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back number「ハッピーエンド」(2016)

青いまま枯れていく
あなたを好きなままで消えてゆく
私をずっと覚えていて
なんてね 嘘だよ 元気でいてね ああ

誰にとってのハッピーエンドなのか。

遠距離恋愛の相手から、他に好きな人ができたと言われた。
久しぶりに会ったというのに、それは別れるため。
好きなのに、「あなた」だけを好きなのに、「私」の気持ちは変わらないのにと心の中で思う。
初めて電話をくれた夜、君のままでいいのにと涙を拭いてくれた時、一人にしないよと言ってくれた日、「あなた」の大切な記憶はまだ青く鮮明なまま。
「私」の見る世界、聴こえる世界にすべて美しい色をつけてくれたのは「あなた」だった。
「あなた」は優しい。実際に会って別れ話を言ってくれる誠実さもある。「私」を好きだと思っていた気持ちも本当のことだったと思う。
けれど、心はいつか移ろう。
涙を流さずに受け入れる「私」を見て、「あなた」は少しほっとしている。
物分かりのいい顔で別れ話を聞いていた「私」の心の中を「あなた」は知る由もない。
「あなた」を見送った後、ひとりになった「私」の涙は止まらない。

「なんてね 嘘だよ」と繰り返し挿入されるフレーズが、自分の本音を言わず最後まで相手を思いやる心情をシンプルに表現している。
対して、「青いまま枯れていく」という切ない言葉に、やりきれない悲しみが凝縮されている。
ハッピーエンドという逆説的なタイトルとともに、恋をなくした苦しさに溢れたこの曲は、聴き手の心をぎゅっと掴むだろう。

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