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アルセーヌ・ルパン『813』 -部下の脱獄を堂々と予告するルパン!そして事件の動向を探るセルニーヌ公爵は何者?-

今回も、ところどころ私の感想を入れながら、前回のストーリーの続きを見ていきたいと思います。

もうすぐ逮捕すべき人物が、この部屋に入ってくると聞いて、バラングレー総理は唖然とする。

グレル刑事ともう一人の刑事、そして総理大臣室の取次ぎ係が入ってきた。

しかし、その後誰もこの部屋に入ってくる様子はない。

総理はルノルマン部長に向かって、冗談を言ってからかっているのか!?と聞くが、部長は逮捕すべき人物はもう既にこの部屋に入っていると言う。

部長は、総理大臣室の取次ぎ係に向かって、「先日、ケッセルバッハになりすまして、リヨン銀行に行っただろう?」と言う。

もちろん、そのジェロームという人物はシラを切るが、ルパンの一味であることをばらされ、グレル刑事によって取り押さえられる。

(ルノルマン部長が「なぜ政府官邸に忍び込んでいるルパンの部下を見つけることが出来たのか⁉」ということを頭のかたすみに置いておきながら読み進めると、後半のストーリーでああそうだったのか!と思う箇所が出てきます。)

総理は、自分に近い人物にルパンの一味がいたと知って驚愕する。

(総理大臣の近くに、自分の部下を潜らせておくなんて、さすがはルパンです。)

翌日、アルセーヌ・ルパンからの手紙がルノルマン国家警察部長宛の公開状として、パリの新聞に一斉に掲載された。

それには、取次ぎ係りをルパンの一味として見破ったことへの賞賛、ケッセルバッハ殺しの濡れ衣を晴らしてくれたことへのお礼が綴られていた。

そして、お礼の代わりにルパンもこの興味深い事件の捜査の手助けをすると書かれてあった。

4年の隠遁生活を経て、またルパンがこの世に復活したのだ!

そして、取次ぎ係りジェロームを5週間後に刑務所から脱獄させると宣言する。
(この予告がいかにもルパンらしいやり方です。予告をすると当然ながら、監視や警備はいっそう厳しくなるのですが、そんな状況でどうやって部下を脱獄させるの⁉という心理状態に読者をもっていくことが出来ますから、いっそうハラハラドキドキします)

そして、次の章からは、セルニーヌ公爵が登場します↓

セルニーヌ公爵はオスマン大通りとクールセル通りが交わるアパルトマンの1階に住んでいる。

拙著で、このセルニーヌ公爵の住まいを紹介しているので、ご興味のある方は是非ご覧ください。因みに、私はこのクールセル通りが、パリの通りでお気に入りの1つです。

セルニーヌ公爵は侍従に、ケッセルバッハ夫人の様子を聞く。

夫人は今はガルシュの未亡人ホームに住んでいるらしい。

パリ郊外のガルシュ

(ガルシュはパリの南西に位置する郊外。サン・クルーの隣に位置する街です。近いうちにYoutubeでもパリ郊外を取り上げる予定です)

↓ガルシュについて。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A5

公爵は、「例の娘は?」と聞く。

その“例の娘”であるジュヌビエーブが、ケッセルバッハ夫人の家の近くに住んでいて、夫人と知り合いになったことが分かる。

公爵は次にドードビル兄弟を呼んで、警視庁の内情を尋ねる。

2人は公爵の部下であるが、警視庁のルノルマン部長やグレル刑事の部下でもある。

すなわち、公爵は自分の部下を警視庁に潜り込ませているのだ。

(自分の部下を警視庁に潜り込ませていることから、このセルニーヌ公爵は只者ではないことがわかります)

事件のあったパレス・ホテルの捜査状況から、チャップマンへの犯行が行われたのは、死体が見つかった階しか考えられず、すなわちそれはケッセルバッハ殺しの共犯者があの階にいたことを示している。

あの階に宿泊していた“バーベリ少佐”が事件後、蒸発したことから、公爵はこの人物に着目する。

また、ピエール・ルデュック(ケッセルバッハがなぜか探していた人物)は死んだということが明らかになる。
(このピエール・ルデュックも、ストーリーの重要な人物になります。既に死んでいますが・・。)

公爵は事件の鍵を握る人物が一人死んでしまったので、事件の手がかりを得る機会が減ってしまったと嘆いたが、最後にフィリップという男を部屋に入れ、ジェラール・ボープレという男の様子を聞く。

フィリップは、ホテルボーイとして、ベルサイユの「ホテル・ドゥ・ザンプルール」で働きながら、ジェラールの動向を伺っているのだ。

ベルサイユのYouTubeもあわせてご覧頂けると嬉しいです。

ジェラールは、お金がなく、自殺を図りそうになっているらしい。

フィリップ曰く、もうすぐジェラールがここにやって来るという。

そして、青白い顔のやせこけた青年がやってきた。

ボーイにここに来れば、(公爵がお金持ちなので)お金をくれるかもしれないと言われたようだった。

しかし、公爵は、わざと青年に冷たくあたり、青年が‘最後の頼みの綱’だと思っている「お金の送金に関する電報」が、今夜届くことになっていることを知ると、フィリップ(部下)に向かって、その電報をジェラールに渡さないように命令する。


この章ではたくさんの新しい登場人物が出てきましたね・・・。
思い通りに部下を操り、ケッセルバッハ事件の動向を探るセルニーヌ公爵とは一体何者なのか?気になります。
でも、頭がきれて只者ではないのはわかりますね。

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