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砂の城(創作大賞投稿作品)

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6年前に小説家になろうで書く予定だった消された恋愛話を改稿して纏めております。【創作大賞2024初参加】 暗い部分も多いですが、人の感情揺れ動きとリアル重視。 ハッピーエンドです…
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#恋愛

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第8話 絡まない糸

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第8話 絡まない糸

 焦げた卵焼きを食べた後にようやくお米が炊き上がる音が聞こえた。

「そう言えば、マキって何の仕事してるんだっけ?」

 やはりこの質問が来たかと私は軽く身構えた。決して他意があるわけでは無い。単純に『彼女』から聞いたかも知れないが、今は記憶がないからもう一度聞きたい。そんな所だろう。

「うーん……あまりいい仕事じゃないんだよね。ほら、私って両親亡くなってているからお金貯めるのに必死だったし」

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第9話 弘樹sideー 親友

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第9話 弘樹sideー 親友

 麻衣ちゃんから連絡が来たのは、最後に店に行ったその2週間後だった。ところが店ではなく、中野にある喫茶店で話がしたいと持ちかけられた。
 元々彼女の売上貢献の為にお店に行っていたのだが、何か顧客でも掴んだのだろうか? 
 それはそれで喜ばしい事なのだが、知らない男が麻衣ちゃんにあれこれするのも気に入らない。これはただのお節介だと思われても仕方ないが、麻衣ちゃんは田畑の大切な妹だ。そして雪の親友でも

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第10話 弘樹sideー 覚悟

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第10話 弘樹sideー 覚悟

 麻衣ちゃんはそのまま入院となった。俺は彼女の働くキャバクラの店長さんにどういう体調管理をさせているのかキツく追求した。
 予想した通り先方から返ってきた答えはとんでもない物だったが、俺は同行している医者や研修医と違ってそこまであの店に貢献している訳では無い。悔しいけど、結局それ以上何も言えなかった。
 あれをブラック企業と訴えるのは簡単なのかも知れないが、あそこで仕事をしている麻衣ちゃんが仕事を

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第11話 奇妙な部屋人

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第11話 奇妙な部屋人

 あの日、忍は私の前から何も言わずに消えた。でもこの結末は最初から分かり切っていたもの。全ては、忍の記憶が元に戻らなければいいなんて願った私の所為だと思う。
 私が大学へ行っていい仕事に就けるようお金を貯めると言って忍は笑顔のまま家を出た。
 でも私は別に大学へ行きたかったわけでは無い。家にお金が無いのであれば、すぐに仕事をするつもりだった。
 ただ、あの時は母さんの過剰な期待に答える事に必死で、

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第12話 物好きな人間

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第12話 物好きな人間

 悩み事があっても仕事を休むわけにはいかない。ため息をつき、私はいつものように準備をしてフロアへと足を向けた。

「きゃあああっ! 荵様だわ〜!」

「あれが歌舞伎町No.1の実力者のオーラなのね……!」

 既に客がいるはずなのに、妙にフロアがざわついている。誰か上客が来たのだろうか。気になり、キャバ嬢が密集している先に視線を向けた。
 鮮やかな金髪と正反対のダークグレーの高級スーツ。銘柄は知ら

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第13話 忍side ー 困惑

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第13話 忍side ー 困惑

「今回の企画ポシャったんですか?」

『ちょいと上層部で資金のやり取りで問題が出ててね。企画自体は進んでいるんだけど、下請け業者の解雇が正式に決定になったんだ』

 最悪だ。今回の仕事は某遊園地の立て直し事業で、3年プランの契約だったはず。しかし大元から具体的な話が俺達下の方に降りて来ないので結局一旦こちら側も撤退、という形になったのだ。
 そうなると困るのは上層部ではなく、俺達日雇い労働者だ。上

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第14話 忍sideー 転職

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第14話 忍sideー 転職

 警備のバイトを増やした事で俺の生活は何とか持ち直した。しかし長年建築関連で世話になっていた勝己さんの訃報を聞いたのはつい昨日の事だ。
 死因は心筋梗塞。ヘビースモーカーだった勝己さんは相当肺もやられていたらしい。
 心臓の手術もしているが、医者と嫁に止められてもタバコは死ぬまで止められないと言い張っていた。俺も他人事とは言えない。

