雨_横2

雨は憂鬱か



あの頃、雨というものはかならず憂鬱だった。

眠りから覚めると同時に目を開けずとも
「今日は、雨」とわかってしまうから、
そうなるとあとはもう駄目だった。

行くべきところに行かずして済む理由をいくつか、
ふわふわと頭に浮かばせる頃、大抵、
生真面目で冷酷なスヌーズが安易な私を急かす。

目を開けたとて
部屋に差しこむ光さえ、やる気が無いように思えた。

家の中ならまだしも、外はもっと駄目だった。

普段の、ひろがりのある青には
くすんだ白がべたりと塗りたくられ
空間の閉塞が、やはり憎らしかった。

歩けば衣服のすそや肩が濡れ、整えた髪は乱れ、
私のリュックはいつも傘の恩恵をうけられず。
白い靴下に、どろが跳ねないかなどを、気にして歩いた。
電車やバスに乗れば、生ぬるい湿気が肌にうすく貼りつき、
となり合った人の傘でさらに濡れてゆく足元。

そういう日は全てを諦めながら過ごした。

昼過ぎまで、いつぶりかの雨が降りつづいた。

「今日は、雨」とわかったことにさえ心が湧いていて、
憎むべき憂鬱な雨のことなどはとっくに忘れていた。

そして私は、いつもであれば二度寝してしまう時間にカーテンを開け
水が落ちアスファルトを打つ、そのさまをしばらく眺めていたが、
それらが異世界のように思えるのもおかしかった。

雨が、すこぶる心地よい。

初めてではないにしろ、
改めて「雨は心地よい」と思った。

とはいえ、私にも行くべきところがあったのならば、
やはり憂鬱に噛みつかれていたのかもしれないけれど。

からだとこころを大切にするようになってから、
時間はずいぶんゆっくりになって、私にやさしくて、
追うでもなく追われるでもなく、きちんと寄り添っている。

自分の生活にいちばん近い、さまざまなものに対して、
「心地よい」と思えるくらいが本当は、ちょうどいいのではないか。

雨音に、忙しない日々を想った今日の朝。


そもそも、これほど水に恵まれて生活しているのに、それを憎むだなんて。
まったく
罰当たりな生き物なのだから。


20180206
- aoiasa


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最後までありがとうございました。 〈ねむれない夜を越え、何度もむかえた青い朝〉 そんな忘れぬ朝のため、文章を書き続けています。わたしのために並べたことばが、誰かの、ちょっとした救いや、安らぎになればうれしい。 なんでもない日々の生活を、どうか愛せますように。 aoiasa