。  年配の店主がやっている、いわゆる純喫茶というやつ。  落ち着いた店内に、フカフカとしたクッションのきいたソファ席。ひかえめな BGMに静けさの漂う店内。そんな落ち着いた雰囲気が気に入って、ワタシはこの喫茶店に通っている。  ワタシはいつもブレンドコーヒーを注文する。この喫茶店の売りは、昔ながらのパンケーキなのだが、あいにくと注文したこたおがなかった。  カバンから読みかけの文庫本を取り出して読み始めた。  やがて、コーヒーが運ばれてく

    • 少女と私とコーヒー

       コーヒーメーカーからコーヒーが落ちる。コーヒーの香ばしい香りがワタシの一人暮らしの部屋に広がった。  ワタシは朝のこのひと時がたまらなくお気に入りだった。  コーヒーメーカーはブォォォと低音を立てて、コーヒー豆を挽き始める。  ちょっと奮発してお高いコーヒーメーカーとお高いコーヒー豆を買ったかいがあるというものだ。  そして、コーヒーメーカーの音が響きだすと、この時だけ現れるワタシの小さな同居人がやってくる。  ワタシは、小さな同居人がテトテトと歩いてくる音を聞きながらミ

      • 少女とワタシと古い写真

         話があると中学時代の友人に呼び出されたは、駅近くのファミレスだった。  ワタシが店内に入ると友人はすでに席について待っていた。 「よう、久しぶり」  友人は中学の卒業写真から抜け出してきたのかと言うほど、風貌が変わっていなかった。  一目で、誰が待ち合わせ人か分かってしまって、思わず笑ってしまう。 「変わってないな、おまえ」  そう、軽口を叩いてやれば、友人はかすかに微笑んだ。そんな癖も変わっていない。 「一体、なんのよう? 珍しいじゃん。連絡よこすなんて」  珍しいなんて

        • 少女とワタシと動画配信アプリ

          「あー、疲れたー」  仕事から帰ってきたワタシは、カバンを投げ出し、上着を椅子の背もたれにひっかける。そのまま、ドカリと椅子に身を沈めた。  コンビニのビニールから、温めた弁当を取り出す。割り箸を乱暴に、割って弁当を掻きこんだ。 「飽きてきたな」  最近は似たような弁当しか買っていない。食べる気も失せようというものだ。  弁当を適当なところまで食べると、ワタシはテーブルの上に置かれていたタブレットを持ち上げた。ティッシュ箱に立てかけて、動画配信アプリをタップする。 「タブレ

        少女と私と喫茶店

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        • 少女とワタシ ショート小説集
          11本

        記事

          少女とワタシと絵葉書

           ワタシの仕事部屋には一枚の絵葉書が飾ってある。  シンプルな額縁に入れて、仕事机の隅に置いてある。  美しい少女が描かれた絵葉書だ。  差出人は、古い友人である。  友人とは中学校からの付き合いだ。  メールでのやり取りを経て、最近ではスマホのメッセージアプリを使って交流している。  遊ぶ約束だとか、好きなアーティストの新曲の情報だとか、日々のちょっとした愚痴だとか。ごく普通のやり取りをしていたと思う。  そんな日々の中、ある日突然、友人から絵葉書が届いた。  よくワタ

          少女とワタシと絵葉書

          少女とワタシと旅行鞄

           友人と旅行に行くことになった。一泊二日の小旅行だ。  旅行なんて何年振りだろう。ワクワクする。  旅行に行く前日の夜、ワタシはクローゼットからキャリーケースを引っ張り出した。  前回使ったのは随分と前だった。埃をかぶっているキャリーケースは随分と重かった。  嫌だな。前の旅行の時の荷物をそのままにしてしまってしまったのだろうか。  中で、何か腐っていたら嫌だな。どうしよう。心配になる。  それでも、キャリーケースを開けないわけにはいかないので「よいしょ」と床に置いてチャ

          少女とワタシと旅行鞄

          少女とワタシと人形

           ワタシは人形をいっぱい持っている。  自分の部屋には収まりきらなくて、リビングや玄関にも専用の棚を設置して置いているほどだ。  いい年をして人形を集めているだなんて。と言われることもあるが、ワタシにとって人形を集めることは人生そのものと言っても良かった。  ガラスのケースに入れられた人形を眺めらながら、紅茶を飲むことがワタシの至福の時間だった。  コレクションは、人形といっても幅広い。ビスクドールから子供の着せ替え人形。ぬいぐるみから、フィギアまでワタシのお眼鏡にかなっ

          少女とワタシと人形

          少女とワタシと洗濯物

           洗濯カゴの中に、美しい少女がいた。  今日はいい洗濯日和だった。ワタシは縁側の物干し台に洗濯物を干そうとしていた。  洗濯物を一つ手に取ろうとしたときだ。洗濯カゴの中に、白いエプロンドレスを着た少女たちがいることに気がついた。  少女たちは、洗濯物を投げたり、潜り込んでみたり、遊んでいる。 「濡れちゃうよ」  ワタシは思わず、声をかけた。少女たちは一斉にワタシを見上げる。 「え〜」 「楽しいよ」 「冷た〜い」  楽しそうにはしゃいでいる少女たち。  少女たちは美しい髪の毛

          少女とワタシと洗濯物

          少女とワタシとうさぎ

           美しい少女がいた。  ワタシはウサギ小屋当番だった。 「くさい」 「さっさと終わらせようよ」 「うわっ、汚い」  うさぎは可愛いけれども独特の獣臭さがある。  ワタシもそうだけど、一緒にうさぎ小屋掃除をするみんな、この当番が嫌いだった。  うんちがコロコロ落ちているのも不快だった。  ワタシたちはうさぎ小屋当番の時はうさぎを可愛がるばかりで、そうじはおざなりなのがいつものことだった。叱られることもないから、ずっとそうやっている。  ある時、うさぎ小屋の隅でうさぎが固まっ

          少女とワタシとうさぎ

          少女とワタシとカップ麺

           カップ麺の向こう側に美しい少女がいた。  少女はこたつの天板に頬をつけて、じっとカップ麺を見つめている。 「えっ、誰?」  ここはワタシが一人で住んでいるアパートの一室だ。1Kの狭いアパートだ。  今、ワタシは一人寂しく、夕飯にカップ麺を食べようとお湯を入れて時間を待っているところだ。  友人も家族も誰も部屋には呼んでいない。  なのに、少女が一人、ワタシのこたつに入ってカップ麺を見つめている。  少女はとても美しかった。こんなにも美しい少女だ、一度見たら忘れられないだろ

          少女とワタシとカップ麺

          少女とワタシとお月さま

           美しい少女がいた。  ワタシには長い髪の毛と黒い後ろ姿しか見えなかった。  けれども、ワタシにはそれが少女で美しいのだという確信が芽生えていた。  少女は海辺の堤防の上に立って月を見上げていた。岸壁に打ち付ける波の音だけが月夜に響いていた。  大きな大きな満月が少女を黒いシルエットに仕立てている。  ときおり、優しい風が吹いて少女の長い髪の毛を揺らしていた。  もう霜月も半ばで、夜は寒い。  それにも関わらず、少女は薄手のブラウスに膝丈のスカートというように見える。

          少女とワタシとお月さま