 麻衣にもタバコはやめろと言われていたが、口寂しくてどうしても

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第15話 隔てられた距離

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第15話 隔てられた距離

 私は霧雨荵さんと互いの利害の一致という事でお付き合いすることになった。利害の一致と言っても100%私が得をしているだけで、彼にとっての利益は謎のままだ。
 彼が私を指名して、時間の許す限り延長してくれるので店には多額の金が入り、そのお陰なのかいじめは無くなった。
 霧雨さんを敵に回すと営業に響くのだろう。もしかしたら私に手出ししないよう店長が全員に通達したのかも知れない。
 結局は権力と金が無い

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第16話 傷の舐め合い

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第16話 傷の舐め合い

「今日もご来店ありがとうございます、荵さん」

 私の言葉に物凄く驚いた様子で彼は固まっていた。それもそうだ、私が彼を荵さんと呼ぶのはこれでやっと2回目。

「マキちゃん、嬉しいよ! やっと僕の事を認めてくれたんだね」

 人前で堂々とハグしてきたがもう同僚の羨望と憎しみの眼差しなど気にしない。
 あの日、新しい場所で楽しそうにしている忍を見てモヤモヤした感情が吹っ切れたと言えば、吹っ切れたのかも

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第17話 忍sideー 子供

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第17話 忍sideー 子供

 N大附属病院は意外と働きやすい場所で、俺みたいに資格を持たない奴にもみんな優しく接してくれた。
 特に看護師さん達は動けない患者さんの世話をするのが大変みたいで、俺でもそこそこ役に立っているらしい。
 何ヶ月働けるかな、なんてぼんやりと考えていたものが、気がついたらもう一年が経過していた。俺の後輩に当たる男性の介護助手も一人入ってくれたので、益々話しやすい環境になって万々歳だった。

 丁度その

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第20話 捌け口

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第20話 捌け口

 雪ちゃんが帰った後、新宿を目指した。
 駅から降りるとやけにいつもと様子が違う。西側に広がる空気が重苦しい。
 不安を感じ、西新宿にある家へと足を進めると、白い煙と焦げ臭い匂いが近づかなくてもわかるくらいに立ち込めていた。おまけに家の周りには人だかりが出来ている。

「ボヤ騒ぎらしいわよ」

「燃える素材じゃないのにねぇ……怖いわ」

 あれは、私の住んでいるマンション!
 慌てて中に入ろうとし

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第24話 奇妙な女の友情

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第24話 奇妙な女の友情

 手術中という赤いランプを睨みつけていると、背中にそっと暖かいものがかけられた。弘樹さんの使っている黒いカーディガンだ。

 そのまま弘樹さんの肩を借り、痛む足を引きずりながら待機用の椅子に腰掛けた。
 一気に疲労の波が押し寄せ、忘れていた両足裏の痺れと熱が痛み疼き始めた。

「麻衣ちゃん、ちょっと待っててね」

 弘樹さんが何処かに向かったので、私は一時的にに忍の彼女と二人きりになったが、互いに

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第26話 忍sideー 地雷

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第26話 忍sideー 地雷

 俺は集中治療室で歩行練習をさせられ、午前中のうちに一般病棟へ移された。
 外科病棟の病室が空いてないとのことで、偶然にも自分の勤務先である内科病棟の一人部屋に移された。

「くっそぉ、ここの部屋代金高いから、早く普通の四人部屋にしてくれって言いたい……!」

 俺は4本のドレーン管をポシェットみたいな袋にそれを入れて自由に歩けるまで回復している。
 しかし働いている職場。スタッフはニヤニヤしなが

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【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第28話 甘いキス

【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第28話 甘いキス

「忍っ……!」

 その場にいた外科の先生は弘樹さんと何か会話をして忍に入っている管の処置をすると、回診で連れて来た2人の看護師と共に私達とすれ違いで出て行った。

「麻衣さんチャンスだよ。今なら忍も寝てるし、さっき言えなかった事きちんと伝えないと」

 澤村さんに背中を押され、私は穏やかな顔で眠っている忍の真横に再び座った。全然起きる気配を見せ無い。
 私はシーツから無造作に飛び出している忍の右

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