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アルセーヌ・ルパン『水晶の栓』その1-怪盗の首領としてのルパンが暗躍!スリリングな冒頭はルパン作品で随一!-

今回から、アルセーヌ・ルパンシリーズの長編『水晶の栓』をご紹介していきたいと思います。

YouTubeや拙著でも語っていますが、私はこの『水晶の栓』がルパン作品の中でも一番と言ってもいいくらい好き。

冒頭から、ルパンが怪盗としての側面を前面に押し出してきているので、かっこいいのなんの。

『八点鍾』と同じくらい好きかな。

『八点鐘』は、怪盗としての顔を封印していますが、恋愛要素の強いフレンチミステリで、それはそれで好きなんです。

YouTubeと拙著もあわせてご覧頂けると嬉しいです。


『アルセーヌ・ルパンと歩くフランス パリ・エトルタ編』
https://www.amazon.co.jp/dp/B08B8VZBZS

『水晶の栓』は、映画化できるんじゃないかと思うくらい、スケールの大きな物語なので、これからご紹介するのが楽しみです♪

私が一押しするかっこいい冒頭は、ルパンが大勢の手下を率いて、ある家に忍び込む場面から。

ルパンは、手下に颯爽と指示を与えている盗賊の親分、頭領といった風です。

しかも、舞台はアンギャン。

パリから見て北に位置するアンギャンの街

パリからみて北にある町で、SNCFでパリから1時間弱程度です。

パリ郊外の街アンギャンレバン

街の中心に大きな湖があり、湖のそばに建つカジノも物語の冒頭で登場します。湖はもちろんカジノも実在しています。

ルパンはサンチュール通りにある家に盗みに入り、住んでいる代議士がしばらく戻ってこないことを手下に確認しますが、まあ手下の数の多いこと・・・。

サンチュール通り

ルパンは、盗みが楽すぎて、あんまり面白みがないとぼやいていますが・・・。

やはり、ルパンはスリルを求める人なんでしょうね。

しかし、なんとそこへ代議士の従僕が帰ってきて、手下やルパンとひと悶着起こす。

なんとか従僕を縛り上げて、ルパンたちは素晴らしい調度品の数々をボートに運び込む。

ルパンがそろそろずらかろうと思っていた時、手下のジルベールが珍しい聖遺物があるらしいから、もう少し屋敷で探したいと言う。

ルパンは10分だけだと言って、猶予を与えるが、10分経ってもジルベールは戻ってこない。

しびれを切らしたルパンが見に行くと、同じ手下のヴォシュレーと取っ組み合いをしていた。

ヴォシュレーは肩から血を流しており、ジルベールは、従僕のレオナールにやられたと言う。

ルパンが慌ててレオナールを縛っておいた場所に行くと、なんと彼は喉にナイフを突き立てられ、死んでいた。

人殺しを嫌うルパンは、ジルベールを叱り飛ばす。

そして、彼が必死になって探している物が本当に聖遺物なのか気になる。

しかし、それを確かめる間もなく、人の声が聞こえてくる。

レオナールは既に死んでいるのに、彼から声が聞こえるのだ。

ルパンははっとして、死体を持ち上げると、電話があり、かすかな人の声が聞こえていた。

レオナールは縛られていたが、縄がゆるんだ際に、警察に電話をしていたのだ。

ルパンが逃げようとしたとき、時すでに遅しで、警官たちが屋敷を包囲してドアをたたく音が聞こえる。

ルパンは、怯える部下に対して「黙ってろ」と言い、「何も言うな!動くんじゃない」と言う。

ルパンはこの危険が迫っている瞬間が、”人生で最高と呼ぶ一瞬、彼の生きがい”だった。

やっぱりルパンはスリルが大好き!!なんだろうな・・・。

ルパンは、自分の部下達ジルベールとヴォシュレーを組み伏せると、警官相手に「やあ、捕まえるのに苦労しましたよ!」と言って、自分は盗賊を捕まえた人物の振りをする。

警察部長があとで怪しいと気づいたとき、ルパンはもうそこにはおらず、ボートが湖の上を渡っていた。

警官たちは湖のボートを捕まえようと必死になり、拳銃を撃つが、ボートには誰も乗っていなかった・・・。

ルパンはその頃湖を泳いで、もといた場所まで戻っていたのだ。

彼は大急ぎでパリの隠れ家のひとつ、マティニヨン通りの家へ戻る。

パリのマティニヨン通り

ルパンは、ジルベールから取り上げた「ガラス栓」を眺め、なぜこんなものを必死になって手に入れようとしていたのか考えるが、さっぱりわからない。

ルパンが眠りに落ち、目覚めると、なんとそのガラス栓は消えていた・・・。

続く。

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