なぜ中小企業向けコンサルティング会社が社史の仕事を紹介してくれるのか2〜過去のふり返りに意味はあるのか?
当社の手がける社史制作の仕事は、中小企業をクライアントとしている経営コンサルティング会社からご紹介頂くものがひとつの柱となっています。
今回は社史を将来の投資として制作することについて説明します。
コンサルティング会社が社史制作の仕事を紹介してくれる理由
前回、コンサルティング会社が社史制作を薦める理由として、次の項目をあげました。
(1)顧問先との関係が深まる
(2)相手の会社をより深く理解することができる
(3)指導に生かすことができる
また「一般的な社史(公式の社史)」とは別に、先代や現在のトップも含む創業者の子どもや孫、さらにその先につないでいく人たちと、その家族の間だけで共有し、公開が難しいような内容までを取り上げる「私家版の社史」を制作していること、社史制作を始めるタイミングとして多いのは次の3つであることを説明しました。
過去を振り返る意味はどこにあるのか
今回は、このうちの2番目「将来の投資としての「社史」に使っておきたいという気持ちになる」ということに関連して、よく聴かれることについて書いていこうと思います。よく聴かれるのは
『これからが大事で、過去のことだけふり返っても意味がないのでは?』
ということです。
つまり思い出をまとめてもノスタルジーに浸るだけではないかということです。
たしかに思い出をまとめることにとても大切な意味がある場合もありますが、そのことはまた別の機会にまわして、ここでは「これまでの足跡をふり返ることが、ほんとうに将来に生きるのか」という問いかけに答えたいと思います。
将来に生かす作り方
答えは作り方によるということです。つまり、取り上げる内容や取り上げ方を工夫することで将来に生かすことができるし、生かすようにまとめるようにすることです。
この点を考えるときに参考となるのは「京セラフィロソフィー」です。
京セラ創業者である稲盛和夫氏は多くの経営者がよりどころとし、さらにビジネスに携わるあらゆる人のなかに、その考えに対して多くの支持者がいます。
その氏の考えを記した原典とも言うことのできる「京セラフィロソフィー」には示唆に富む至言にあふれていますが、その多くは氏の体験からひもとかれています。
それらはけっして過ぎ去った過去のことにとどまることなく、体験やそのときの気持ちや考えなど具体的なできごとを取り上げ、そのあとに普遍的な考えへとつなげていくことによって、読む者が納得し、自然に自分にひきつけて考えられるように語られています。
語られるできごととしては、たとえば次のような内容があげられます。
書き上げていくと、まだまだいくらもあがりますが、ここにあげたものだけを見てもわかるように、これらは社史で取り上げる事柄そのものです(実際の社史制作にあたっては、このままの構造ではなく、さまざまなな方法で表現します)。
過去の積み重ねが現在の会社を作り、これからの会社を作っていく
もちろん多くの人は稲盛氏のようにめったにない波瀾万丈の人生を送るわけでも、日頃から思索を深めた上で判断や行動をしているわけではありません。
しかし歴史を積み重ねてきた企業には規模の大小に関わらず、さまざまな経営のあり方があり、体験があります。同じ製造業の下請けと言っても、大手の系列に入っている会社と、独立してその都度、得意先を変えてきた会社では違います。また終始一貫、同じ業態業種で歴史を重ねて会社もあれば、持ち味を生かしながら、そのときどきの環境にあわせて業種・業態を変えてきて現在の形になっている会社もあります。
会社に歴史あり
「人に歴史あり」と言うように、会社にも歴史があります。
そうした積み重ねの結果、会社が現在の形になり、組織の運営になっています。その強みを生かすことができる事業領域を見つければ、そこが会社の将来ののび代です。またその強みであった部分を環境によって変えざるを得なくなった場合には、いまの形になった経緯を充分に理解した上で変革に手をつけた方がうまくいきます。
実際に、この点に配慮が欠けてしまったことで、後継者が行う組織変革が宙に浮いてしまったという例は多くあります。
人間関係が密であり、人的資源が会社の業務に直結する中小企業では、こうした点への配慮は、とても重要です。
それらにくわえて、将来の経営者が難局を迎えてしまったときに「私家版の社史」に目を通し「先代、あるいは先々代はここまでやったのだから、自分のがんばれるはずだ」と力を与えたり、困難を迎えても「何十年も歴史があれば珍しいことではない」ということを理解し、経営者が陥りやすい孤独感を和らげてくれることもあるでしょう。
こうしたことを強く意識して、社史を、過去の体験を経営資源として将来に生かすための投資として制作することができるのです。
けっしてノスタルジーに浸るだめだけに制作するわけではありません。
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