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赤ちゃん産んだら「坐月子(ズオ・ユエズ)」

「坐月子(zuò yuèzi ズオ・ユエズ)」という中国語をご存じだろうか。

日本語で言うと「産後の肥立ち」にあたるのだろうか。女性が出産後、1ヶ月にわたって身体を休めて養生する中華圏独特の「産後ケア」の伝統習慣だ。

私も実際に知らないので色々調べると、「これはダメ、あれもダメ」と1ヶ月間にわたって生活上の制約が加えられることが書かれていて、とにかく1ヶ月静かにしていなさい、というもののようだ。

中国や台湾で出産を経験した日本人が「坐月子」に戸惑ったことを書いたブログもいくつかあったが、その制約には、例えば次のようなものがあるという。

1ヶ月間ずっと・・・

*入浴、洗髪をしてはいけない。
*歯を磨いてはいけない。
*ベッドから下りてはいけない。
*あまり会話をしてはいけない。
*冷たいものを食べたり飲んだりしてはいけない。
*漢方スープ大量に飲みなさい。
*卵1日6個食べなさい。
*夏でもクーラーをつけてはいけない。
*泣いてはいけない。
*スマホ、テレビ、読書禁止

        ・・・などなど、さまざまなものがあるらしい。

えっ?冷たいものはダメ云々はわかる気もするが、髪の毛も洗えない、歯も磨けないなんて・・・なんで!? 臭いし、非衛生的で身体に悪そうだし、なんで!?

出産直後は骨格が開いていて身体が云々などと、色々理由もつけられているようだが、やはり伝統的な習慣ということで、科学的な観点からは色々疑問視されるものもあるようだ。

また、身体の保養だけでなく、「メンタルケア」もとても大切になってくると思うが、伝統的な禁忌は、そういう観点から問題が起きることもある、と書かれたものも読んだ。「泣いてはいけない」も、時にはストレスを内に留めることになるかもしれない。

最近、中国の知り合いの娘さんが可愛い赤ちゃんを産んだ。

写真転載禁止

さあ、この赤ちゃんのお母さんも、例外なく「坐月子(ズオ・ユエズ)することに。

昔ならば家で行う人も多く、お姑さんなどが赤ちゃんの面倒を見たり、月嫂(yuèsǎo ユエサオ)と呼ばれる、赤ちゃんの面倒を見る女性を雇ったりするそうだが、今どきは「坐月子」専門の施設、「月子中心(=月子センター)」に行くことが多いという。このお母さんも、家の近くの月子中心に入った。

中国東北部某市の「月子センター」 以下同センターの写真 転載禁止


「坐月子」は、さきほど書いたような「あれだめ、これだめ」の辛い1ヶ月だと思ったので、彼女のことも心配していたのだが・・・

写真を何枚か送ってもらったら、部屋はなんと快適なホテルのような個室。しかし決して富裕層向けの施設というわけではなく、彼女も普通の家庭の方。

赤ちゃんはこのようなベッドに↓  そして奥には、もう一つベッドが。
こっちのベッドに寝るのは、さきほど紹介した「月嫂(ユエサオ)」だ。

月嫂は、夜もずっといてくれて、赤ちゃんが泣いたらあやしたり、ミルクをあげたり、オムツを換えたりするそうだ。お母さんが夜睡眠を取れるように。

日中お母さんは、栄養があり刺激が少ない、身体に良いものを食べ続けるという。

おお。漢方スープ大量に飲まされる、とだけ聞いてたが、見たらバラエティーに富んで、結構美味しそうだ!

コッテリした食事、大皿料理に慣れた中国の人には物足りないかもしれないが、日本でこの料理のお店出したら結構人気が出そうな感じすらする。ビデオで本人は「美味しい」と言っていたが、周りに月嫂やセンターのスタッフがいた状況だったので本当かどうかは、未確認(笑)


赤ちゃんをお風呂に入れるのも、月嫂(ユエサオ)。

このお母さんは帝王切開をされたとのことで、傷跡も痛むので赤ちゃんをすぐには抱けなかったようだが、通常の分娩でも、基本はこの「月嫂(ユエサオ)」が赤ちゃんを抱っこして、面倒を見るという。

お風呂が終わったら、背中のマッサージ。赤ちゃん気持ちよさそう。

お昼寝タイムも、月嫂。

うーん、私には何か違和感がある。

送ってもらった写真と話だけなので分からないけど、坐月子を身近に見たことがない私には、なんかお母さんと生まれたての赤ちゃんの「距離」に違和感があった。上のお風呂の写真も、赤ちゃんは月嫂をお母さんだと思ってるような表情に見えてくる。

しかし、渾身の力で出産というものすごい事を成し遂げた後のお母さんにとっては、この期間だけでも育児から離れられるのは、やはりとても助かるのだろうか。

で、一番最初の私の驚き。「あれだめ、これだめ」は、このお母さんの場合、あんまりなさそうではないか? 話を聞くと、この月子中心の中はクーラーがずっとついて涼しかったそうだし、スマホ見まくってたし、全く問題はないと。(一番気になっていた、髪の毛を洗ってないかは、聞けなかったが・・・)

この赤ちゃんのお母さんのお母さんに、何十年も前のご自身の時の体験を聞くと、

「昔は貧しかったから、月嫂なんて雇えないし、家で坐月子して母が面倒見てくれました。母は、“髪の毛洗ったらダメよ!”と言うけど、臭くなって気持ち悪いから、実はこっそり隠れて洗ってましたよ(笑) そこそこ田舎でしたけど、うちはそれほど坐月子の作法は厳格でなかった気がします。今はもっと楽で、ちょっと制約があるだけで、ケアの体制も万全だし、いいですね。」

・・とのこと。

日本人にとっては謎の多い「坐月子」。中国でも都市と農村、また地方によっても違うのかもしれないが、私はまだ実態がよくわからない。中国人には当たり前だと感じていても、外国人がやると辛く感じることもあるかもしれないし。

中国や台湾(韓国も?)で「坐月子」を、ご自身やご家族やお知り合いが体験された方がいらっしゃいましたら、エピソードや忌憚のない感想をぜひ伺いたいです。(けんいち★人民熊猫1号さんの顔が浮かぶ😀)



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きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀


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