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なぜ中小企業向けコンサルティング会社が社史の仕事を紹介してくれるのか

当社の手がける社史制作の仕事は、中小企業をクライアントとしている経営コンサルティング会社からご紹介頂くものがひとつの柱となっています。
毎回、とてもありがたいことだと思っていますが、この機会に、なぜコンサルティング会社がみずからの顧問先に社史制作を薦めてくれるのかを整理してみます。


周年事業の一環としての「公式」な社史

当社が制作を手がける社史はコンサルティング会社からご紹介頂くものも含め、大きく二つに分けられます。

ひとつは会社の周年事業の一環として制作する社史で、社内だけでなく広く取引先や金融機関などに配布され、多くの関係者が参加する記念式典で渡されることもあります。

制作の目的は、会社のPRやイメージ向上、関係先への感謝、社員の一体感の形成、教育や採用活動など広範囲に及びます。

制作にあたっては社員も加わったり、写真家に社員や事務所の撮影を頼んだり、OBにも話を聞きに行ったりすることもあり、制作費用は数百万円となります。

大企業、中小企業問わず、社史といった場合には、多くの方がこちらを思い浮かべることでしょう。

中小企業ならではの「私家版」の社史

ふたつめは、中小企業ならではの社史で、「私家版」の社史と言ってもよい社史です。
配布先はきわめて限られ経営トップと、その親族に限られます。中小企業の場合には経営トップを創業者の家系から選ぶことが多いので、先代や現在のトップも含む創業者の子どもや孫、さらにその先につないていく人たちと、その家族が読者の中心です。

周年事業を機会に制作されることもありますが、それ以外、たとえば事業承継や先代経営者夫婦の年齢を考慮してといったタイミングで制作されることも少なくありません。
また事業を承継した経営トップが、いずれ後を継ぐ人たちに、自分の入社以前の会社のことを伝えられるようにしておきたいというような動機から制作に着手することがあります。

そこに取り上げられる内容は「公式」の社史には掲載されない公開が難しいような社内や取引先とのあいだで起こったできごと、なかにはちょっとした事件や事故とでも呼べるような内容も含みます。

たとえば突然取引先が倒産した時にいかに苦労し、どう対処したのか、あるいは業績の低迷をまねかないように数年間にわたる事業構造の見直しと取引先の入れ替えにどう取り組んだのかといった経営内容に関わることから、事業承継者であり同時に肉親である親子ならではの葛藤、また親から事業を引き継いだ新社長が、社員から新しいトップとして認められるまでの期間のできごとなどです。

そこには大企業では絶対に起こないことや理不尽なこともあります。

将来へ向けた体験や教訓の継承として

これらはのちの経営者にとって、こういうことを乗り越えてきたという思いをたくすとともに、そこから得た教訓がいつか役に立つことがあるかもしれないということから会社の記録(アーカイブ)として残されます。経営に携わる場合に必要な、その会社のフィロソフィーと表現することもできるものです。

制作に関わる人は限定され、会社が設立された経緯や創業者の生育や創業してからの体験と、そこから得られる価値観や使命などが人間ドラマとして語られ、また会社の転換点にどのような課題を克服してきたのか、あるいは失敗したかが人と人の関わりも含めて取り上げられます。

体裁は、あくまで内容重視で文章中心となり、ビジュアルは、主に資料としての写真や年表などになります。保存に耐える簡易印刷で行うことも多く、すでにある材料を使って制作費も百万円以下で行うことも少なくありません。

公式と私家版を両方制作する場合も

公式と私家版、二つの社史は、両方制作されることもあります。
公式の社史は周年に間に合うように、そのあとで制作過程で得られた内容に肉付けされる形で私家版に制作に取りかかることも珍しくありません。

また公式の社史には公開可能な情報を掲載すると書きましたが、制作過程では私家版で扱うような情報にも触れることが一般的です。限られた関係者が集まった場所で、信頼関係を築くことができたと確信した上で、必要に応じて話して頂くこともあれば、自然と「ここだけの話ですが」ということで切り出されることもあります。
こうした内容は最終成果として取り上げることはありませんが、掲載される文章に広がりや深みを生むこととになります。

コンサルティング会社が社史制作を薦めるとき

ではこうした社史制作を、なぜコンサルティング会社が顧問先に薦めてくれるのでしょうか。
これまでの経験から次の理由があると考えます。
(1)顧問先との関係が深まる
 制作の過程で適宜関わったり、ときには取材や打合せに同席することで、相手との距離がより近くなります。
(2)相手の会社をより深く理解することができる
 相手の気持ちや、現在に至るまでの過程を深く理解できます。特に断片的に聴いていたコンサルに関わる以前の内容を系統的に理解することができます。
(3)指導に生かすことができる
 顧問先の会社の「らしさ」を生かした指導ができ、そのことが「あるべき論」ではなく、「こうすればできる」というより具体的なアドバイスが可能となります。

また社史制作を薦めるには、以下のような状況にあることが多くあります。

・業績が好調で利益が上がっている
・将来の投資としての「社史」に使っておきたいという気持ちになる
・周年や事業承継のタイミングにある、あるいは先代の経営者夫婦の体力年
 齢を考慮する

これまで制作した社史は、ありがたいことに依頼先から「作って良かった」と異口同音に言って頂いています。
依頼先の中小企業、コンサルティング会社、そして当社の三者にとって、成果を実感できる良い仕事だと感謝するとともに、これからも続けていきたいと思います。

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