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ブラックホールの研究過程と新常識 〜アイランド仮説〜

ブラックホールについては、名前だけは聞いたことがあるという人が大半だと思います。宇宙物理学の大きなテーマのひとつです。

実際にはどのような存在なのか、その内容を深掘りすると、さらにブラックホールを研究することの面白さが見えてくるのではないでしょうか。

今回はブラックホールの基本的なことから解説して、近年に生まれた新しい仮説についても触れていきます。まだまだ発展途上のテーマです。

ブラックホールとは

重力が非常に強いために、光すらも吸い込んでしまうような天体のこと。もちろん、人間などは吸い込まれたら最後、二度とそこから出ることはできません。

そんな恐怖のブラックホールですが、元々は他の天体と同じ恒星です。恒星にも私たちと同じく寿命(数千万~数百億年と言われている)があります。これらは寿命を迎えると、より小さく密度の高い天体に生まれ変わるのです。

このとき、とてつもない密度の天体が生まれることがあります。これこそが、ブラックホールの始まりです。その重量は「1センチメートル角で200億トン以上」と言われています。

時空は天体の重力で歪むことが、アインシュタインにより提唱されていました。質量(密度)が大きければ、それだけ歪みが酷くなるということです。

その後の研究で、恒星の最期に引き起こされる超新星爆発の際に、あまりに密度が大きい天体は己の重力を支えきれず、中心に向かって収縮し続けることで、時空を大きく歪めることが分かりました。

この時空の歪みに起因して、時空に穴を開けてしまうのです。これがブラックホールの最たる特徴と言われています。

ブラックホールの研究の歴史

ブラックホールという存在は、ドイツの天体物理学者のカール・シュバルツシルトがアインシュタインの一般相対性理論の方程式を解くことにより、初めて提唱されました。

この段階では、まだ机上の空論に近いものでした。しかしながら、観測技術の進歩により、非常に強い重力であらゆるものを吸い込みながら成長するブラックホールの存在が示されました。

ブラックホールは直に観測することができません。ブラックホールの周囲にある物質を観測することで、間接的に観測が可能になります。

ブラックホールの近くにある天体は、それぞれ角運動量を持ちます。そのため、直進的にブラックホールに吸い込まれるわけではなく、ブラックホールの周囲を渦巻きながら落ちていきます。この渦巻きを「降着円盤」と呼びます。

ブラックホールのエネルギー

ブラックホールに落ち切らなかった物質の一部は「ジェット」となって、降着円盤の面に垂直に、勢いよく噴出します。ジェットとは、細く絞られた高温のガスの流れのことで、その速度は光の速度にほぼ近いそうです。

この事象が発生するには、莫大なエネルギーが必要となります。そのエネルギーの元になっているのが、ブラックホールの重力エネルギーです。重力エネルギーを降着円盤を介して熱などのエネルギーに変換しています。

例えば、降着円盤の内側と外側では、物質の速度が異なります。重力は内側へ行くほど強いため、内側に行くほど速くなり、その速度差によって円盤内に摩擦熱が生じます。この熱が光として出てくるわけです。

こちらの写真(イメージ)で、中央のブラックホールから吹き出ている光のようなものが「ジェット」です。このような現象が実際に観測されているのです。

ブラックホールの抜け穴

ブラックホールに関して重要なことのひとつは、一度入ったら光さえも抜け出せないということ。これはブラックホールにおける常識とさえ言われてきました。

ところが、近年でブラックホールに吸い込まれた物質の一部は外に出るという仮説が提唱されたのです。

ブラックホールの内部は外の世界と隔絶しているはずですが、そこには「アイランド」と呼ばれる泡のような構造が存在するというのです。泡の内部は外の世界と直接つながっていて、この泡を介してプラックホールの内部から物質が外に出ていきます。

これまでの物理学の常識を覆す仮説ですから、研究者の間でも大いなる議論を呼びました。

この仮説の鍵となるのが、重力を扱う「相対性理論」と微小世界での物質の振る舞いを説明する「量子力学」です。発端は研究者のスティーブン・ホーキングが、相対性理論から導きかれるブラックホールに量子力学を組み込んだことでした。

その結果、量子力学の作用でブラックホールのすぐ外側の宇宙空間で光が生み出され、外に放出されることが分かりました。この光は、スティーブン・ホーキングという名前に倣い、ホーキング放射と呼ばれました。

そして、ブラックホールはホーキンス放射を続けることで次第に小さくなり、最後は蒸発するのです。この時に吸い込んだ物質がどうなるかは、実は長年の問題でもありました。

これにヒントを与えたのが、相対性理論と量子力学をつなぐ「超弦理論」の研究でした。

超弦理論:物質の基本的な構成要素を理解するためのモデルである。物質の基本単位を、大きさが無限に小さな0次元の点粒子ではなく、1次元の拡がりをもつ弦であると考える弦理論に、超対称性という考えを加えて拡張したもの。

超弦理論の解明が進んだことで、アイランド仮説が現実味を帯びてきました。つまりは、ブラックホールに入った物質はブラックホールが蒸発するまでに外部に流出する。その媒介となるのがアイランドなのです。

この議論は現在まだ決着がついていません。近年のスーパーコンピュータの発展で研究も進んでいますが、完全な理論となるのはまだ先の話のようです。

おわりに

今回は宇宙物理学のひとつとして、ブラックホールについて書きました。調べれば調べるほどに面白く感じられますが、内容を理解するにはなかなか難しいところもあります。

実はブラックホールに抜け穴が存在するという仮説について(アイランド仮説)。これが今後どうなるか、非常に楽しみです。

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