見出し画像

連載「カナルタ コトハジメ」#4 嫌いだった写真と、僕はパリで恋に落ちた

*2021年10月2日(土)より全国のミニシアターで劇場公開されるドキュメンタリー映画『カナルタ 螺旋状の夢』。僕自身がひとりでアマゾン熱帯雨林に飛び込み、かつて「首狩り族」として恐れられていたシュアール族と呼ばれる人々の村に1年間住み込んで撮った映画です。この連載では、『カナルタ』をより深く味わってもらえるように、自分の言葉でこの映画にまつわる様々なエピソードや製作の裏側にあるアイデアなどを綴っていきます*

_______________________________

前回記事:https://note.com/akimiota/n/n5454f7228e8f

僕は写真がもともと嫌いだった。「写真が嫌い」というと「写真に撮られるのが苦手」みたいなニュアンスが日本語だと出てしまうけれど、そういう意味ではない。"Photo-graphy"=「光で描く画」というアートのことをまるで誤解していたのだ。日本で「写真」という表現が占める位置は、少なくとも僕にとってとても違和感があった。もともと美術館が大好きだった僕は、子供の頃から絵画によく触れていた。実際、東京は絵画を扱う美術館には事欠かない。でも写真となると急にその選択肢は激減する。それに、すでに写真に対して深くアンテナを張っていたりしない限り、写真の本当の醍醐味に触れることができる日常的機会は少ない。書店で目にする写真雑誌は、写真ではなくまず「カメラ」という機材から話が始まっているように思えるし、実際雑誌の名前自体が往々にして「●●カメラ」か「カメラ●●」だ。これはきっと日本企業が世界中のカメラ市場を圧倒的に支配している事実とも関係しているのだろうけれど、写真を好きでもない限り、そんな裏のことまでそもそも考えない。僕はいちいち「プロっぽいテクニック」や「最新のカメラがどれだけ進化したか」から話を始め、いかに桜や紅葉やキレイな女性をうまく撮るかだけを説明するカメラ雑誌が大嫌いだった。ひいては、写真の魅力など一切理解できなかった。そんな僕を根底から変えたのは、紛れもなくパリだ。

ここから先は

2,794字 / 5画像
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?