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詩 わたしのくちびるから
わたしのくちびるから漏れた気持ちが
ただの音になって
風に紛れて消える
背の高いあなたが体を傾けて
その音を聞こうとしている
夏に焼けたあなたの腕にそっと触れ
黙って首を振る
あなたの言葉を聞きたい
あなたの目に浮かんだ物語を聞きたい
小雨くらいならかえって気持ちいいから
back number「ハッピーエンド」(2016)
青いまま枯れていく
あなたを好きなままで消えてゆく
私をずっと覚えていて
なんてね 嘘だよ 元気でいてね ああ
誰にとってのハッピーエンドなのか。
遠距離恋愛の相手から、他に好きな人ができたと言われた。
久しぶりに会ったというのに、それは別れるため。
好きなのに、「あなた」だけを好きなのに、「私」の気持ちは変わらないのにと心の中で思う。
初めて電話をくれた夜、君のままでいいのにと涙を拭いてくれ
山崎まさよし「One more time,One more chance」(1997)
いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
明け方の街 桜木町で
こんなとこに来るはずもないのに
歌詞の中に、この実在の地名が出て来るだけで、胸がきゅっと締めつけられる。
自分の記憶の中の桜木町が瞬時に蘇るからである。
聴き手の私的な記憶を即座に呼び起こすスイッチとして、地名は抜群の効果を持つ。
個人的な記憶が再生されることによって、普遍的な曲の世界が私的な世界へつながる。そして聴き手の曲への共感や
詩 ふたりだけの秘密
ふたりだけの秘密
深夜零時をまわると
急に空気が重くなり
草と葉と花の匂いがねっとりと濃くなる
あなたの湿った頰に触れると
顔を傾けてわたしの手に委ねてくる
唇を指でなぞり
目を閉じて
始めよう