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ame
2021年12月27日 15:39
餌を食む 愛猫の背を撫でながら 壁に見つけた 耳影法師 しん、と癒され 佇む年の瀬
2021年11月28日 12:53
冷たい雨の朝しとしと しとしと通りにはコートにマフラー、彩の傘たち駐車場に向かうとあざやかな赤ひとつ濡れそぼる、遅秋のカケラ足を止める私に溢れて消える想いの欠片
2021年10月31日 16:48
手を伸ばしても 何も触れない 虹がうすくほどけ 灰色の風が巻き上がる 私は浮かびあがり 空へと落ちていく
2021年9月24日 22:02
人生とはそれぞれの物語だ 他人の人生には登場できても他人の人生を変えることはできないその人の見る目で物語が作られているのだから 世界は人の数だけあるのだろう だから私たちの物語はけっして交わることがない混じわることはない できるのはただそれぞれの物語をスプーンひと匙分け合うことだけ
2021年9月8日 19:35
陽炎(かぎろひ)を 追いつつ見遣る かの想い 過ぎゆく夏に 応えなどなし
2021年4月7日 09:33
お天気雨の、75秒前。密集した淡い桃色に目をやると、いつでも時間がグラリとする。ここではないどこかにすーっと吸い込まれそうになって、あわてて隙間にある小さな空を仰げば、今度は、淡い危なげな水色に吸い寄せられそうに。空の二階を一瞬だけ見たかもしれない。雨粒をよけながら走って帰る。
2021年8月28日 23:08
掃除を始めると、ついつい時間をかけてしまう。 それを始めたころには、えい、めんどうだ、この一部屋だけの埃を片付けてしまおう、と思う。一日のほとんどの時間を過ごしているこの部屋だけ、ささっ、と。 それだのに、いったん掃除を始めてみると、ついでにここも、あすこも、と少しずつ手を広げては、一部屋だけささっと、というわけにはいかなくなってしまうのだ。 掃除というものは、やればやるほど、やらぬ場
2020年10月23日 11:26
奈津のママがこの春、やっと婚約した。ママは、奈津が中学を卒業するまで、ずいぶん長いこと信さんを待たせた。おかげで奈津は、ふたりに、無邪気に文句を言うこともできないほど大人になってしまった。駅のホームに続く長い階段をのぼりながら、奈津は自分が必要以上に歳をとってしまった気がした。 パパが死んだとき、奈津は五歳だった。小さかったけれど、パパが病院のベッドの上で少しずつ死に近づいていくのは
2020年10月28日 01:02
ワタシはヒト、であるからあなたという水の中では 生きてゆけないのですスイスイ スイスイサカナになって泳いでみようとそれでもやってはみたけれどワタシはヒト、であるからあなたという水の中で 溺れてしまいましたサカナになれたらよかったのにと焦がれつつ溺れる幸福もあるのだと息もできず 苦しみながら溺れてしまえてよかったのだと今はそんなことも思い出します身体を横にして 上へ上
2020年11月7日 17:10
碧い粒子がふりそそぐ夏の終わりの夕暮れ窓をあけて 空へ身体を差し出せば いつも何かに置き去りにされてる気がした願いや望みのできるだけ近くへとこの両の腕を伸ばしてはみるけれど心のどこかで だまされまいとする僕がいる風はこんなに胸を打つのに雲は優しく胸を突くのに 「わたしたち、遠くまで来たよね」いつか君は言ったけどまだ 泣けないんだいまだに 泣けないんだ
2020年11月18日 00:49
心の中のずっと深い深いところへ落ちていくその奥にある川面めがけて 落ちていく 明日のことがわからない明日がくるのか わからない 必要とされなかった私にそれでも時は流れているのか つなぎとめておきたかった私にそれでもまとわりつく解放感 かき集めた言葉であなたを意地悪だと言ったことどうか 静かに見逃して 空回りする思い出を胸に刻んでいっそ 清らかに 落ちていく
2020年12月29日 09:18
さっきからミツコは、となりの席の男女が気になってしかたない。「君とは結婚はできないと思う」すぐ横に目を走らすと、少し歳の離れたふたりに見えた。最後にひとりになって静かな場所で考えたいと、このカフェに来たのに、今日はとんでもない誤算だった。「私のこと、本気で好きなのではなかったのね」「そうじゃないよ。好きだからもっと大切にしていたいんだ。結婚がすべてじゃないと思う」男の顔は真剣に見え
2020年12月29日 09:30
贈りもののように思える風景があるなにかの力で ぽん、と それは渡されたようそんな風景に ふと気づく自分がいる目に見えるものと見えないもので 世界ができているとしたらきっと どちらも大切にしたいと思う見えているものの中に 見えないものがふくまれているのに私が見ているものを あなたがそのまま感じているとは限らないそれをさみしいとは もう 思わないけれど今日もまた 私はあなたを抱き
2020年12月29日 09:31
小さな鞄を買った。しっかりした布地でできていて、角の丸い形がコロンとかわいらしく、品のいいイエローがどんな服にも似合った。さすがだな、と思う。それは、おしゃれ上手な彼女と同じ鞄だった。彼女はそんな、甘く女らしい物が似合う人に見えた。私がいつも選ぶものは、革でできているような、丈夫な大きい鞄ばかり。大きな鞄は便利なのだ。必要なものは何でも入れられて安心する。何もかもを詰めこんで、どこ