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雲の切れ間を飛び交う雁
雲の中を飛ぶ雁(かり)は、うまく飛ぶこともできず、群れから外れてしまうのだろうか。分厚い雲の中に飛び込んだ翼は、重く濡れ重みを増す。それでもその雲を抜けたのならば、そこには澄み渡った空が待っている。私はきっと真っすぐにしか飛べない雁(かり)。その切れ間を、待ち受けている青空に焦がれて。苦しい最短距離を飛んで回り道。それでもあなたが共に飛ぶのなら。帰巣本能(きそうほんのう)に従って何度でも。
昨
花が散って染まるのは
トントン、ざばあ、ぽたたた、ぴちゃん。様々な水の音たち。ところどころ立ち上る湯気。染殿は水と植物たちの音や匂いで満ち溢れている。美しく色鮮やかな花も、硬い木の皮も、皆すべて何かの色を身に宿している。まさかそうとは思わないような色が、滲みでることの面白さ、興味深さ。織りなす色が幾重にも重なる美しさ。彩りはそこかしこに潜む。
「あなたはまるで橘の花の香りのようだ。」
あの人は私にそうおっしゃった。