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2022年2月の記事一覧

できれば仕事のできる猫の手を借りたい【短編小説#39】

できれば仕事のできる猫の手を借りたい【短編小説#39】

猫の手も借りたいというが、誰でも良いという訳ではない。
ある程度知見があって背景も理解していないと、逆に説明が必要になったりして手間を取られることがある。

とは言え、猫の手も借りたいほど追い詰められている。人がどんどん居なくなったのに、不足要員を埋めずに、残っている人で業務を分担し、プロジェクトが走っている。

「あー猫の手でも借りたいよ〜。おててを貸してくれるキャワイイ猫ちゃんいないかな〜。」

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「宜しくお願い致します。」以外のことば【短編小説#38】

「宜しくお願い致します。」以外のことば【短編小説#38】

A氏は今週一回も布団で寝れていない。税理士にとって、2月は繁忙期真っ只中。しかも、中堅中小企業向けのM&Aサービスを展開する企業の代表取締役もしているので、24時間フル稼働していた。

十分に睡眠時間も取れていないので、集中がすぐに切れる。深夜12時頃にメールを打っていると、ふと「宜しくお願い致します。」の文字が気になった。

「宜しくお願い致します。」って形式だよな。ここに想いはほぼ込もっていな

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オカカ60%チョコレート【短編小説#37】

オカカ60%チョコレート【短編小説#37】

「勝てない。これじゃあ、他の人に埋もれてしまう。」A子は焦っていた。

想いを寄せるB氏に心を込めたチョコを贈りたい。でも、彼は人気者なので、おそらく美味しいチョコが沢山届くだろう。それを思うと、差別化しないと記憶には残らないと思った。

どうすれば頭ひとつ抜けることができるか。少し大人なB氏のことを思い、カカオ含有量60%のハイカカオを考えていた時に閃いた。カカオじゃなく、オカカにすれば面白いの

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非暴力のウルトラマン【短編小説#36】

非暴力のウルトラマン【短編小説#36】

この星のウルトラマンは暴力を否定する。
暴力では問題の本質を解決できないと考えているからである。

ではどうするか。

まず、ウルトラマンは暴れて言うことを聞かない怪獣を強く抱きしめる。

怪獣は暴れたくて暴れている訳ではない。誰も救いの手を差し伸べず、一人で苦しみ続けたから、自暴自棄になって暴力でしか表現できなくなっているのだ。だからこそ、ウルトラマンは相手を強く抱きしめる。

どんなに暴れてい

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