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純粋文豪批判

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文豪の遺した文章について、ツッコミを入れた記事を収めています。
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記事一覧

R20指定の雪国

R20指定の雪国

「ヘンタイ」という言葉は「ツナミ」と同様、海外でそのまま通じるらしい。どうやら日本固有の文化として認知されているようだ。
日本人として、嬉しいやら哀しいやら、複雑な心境だ。

「ヘンタイ」の国、日本。
その認知を世界にひろめた立役者のひとりに、川端康成の名を挙げたい。
私見によると、川端は世界公認の変態作家だ。

川端は1968年にノーベル文学賞を受賞している。
その理由は、

受賞理由は、「日本

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それはそうと、君はまだ童貞かい?

それはそうと、君はまだ童貞かい?

初対面でいきなり、「君は童貞かい?」はないだろう。
失礼だし、不穏だ。
迫られた側は、瞬時に勘ぐり、無駄に身構えてしまう。

はじめて話を交わす相手には、気をつかうのが礼儀だ。
脅威をあたえてはならない。
相手の私生活には深く踏み入らないのがエチケットであり、
政治・信条に関する内容は御法度、
セクシャルな言動も論外である。

そんな論外を、三島は当然のように『金閣寺』で描きだす。

以下に引用す

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先生、便箋383枚は困ります

先生、便箋383枚は困ります

ぼくの手元には岩波文庫の『こころ』がある。
掌サイズで、ポケットにも入り、持ち運びに便利だ。
ページ数も300ページほどで、かさばらない。

が、便箋383枚となるとどうか?

多くの人は、たちまちにして、持て余すことになるだろう。
そんな分量の手紙が送られてきたら閉口だ。
保管場所にも困るし、いざ読もうとしたら机が必要になる。
電車などで気楽に読めるものではない。
とにかく取り扱いに困る。

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"くるぶし"まで8cmの金閣寺

"くるぶし"まで8cmの金閣寺

三島由紀夫の『金閣寺』をはじめて読んだのは高校3年。
感銘をうけた。語彙が豊穣で、文章も流麗。これはすごい作家だと思った。

が、その感銘はすぐに萎えた。神保町の古書店で、三島の写真集を見てしまったからだ。たとえば、こんな写真。

以来、三島の作品を読もうとすると、この裸体が頭をよぎり、どうしても、素直な気持ちで作品を堪能できなくなってしまった。

美文を読んで唸らされる。うんうんと咀嚼しようとす

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総計44回の「そうして」「それから」

総計44回の「そうして」「それから」

全部で44回。
太宰治の『トカトントン』に出てくる「そうして」と「それから」の合計数だ。ぼくも暇だ。いちいち数えた。
しつこいようだが、この記事でも『トカトントン』についてとりあげる。
(前回の記事は下記リンク)

『トカトントン』は決して長い小説ではない。
文庫本のページにしてわずか21ページの短編だ。
 
そんな短い文章のなかで、「そうして」が34回、「それから」が10回も出てくる。やや異常だ

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「。」まで337文字のトカトントン

「。」まで337文字のトカトントン

まず、話の便宜上、太宰治『トカトントン』の一部を引用する。
すこし長いが、ご勘弁を。

何の疑うところもなく堂々と所信を述べ、わが言に従えば必ずや汝自身ならびに汝の家庭、汝の村、汝の国、否全世界が救われるであろうと、大見得を切って、救われないのは汝らがわが言に従わないからだとうそぶき、そうして一人のおいらんに、振られて振られて振られとおして、やけになって公娼廃止を叫び、憤然として美男の同志を殴り、

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