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チャーハン神炒漢:ノー・モア・ヌぺッチャーハン

前回 目次

これまでのあらすじ:
 チャーハン神炒漢に覚醒した大学生、テツロー。学業をこなしながらチャーハン神活動に取りかかった彼はまず餡掛けチャーハンに狙いを定めた。「チャーハンの上に汁をかけてドロドロにするだと?ふざけている」餡掛けチャーハンの消滅を決めた炒漢の前に、一人の白人男性が立ちはだかった。
 ブル・アンカーヘイヴン、彼は餡かけチャーハンを愛し、週に20皿のチャーハンを食べたことで人間でありながらチャーネットに任意的に繋げる力を得た。
「チャーネットに通じて脳に響いてる。餡かけチャーハンをこの世から消し去るとな」
『そうだ。パラパラにできたチャーハンを粘液で濡らすとは、まさに外道の所業、消せねばならぬ』
 そういう炒漢に、ブルは自ら鍋を振り、海鮮餡掛けチャーハンを振る舞った。
『なんの真似だ』
「食ってみろ。不味かったらワタシの首を刎ねってもいい」
『大した自信だ。良かろう、お前の覚悟に免じて一口だけ食ってやる。そしてチャーネットから永久追放だ』
 しかし餡かけチャーハンを一口含んだ炒漢は目を見開き、餡かけチャーハンを10秒で平らげた。ブルは不敵に微笑んだ。
『ふぅ、なるほど……』

『感謝するぞブル。おかげでチャーハンを新しい進化形と巡り会えた』
「こちらこそ。ワタシのチャーハンがカミサマに認めてもらうとは光栄だ」

 夕日を背景に、二人は握手を交わした。

 数日後。

「でもテツローくんはまた炒漢ではない頃は普通に餡かけチャーハンを食べていたよね?」
「ああ、どうやら炒漢の……前世の記憶とかが僕の意識を干渉したらしい」
「前世?ということは前にもチャーハンがいたってこと?」
「らしいな。それについて、ブルと筋トレしながらいろいろ話し合うつもりだ。炒漢とチャーネット、不明瞭のことはまた多い」

 テツローと国術クラブの友人であるセンチ美は部活を終わって、小腹を満たすべく中華料理チェーン店「覇味庵[(バーウェイアン)」に来ている。シェフによる味のブレを最小限にしてセントラルキチンで調理し、店で加熱するだけのプロセスを徹した、安定した味がその売りだ。

 因みにふたりがよく通っていた後楽后というと、半鼎魔を追い払ったあと、吊り橋効果によって店長とバイトのケイコがしばらく付き合っていたが、すぐに分かてしまい、ケイコはバイドを辞した。それ以来後楽后の名物である半チャーハンが塩っぽくてねばねばになった。

ー回想シーン始まりー

「なるほど。失恋か」
「そうです……」
 閉店後、テツローと店長がビール瓶が溢れたカウンター席に空を並べて座っていた。
「自分もわかってたんです。歳を空いた恋は長く続かないと……でも一週間とかあまりですよ!一般だったらまたハニームーンの時期でしょう?また何もやってなくて……」
「そんなことはどうでもいい」
「えっ」
「僕は貴様を慰めに来たのではない」
「えっ、でも、さっきから一緒にビール飲んだし……」
「それはそれ、チャーハンはチャーハンだ!」
 パァーン!テツローはカウンターを叩いて立ち上がり、店長は驚いて身を縮めた。
「これでわかった。貴様、泣きながらチャーハンを作ったな!チャーハンが塩っぽくてねばねばになった原因、それはおまえの涙と鼻水がチャーハンに落ちたからだ!違うか?」
 指差しの叱咤!図星された店長は視線を下に向けて更に身を縮めた。
「し、仕方ないでしょう!彼女のいなくなったら、自分で店を仕切るのがしんどくて寂し」
「客にとってお前の事情はどうでもいい!」
「ひっ!?」
「よくもこの僕に……チャーハン神炒漢に体液まじりチャーハン神を食わせたな!この店のチャーネット口コミに-5☆をつけた。もう誰もお前のチャーハンを食わない」

 ー回想シーンおわりー

「後楽后、閉めちゃったね。残念だよ本当に」
「ああ、そうだな(残念なものか。そいつはチャーハンを冒涜したうえに冒涜チャーハンを客に食わせた、最低野郎だ)」
「お待たせしましたー。海鮮餡かけチャーハンと、レタスチャーハンでーす」

 その時、店員がチャーハン二皿を持ってきた。餡かけチャーハンはテツロー、レタスチャーハンはセンチ美が注文した。

「「ありがとうございます」」
「ごゆっくりどうぞー」

「話はさておき、まずは腹を満たそう。ここで食べるのは久しぶりだ。昔は美味かった……うん?」

 皿の上に、かけ汁とチャーハンの境界線がなく、全部ごちゃ混ぜになって一つのかたまりになったヌペッとした物体があった。

(つづく)

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