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【短編小説】未読無視

この世の中には二種類の人間がいる。
通知が来た時に、すぐ返信する人と、未読無視をする人。
私は圧倒的に後者である。
通知を見て返信した気になっていたり、返信内容を考えていたら返信するタイミングを逃したりする。そのため、だんだん友達との繋がりが薄くなっていくのだった。
一方、私の親友であるりりかは真逆で、通知が溜まっていると気が済まないというタイプだ。
だから、りりかには友達が多く、遊びに誘われる回数が多いのだろう。
私も見習わなければいけないな、とは思っている。
 
ある日、大学の空きコマに、りりかの携帯で動画を見ていると、通知が一つ溜まっていることに気がついた。
未読無視をめったにしないりりかが既読をつけずに無視をしている。
不思議に思い、りりかに聞いてみると、なんと二年前から返信せずにいるらしい。
なぜ返信しないのか尋ねると、
「返信したら繋がりがなくなってしまいそうで」
と、よくわからない言葉を言っていた。
返信しなかったら繋がりがなくなってしまうのに。私みたいに。
 
後日、りりかの高校時代の親友が二年前に交通事故で亡くなったという話を聞いて、あの時の言葉の意味を知った。
りりかは未読無視をすることで、その親友との繋がりを保っていたのだ。
既読すれば、他のトークルームに埋もれてしまうから。


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