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「REPRISE」―古き良きアメリカの帽子を、古き良き日本が残る京都で。

<編集・記事執筆>
京都外国語大学 国際貢献学部
グローバル観光学科 3回生
ナム(Nagi Yat Nam)

わたしたちはここ数年、外国人観光客向けの英字フリーペーパーをENJOY KYOTOとともに制作してきました。3回目となる今年は「京都を着よう」をテーマに京都のファッションブランドのなかでも、とくに若者や外国人にも気軽に楽しめる新しいスタイルの和装を提案する内容となっています。

ぼくたちのチームは「Retro Romantic Style」という切り口でコーディネート。そのなかで、着物を取り入れたレトロコーデには欠かせないマストアイテムである「ベレー帽」は、一乗寺に店を構えるREPRISEのものをセレクトしています。

そこで今回はREPRISEの代表であり、制作・販売などを一手に担う上田和宏さんにお話を伺いました。ふだん取材はめったに受けないそうなのですが、わたしたちが学生だからということで今回、特別にお話を伺うことができた貴重なインタビューです。

輸入販売から始まった帽子店が、自ら制作を手掛けることになったわけ。

レトロな面影が残る路面電車・叡山電鉄の一乗寺駅を降りて北へ徒歩5分ほど。左京区一乗寺の静かな住宅街を歩いていくと、小さな帽子シルエットの看板が見えてきます。ここは小さな帽子屋さんREPRISE。2015年から現在の店舗での営業をスタートしています。

開業は2008年に遡ります。開業当初のお店は滋賀県の近江八幡市にあり、当時は海外直輸入の帽子を専門に扱う販売店としてスタートしました。2年後に実店舗を閉店してオンラインショップのみでの販売に業務形態を変更。そのいっぽうで大手ショッピングモールへの出店なども定期的におこなっていきます。

しかし、どうしても自分の手で、自分が理想とする帽子が作りたかった上田さん。2012年に教室に通いながらイチから帽子作り学び、その後は独学での試行錯誤を繰り返しながら、職人としての腕を磨いていったそうです。そしてついに2015年より、現在地である左京区一乗寺で実店舗をオープン。従来の販売だけではなく、自らデザイン・制作した帽子や、お客様のオーダーを受けて制作するオーダーメイドやカスタムメイドでの制作・販売も手掛けるようになっていったのだそうです。

ヴィンテージでスタンダードなものにしかない深い味わいを伝えるために。

では、上田さんが理想とする帽子とはいったいどんなものなのでしょうか。それは、古き良き時代のアメリカやイギリスの薫りを感じる帽子。華美なものではなく、また決してトレンドに左右されることなく、帽子が好きな人に深く長く愛されるヴィンテージでクラシカルな雰囲気の帽子だということでした。いってみれば、1940年代から50年代の古き良きアメリカの雰囲気。当時のブルースやジャズのミュージシャン、あるいは古いモノクロ映画や「ゴッドファーザー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」なんかに登場する人物がかぶっていたような、クラシックなハットやハンチング、キャップなどなどのことです。それを自分なりにアレンジしながら、できる限り当時の道具を使って、昔ながらの方法でつくっているのだそうです。実際にジャズのレコードのジャケットとかを持ってきてもらえれば、それに合わせてオーダーでつくることもできるといいます。

また現在はこれまた独学で帽子木型の制作もされている上田さん。理由は世界的にも帽子の木型を作る職人が減っており、日本でも木型職人は一人しかおらず、その方も現在60代と高齢で後継者もいないという現状に危機感を持ったことがきっかけでした。そんなこともあってか、いまでは世界的にも数少ない「ヴィンテージ帽子の職人」として、著名人たちのあいだでもREPRISEの帽子の愛好家が多いのだそうです。

レトロで和洋折衷というコンセプトにぴったりな、REPRISEのベレー帽。

今回わたしたちがコーディネートで使用させていただいたのは、スタンダード メリノウール バスクベレー帽。バスクというのはフランスとスペインのあいだにあるバスク地方のこと。この地域の羊飼いや農民たちがかぶっていたのでこの名がつけられたのだとか。ベレー帽にはよくトップのところにちょぼがついていますが、あれも農作業で汚れた手でも帽子を脱げるようにつけられたものだとの説もあるそうです。

素材には日本製のメリノウールを100%使用。メリノウールらしい伸縮性があってふんわりかぶりやすいのが特徴です。また、さらにかぶり心地のよさに配慮されていて、内側のかぶり口には同じく伸縮性の高いニットスベリが採用されています。

今回私たちは「大正ロマン」をイメージした和洋折衷コーディネートに挑戦しました。着物もいわゆる、レトロでアンティークな雰囲気が漂うものをチョイス。そこに、このスタイリングには欠かせないベレー帽を合わせ、さらに着物のデザインでも印象的に使用されているワイン色でカラーコーディネートもしてみました。

考えてみれば、REPRISEのプロダクトは、国産の素材を使ってアメリカやヨーロッパのクラシックなスタイルの帽子をつくりたいという思いが表現されているわけで、それ自体がある意味では「和洋折衷」な哲学に基づいているものといえるのではないでしょうか。取材を通じてあらためて、わたしたちのレトロ・ロマンティック・スタイルというコンセプトに、REPRISEの帽子はとてもマッチしていたのだなあと感じることができました。

そして今回、気さくにいろんな話をしていただいた上田さんは「自分が若かったころにもっと海外を旅すれば良かったと後悔している」と話し、わたしたちに「学生のあいだにいろんなところに旅をしたほうがいいよ」とアドバイスをしてくださいました。だから今回のわたしたちのフリーペーパーの紙面やnoteのこの記事を読んでくれたたくさんの国から来た旅人たちが、REPRISEに足を運び、上田さんと交流してほしいと思いました。そうなればきっと上田さんにもほんの少しだけ旅をしている気持ちが味わってもらえると思いますし、それこそが今回の取材と撮影に快く協力していただいた上田さんへのわたしたちからの恩返しになると思うからです。

お店には今回ご紹介したベレー帽はもちろん、ハットやキャップなどさまざまな帽子が並んでいるほか、いまや希少となった帽子の木型や、アメリカ在住のディーラーの友人に頼んで集めた40年代・50年代の貴重なカタログなども、お店に置いてあるので、ぜひ足を運んでみてください!


店舗情報

REPRISE

住所:京都府京都市左京区一乗寺青城町48-1F
075-202-6849
営業時間:13:00~19:00
休み:不定休
●公式サイト:https://www.reprise-store.com
●Instagram:https://www.instagram.com/reprise_store/
●Facebook:https://www.facebook.com/reprise.store/


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