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灰汁詰めのナヴォー

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#チャーハン神炒漢

三位一体は天津炒飯なのか? #パルプアドベントカレンダー2021

三位一体は天津炒飯なのか? #パルプアドベントカレンダー2021

ピッピッピッ、ズゴオオオ……ガキャン!ガキャン!ズサァァァァ……ガキャン、ズサァ、ガキャン、ズサァ!ジャァァァ……パタン!ジャァァァ……パタン!カキャン!ズキャキャキャ......

12月23日、夜9時32分、クリスマスイブのイブ。洋食店”CONQUER”の厨房からランチタイムで大忙しい中華料理屋のじみた調理音が響いた。

厨房の中に男が三人いた。一人の若い男が中華鍋を振って大量の米炒めている。

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チャーハン神炒漢︰チャーハン神も人の子

チャーハン神炒漢︰チャーハン神も人の子

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『はーいでは、今日のはここまでになります。来週の中間テストなんですけど、どうせ防げないのでインターネットと教科書の使用を認めますが、それにふさわしい超高難易度なので覚悟しておくように。お疲れ様でーす』
「お疲れ様です」

 リモート会議から退出し、テツローは軽くストレッチしたあと、ヘアの隅に置いてある木人樁に向かって詠春拳を打ち込んだ。

 緊急事態宣言は終わりが見えてこず、学校が閉鎖され

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン EXTRA

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン EXTRA

 日本某所、覇味庵本社工場、社長謁見場。

 電気による証明がなく、箇所に設置して燭台と提灯の昏い光が昏いに漂っている線香の煙を照らす。鏡のように磨かれた大理石床が天井に書かれた灰をかき分けて天に翔け鳳凰の絵を映している。柱や梁の随所にも龍、饕餮、鰻、蝙蝠など獣の彫刻を彫とこされて、もはや会社より廟宇と呼ぶに相応しい佇まい。しかし廟宇と違い、元々神を奉る本堂がある場所がピラミッド状の高台になってお

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン ⑧ END

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン ⑧ END

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「決めた、加盟を退会する。違約金が発生するだろうが知ったこっちゃない。これ以上本社の下っ端なんかやってられない」
「店長……」
「安心しろ。今月のバイト代はしっかり振り込むぞ」
「ありがとうございます。でもあなたは」
「バイトに心配されちゃ世話ねえなぁ。まずは店を仕舞って、どこかに隠れて手を治すまでじっとしているよ。あの炒漢つー野郎、もし本気で本社と事構えたら、混乱で解約金も帳消しかもしれ

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン⑦

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン⑦

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 蛋炒飯、それが最も簡単で、最も難しいチャーハンだと言われる。材料は米と鶏卵、あと最低限の野菜と調味料。素人が作った米とスクランブルエッグをかき混ぜただけの物と、プロが工夫を凝らして卵が熟していない内に米を混ぜ合わせて、米粒の一つずつが卵に覆われたアヒルの羽毛みたいな色に仕上げる物、それ全部が蛋炒飯の枠に入っている。幅が広いだからこそ、奥が深い。

『蛋炒飯だ。賞味せよ』

 最初に動いた

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン④

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン④

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 生暖かく、湿った空気。鈍色のステンレス調理台、棚、流し台。油で粘性を帯びた床。スープの匂い、腐敗が始まった生ゴミの酸っぱい臭い。どこでも見られるごく普通の厨房光景。

 調理しているのは人間ではない以外は。

「ぼしゅー」「びょーん」「ぐしゅぐしゅぐしゅ」

 三匹、あるいは三体。巨大化したアメーバ、それとも雑巾から絞った水にゼラチンで固めて作ったゼリーのような物体が粘着質の音を立てなが

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炒飯狩り(チャーハント)記録簿 その一 肉絲炒飯

炒飯狩り(チャーハント)記録簿 その一 肉絲炒飯

普通の大学生、テツロー。彼の正体は現代に蘇ったチャーハン神ーー炒漢であった。これが彼による無慈悲なチャーハン狩りの、その記録(食レポ)である

「ハイドーゾ」「ありがとうございます」

 トンと皿がテープルに叩きつけ、オカミは背を向いて仕事に戻った。

 熱気が上がっているチャーハンに直ぐスプーンを入れず、テツローはまず出来たての肉絲炒飯を観察した。調味料を吸って茶色に染めた米粒の一つずつが良い具

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベチャーハン③

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベチャーハン③

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前回のあらすじ:
 炒漢、ヌベッとしたチャーハンのまがい物を食べたことでマジキレ。

