山崎毒鼓

中国系航空会社職員。前科一犯(罪状は秘す。但しピンクではない)文学/読書にまつわるあれ…

山崎毒鼓

中国系航空会社職員。前科一犯(罪状は秘す。但しピンクではない)文学/読書にまつわるあれこれについて書きます。

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  • 純粋文豪批判

    文豪の遺した文章について、ツッコミを入れた記事を収めています。

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それはそうと、君はまだ童貞かい?

初対面でいきなり、「君は童貞かい?」はないだろう。 失礼だし、不穏だ。 迫られた側は、瞬時に勘ぐり、無駄に身構えてしまう。 はじめて話を交わす相手には、気をつかうのが礼儀だ。 脅威をあたえてはならない。 相手の私生活には深く踏み入らないのがエチケットであり、 政治・信条に関する内容は御法度、 セクシャルな言動も論外である。 そんな論外を、三島は当然のように『金閣寺』で描きだす。 以下に引用するのは、主人公である溝口が大谷大学に進学し、同級の柏木とはじめて会話をする場面で

    • 大人になるための試練

      ⇒お悩み⇒お答え人間が三人集まれば政治がはじまります。 政治がはじまれば派閥が生まれ、意見が対立します。 学校のクラスは社会の縮図です。 社会に出ると、人間関係はなおいっそう複雑怪奇な様相を呈し、抜き差しならぬものになってきます。 自分の親ほども年の離れた人間の愚痴を聞かされたり、叱責されたりするのです。 「私はそういうめんどくさいことに関わりたくないので適当に受け流しています」という態度ではいられなくなります。本当です。 けろろんさん。 いまは修行のときです。 大人にな

      • 公衆の場で胸をさわる度胸

        ⇒お悩み⇒お答え1年半交際をして肉体交渉がないというのは、たしかに、「なんで?」と思わざるをえません。 しかし見方を変えれば、その彼氏はむちむちわらび餅さんを軽く取り扱うことをせず、大切に思っていることの証左でもありましょう。 男性というのはとかく手が早いものです。 交際突入の前にまずは肉体交渉、などということもざらではありません。 セックスを飲み屋の「お通し」程度に軽く考えている輩と比べたら、むちむちわらび餅さんの彼は昨今めずらしいプラトニックラブの具現者で、賞賛に値

        • 自分を変えるほうが簡単

          ⇒お悩み⇒お答えMs.綿棒横丁さん お便り、拝読しました。 冒頭の「ペット失踪」から「個人情報の漏洩」まで、論旨が飛躍しすぎている感があり、やや無理があるように思います。「個人情報の漏洩」がここで出てくるのは、唐突であり、奇怪です。 それはさておき、お困りのようですので、私なりの見解を述べさせていただきます。 嘘をついたり悪口を言ったりするのは、信義則に反するものの、実害は少ないので、放っておけばよろしいかと思います。 こころを広くお持ちください。 「高齢か精神病のせ

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          6本

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          フォローの前に、句読点を

          ⇒お悩み⇒お答え淋しがり屋のペンギンちゃん。 一読して、相手が好きだという気持ちはわかりました。 小学6年生から高校入学に至るまで、一途な想いを持ち続けているという、その純粋さはえがたいものです。 まっすぐで素晴らしい。 しかし、そのまっすぐさを、そのまま、まっすぐ文章で表現してはいけません。 彼のインスタをフォローする前に、まず、やるべきことがあります。 句読点の使い方を、いまいちど、復習してみましょう。 彼への告白を綴った手紙。 それに対して彼から返事がないのは、好き

          フォローの前に、句読点を

          100倍の差に、100倍の寛容を

          ⇒お悩み⇒お答え興奮されているのか、筆が乱れ、論旨の通らない箇所が散見されます。 すこし落ち着きましょう。書面でも取り乱した姿は見苦しいものです。 以下、私なりに補正・解釈したうえでお答えします。 率直に申し上げまして、寛容さに欠けているように思われます。 6年も勤められているぷんぷん丸さんご自身と、入社3週間の新人とでは、差があるのは当然でしょう。 単純に計算して、100倍以上の時間の差があります。 (6年=2190日。3週間=21日。2190日÷21日=104) 自分よ

          100倍の差に、100倍の寛容を

          R20指定の雪国

          「ヘンタイ」という言葉は「ツナミ」と同様、海外でそのまま通じるらしい。どうやら日本固有の文化として認知されているようだ。 日本人として、嬉しいやら哀しいやら、複雑な心境だ。 「ヘンタイ」の国、日本。 その認知を世界にひろめた立役者のひとりに、川端康成の名を挙げたい。 私見によると、川端は世界公認の変態作家だ。 川端は1968年にノーベル文学賞を受賞している。 その理由は、 受賞理由は、「日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えたため:"

          R20指定の雪国

          先生、便箋383枚は困ります

          ぼくの手元には岩波文庫の『こころ』がある。 掌サイズで、ポケットにも入り、持ち運びに便利だ。 ページ数も300ページほどで、かさばらない。 が、便箋383枚となるとどうか? 多くの人は、たちまちにして、持て余すことになるだろう。 そんな分量の手紙が送られてきたら閉口だ。 保管場所にも困るし、いざ読もうとしたら机が必要になる。 電車などで気楽に読めるものではない。 とにかく取り扱いに困る。 しかし、『こころ』の主人公である「私」は、なんの苦もなくその紙束を取り扱っている。

          先生、便箋383枚は困ります

          "くるぶし"まで8cmの金閣寺

          三島由紀夫の『金閣寺』をはじめて読んだのは高校3年。 感銘をうけた。語彙が豊穣で、文章も流麗。これはすごい作家だと思った。 が、その感銘はすぐに萎えた。神保町の古書店で、三島の写真集を見てしまったからだ。たとえば、こんな写真。 以来、三島の作品を読もうとすると、この裸体が頭をよぎり、どうしても、素直な気持ちで作品を堪能できなくなってしまった。 美文を読んで唸らされる。うんうんと咀嚼しようとする。と、次の瞬間、「ふんどしのマッチョが得意満面でこちらを見つめている」図が去来

          "くるぶし"まで8cmの金閣寺

          総計44回の「そうして」「それから」

          全部で44回。 太宰治の『トカトントン』に出てくる「そうして」と「それから」の合計数だ。ぼくも暇だ。いちいち数えた。 しつこいようだが、この記事でも『トカトントン』についてとりあげる。 (前回の記事は下記リンク) 『トカトントン』は決して長い小説ではない。 文庫本のページにしてわずか21ページの短編だ。   そんな短い文章のなかで、「そうして」が34回、「それから」が10回も出てくる。やや異常だ。平均して1ページに2回も「そうして」「それから」が出てくる。いくらなんでも「接

          総計44回の「そうして」「それから」

          「。」まで337文字のトカトントン

          まず、話の便宜上、太宰治『トカトントン』の一部を引用する。 すこし長いが、ご勘弁を。 何の疑うところもなく堂々と所信を述べ、わが言に従えば必ずや汝自身ならびに汝の家庭、汝の村、汝の国、否全世界が救われるであろうと、大見得を切って、救われないのは汝らがわが言に従わないからだとうそぶき、そうして一人のおいらんに、振られて振られて振られとおして、やけになって公娼廃止を叫び、憤然として美男の同志を殴り、あばれて、うるさがられて、たまたま勲章をもらい、冲天の意気をもってわが家に駆け込

          「。」まで337文字のトカトントン