あをき@フラッシュ小説

そこらへんのしがない小説家志望。

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記事一覧

【短編小説】未読無視

この世の中には二種類の人間がいる。 通知が来た時に、すぐ返信する人と、未読無視をする人。 私は圧倒的に後者である。 通知を見て返信した気になっていたり、返信内容を…

【短編小説】ケチな夫

『ケチな夫』 私は本当にラッキーだと思う。 30歳になり結婚を諦めかけていた時、マリの紹介で彼と出会い、交際してから3ヶ月で結婚できたのだから。 しかも、彼は高身…

【短編小説】お笑い芸人

「目の前にいる人の表情が、あなたの人生を表すのよ」 そう教えてくれたお母さんの表情はいつも悲しそうだった。 出来の悪い息子を見る目はどこか儚く、自分の惨めさを思…

【短編小説】ASMR

東京の狭いアパートの一室。 ショウタとユウカは部屋でいつものようにまったりしている。 「ねえ、なに見てるの?」 「うん?ああこれ、ASMRの動画」 ショウタは右耳の…

【短編小説】モールス信号

カンカンカン。 キーキーキー。 カンカンカン。 嫌な金属音がおしゃれなカレー屋で響き渡る。 僕は分かりやすく嫌な顔をして、音がする方を睨む。 不快な音を発する犯…

【短編小説】ホームランボール

パァン! 硬式球と木製バットがぶつかる音が、外野席にいる僕の耳に遅れてやってくる。 一斉に立ち上がる観客。 「これはホームランになる」野球経験者の僕はそう確信し…

【短編小説】こどもの日

「ゴールデンウィーク最高だね〜」 実家に帰ってきた私の娘は、リビングのソファに寝っ転がり猫のように体を伸ばしている。 「さとる君も実家に帰ってるの?」 「そう、…

【短編小説】未読無視

【短編小説】未読無視

この世の中には二種類の人間がいる。
通知が来た時に、すぐ返信する人と、未読無視をする人。
私は圧倒的に後者である。
通知を見て返信した気になっていたり、返信内容を考えていたら返信するタイミングを逃したりする。そのため、だんだん友達との繋がりが薄くなっていくのだった。
一方、私の親友であるりりかは真逆で、通知が溜まっていると気が済まないというタイプだ。
だから、りりかには友達が多く、遊びに誘われる回

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【短編小説】ケチな夫

【短編小説】ケチな夫

『ケチな夫』

私は本当にラッキーだと思う。

30歳になり結婚を諦めかけていた時、マリの紹介で彼と出会い、交際してから3ヶ月で結婚できたのだから。

しかも、彼は高身長イケメンで、年収は1千万円を超える。

我が夫ながら、完璧だと思う。

…ケチなところを除いては。

私の夫はもったいないからと言って、ジュースを買わない。

10円のアメを溶かし、水で薄めて手作りするのだ。

それに元カノからも

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【短編小説】お笑い芸人

【短編小説】お笑い芸人

「目の前にいる人の表情が、あなたの人生を表すのよ」

そう教えてくれたお母さんの表情はいつも悲しそうだった。

出来の悪い息子を見る目はどこか儚く、自分の惨めさを思い知らされた。

だけどある日、お母さんは僕が披露した全力のモノマネに大笑いしてくれた。

その笑顔を見た時、僕も嬉しくて同じように笑った。

その時、たしかに目の前にいる人の表情は、僕の人生を表すのだと実感した。

それ以来、僕は誰か

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【短編小説】ASMR

【短編小説】ASMR

東京の狭いアパートの一室。

ショウタとユウカは部屋でいつものようにまったりしている。

「ねえ、なに見てるの?」

「うん?ああこれ、ASMRの動画」

ショウタは右耳のイヤホンをはずし、ユウカに爽やかな笑顔を向ける。

付き合って半年が経ち、部屋に二人でいても携帯を見る時間が増えた。

ユウカはそれが寂しくて、たまにショウタにちょっかいをかける。

「ASMRって面白いの?」

「面白くはない

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【短編小説】モールス信号

【短編小説】モールス信号

カンカンカン。

キーキーキー。

カンカンカン。

嫌な金属音がおしゃれなカレー屋で響き渡る。

僕は分かりやすく嫌な顔をして、音がする方を睨む。

不快な音を発する犯人は、淡い色のワンピースを着た清楚系の女性だった。

女性の目の前には、ブランド品を全身に纏った30代くらいのいかつい男がいた。

おそらくカップルだろうか。

僕は違和感を持った。

上品な若い女性と、いかつい下品な男。

そし

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【短編小説】ホームランボール

【短編小説】ホームランボール

パァン!

硬式球と木製バットがぶつかる音が、外野席にいる僕の耳に遅れてやってくる。

一斉に立ち上がる観客。

「これはホームランになる」野球経験者の僕はそう確信した。

ボールは放物線を描き、僕の方に向かって加速してくる。

あんなに小さく見えていたボールがみるみる大きく見えてくる。

「捕れる!」

瞬間、体温が一気に上昇する。

僕はあわてて左手にはめていたグローブを構える。

パァン!

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【短編小説】こどもの日

【短編小説】こどもの日

「ゴールデンウィーク最高だね〜」

実家に帰ってきた私の娘は、リビングのソファに寝っ転がり猫のように体を伸ばしている。

「さとる君も実家に帰ってるの?」

「そう、結婚してからずっと二人でいたからね。ゴールデンウィークくらいはお互いの実家帰ろうってなったの。」

「あらそう。それならゆっくりしていってね。」

「はーい。ああずっと祝日だったら働かなくていいのにな〜。ってか今日ってなんの日だっけ?

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