「ちょっ客様!?何をなさって」

 テーブル席に駆け付ける店員を、炒漢はスッと手の平を翳して制した。炒漢はケツを落として座り直し、テーブルの横に置いてあるアンケート用紙にペンシルを走らせた。

「な、なんなんですか一体……」

 助けを求める視線を向けてくる店員に対し、センチ美は肩をすくめた。

「店員さ

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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン②

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌベッチャーハン②

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前回のあらすじ:
 餡かけチャーハンを注文したテツロー。しかし目の前に出されたのはヌベッとしたなんかだった。

(えっ、なにこれは?)

 皿の中にあるヌベッとした物体を見たテツローは訝しんで、店員に尋ねた。

「あの、僕が注文したのは海鮮餡かけチャーハンのはずなんですけれど」
「はい、これがご注文の海鮮餡かけチャーハンです。間違いありません」
「そうですか」
「ではごゆっくりどうぞー」

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チャーハン神炒漢 目次

チャーハン神炒漢 目次

一話:炒漢降臨<1> <2> <3> <4> <5> <エピローグ&おまけ>

二話:ノー・モア・ヌペッチャーハン
<1> <2> <3> <4> <5> <6> <7> <8>

番外編
チャーハン神も人の子

チャーハントシリーズ
肉絲チャーハン

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌぺッチャーハン

チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌぺッチャーハン

前回 目次

これまでのあらすじ:
 チャーハン神炒漢に覚醒した大学生、テツロー。学業をこなしながらチャーハン神活動に取りかかった彼はまず餡掛けチャーハンに狙いを定めた。「チャーハンの上に汁をかけてドロドロにするだと?ふざけている」餡掛けチャーハンの消滅を決めた炒漢の前に、一人の白人男性が立ちはだかった。
 ブル・アンカーヘイヴン、彼は餡かけチャーハンを愛し、週に20皿のチャーハンを食べたことで人

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チャーハン神炒漢 エピローグ&おまけ

チャーハン神炒漢 エピローグ&おまけ

🦝

「ぎゃるるるお!」「ミャオーーッ!?」

 中華料理店後楽后(コウ・ラクィーン)、その後ろ、パイプが無計画の配管されて人が通れぬ路地で何かが転がり出し、通りすがりの野良猫は驚き、逃げて行った。

「ぐるるる……おのれチャーハン神……コケにしやがって」

 それは一匹のラクーンであった。しかしただのラクーンではない、その正体はついさっき厨房の中で炒漢と死闘を繰り広げた妖女半鼎魔なのだ。三味珍

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チャーハン神 炒漢⑤

チャーハン神 炒漢⑤

「ギャアアアアアーー!!!」 青白い火だるまになった半鼎魔が激しくもがくが炒漢はレッグロックを緩めことがなく、火炎放射器の如く炎を浴びせ続ける。

「店ぇ、店がァーー!アアアアアーー!!いや待て、契約書ォ!契約書が焼けたら俺が死ぬ!アアアアアーー!!!」

 パニック状態に陥った店長。炎に包まれている妖女のドレスが焦がれてゆく!しかしこの際に彼女の全裸姿に興奮する者がいるまい。

「おのれぇ……い

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チャーハン神 炒漢④

チャーハン神 炒漢④

 搾取される日々。

 当然店長は反抗の手段を考えた。しかし監視カメラのハードディスクが叩き壊され、スマホで録画したらスマホが踏み潰され、弁護士の常連客に相談を持ちかけようとしたら彼の息子の名前から通っている音楽教室のスゲージュール表まで読み上げられて、あの日以来店することなかった。実力で追い出すと試みたジムに通っているもう一人の料理人は内力責めで脈絡が乱され、二度と鍋を振れない体になってしまった

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