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【AISO制作インタビュー】耳に残らないけれど、心に響く『朧光(obscure light)』(ゲスト:zezeco)

音×テクノロジー。AISOはこれまでにない音楽構築システムです。

プログラムが『音のカケラ』をリアルタイムかつランダムに組み合わせることで、“終わらない音楽”を半永久的に構築し、スイッチを切るまで無限に近いバリエーションで鳴り続けます。

AISO『アーティスト版』は、これまで計10組のアーティストに楽曲を制作いただきました。

今回は2024年2月にリリースされたAISO『朧光(obscure light)』から、zezecoのおふたりにお話をうかがうべく、AISOチームがzezecoの拠点の沖縄まで行ってきました。

ぜひzezecoさんのAISOを試聴しながら、お読みください!

zezeco(青木ロビン・manukan)
日本のオルタナティヴロックシーンを牽引するポストロックバンドdownyの青木ロビンと、RYUKYUDISKOへの参加や海外アーティストのremixなどを多数手掛け活躍するテクノアーティストmanukanとの二人組ユニット。ノイズやダブの要素を取り入れたエレクトロを軸にして繊細なメロディーと緻密に構築されたリズムが絡むフリーキーな構成。オランダのアーティスト(彫刻家、物理学者)テオ・ヤンセン展への起用など、クールな電子音とリバースを多用した有機的サウンドのテクスチャーは国境を越えた支持を得ている。

【左から】津留 正和(AISO) / 青木ロビンさん / manukanさん / 日山 豪(AISO)

耳に残しつつも、“気づかれない”音づくり

津留:今回はAISOの制作、ありがとうございました!ようやく対面でお会いすることができて、嬉しく思います。早速ですが、はじめにzezecoさんがAISOを知ったきっかけをお聞かせいただけますか?

青木ロビンさん(以下、青木さん):SNSでスグル(GuruConnect)やナカコーくんがAISOに参加しているのを見て、「面白そうだな」「無限に鳴るってどういう仕組みなんだろう?」って気になってて。無限っていうのは実際にどこまで無限なのか?終わらないっていうのは、どこまで終わらないのか?今度会ったら聞いてみようって心に留めてたんですよ。その後、スグルとイベントで一緒になった時に飲みに行く機会があって、そこでAISOの話になりました。スグルから「実はロビンさんにも紹介しようと思ってて、 AISOチームに話をしてたんですよ」って言われて、「俺も興味があるから1回話を聞かせて」ってことで、紹介してもらったっていうのが経緯ですね。

津留:はじめはdownyの青木さんとしてご紹介いただきましたね。downyとzezecoでは、それぞれどのような違いで活動をされているのか、簡単にお聞かせいただけますか?

青木さん:downyとzezecoでは制作の仕方が全く違います。downyの場合はバンドなので、人が弾く、叩くっていう前提で作りますけど、zezecoにはそれが全くない。zezecoは良くも悪くも無限っていうか......雰囲気やお互いの持ってるテーマみたいなものはありますが、そこの垣根はあまりないです。downyはそういった垣根を最初から作りきっていて、例えばドラムも「4点しか使ったらダメ」とかそういうルールがあります。

津留:downyは枠組みの中でやられていて、zezecoは比較的自由にやられているんですね。今回のAISOをzezeco名義で希望されたのはそういう理由からだったんだと納得しました。

津留:はじめてWebミーティングした際のお話になりますが、まずはAISOの仕組みをご説明させていただいて、あわせて過去のアーティスト版の音源や制作ツールをお渡ししました。ツールを少しずつ触ってもらうところから始めて、なんとなくAISOを理解していただけたかな?と思います。
その後、実際の制作に移るまでの間に楽曲の方向性などを検討されたと思いますが、どんなことを考えられていたのか教えていただけますか?

青木さん:同時期にBGM制作の依頼が結構きていたので、コード進行やリズムを作るような今までの曲作りじゃない方法を何回か試してみて、AISO的なアプローチで作ったりしていました。それでやっと馴染んできた......というかわかってきたら、最終的に頭の中でAISOではこうやろうっていうのができて。あとはそれをどうやって組み立てていくかですよね。
僕らの仕事ってどっちかっていうと、“耳に残したい仕事”じゃないですか。僕ならリズムを強調した曲作りをするんですけど、それだと逆に印象に残りすぎてしまうんで、“覚えないけど気持ち良い”みたいな音をどこまで突き詰めるかがテーマになった感じですね。強い音がくると「またこの音」ってなっちゃうけど、それがないと曲とは言えないなっていうのも感覚的にあったので。

このふたりでいうとmanukanの方がアンビエント脳を持っていて、そもそも僕はそんなになんですよ。聞くのはできるけど、自分で作る場合には耐えられない。「そろそろキックぐらい入れてぇな」っていうタイプなんで(笑)、その噛み合わせには結構時間がかかった。manukanはわりと無限なアンビエントを作ってくるタイプで、僕は「そろそろ飽きるくない?もたなくない?」みたいな(笑)。

manukanさん:ディティールが好きだから減衰を楽しんだり、同じ音だけど周波数が変わっていく流れも楽しみたいっていうアンビエント脳なんで。そういう小さい変化を楽しみたいし、楽しんでほしいっていうのもあって。でも、どっちも大事ですよね。同時期に制作していたオフィスのAISO(※1)とは方向性が真逆じゃない?zezecoのAISOに関しては、この曲のテーマを覚えてもらう必要もあったから。

(※1):zezecoさんはアーティスト版AISOと同時期に、オフィスへ導入するためのオーダーメイド版AISOも制作されていました。

津留:アーティスト版のAISOは、1つの作品ですからね。

青木さん:シンプルに言うと、聞いた人に「かっこいいことやってるな」って言わせたいし、言わせなきゃいけないんです。逆にオフィス用AISOは、365日人がいる環境音だから「いかに流させるか」「いかに覚えさせないか」みたいなところですね。

manukanさん:でもzezecoのAISOは「このフレーズがこの曲だよ」って、ちょっと覚えさせることも大事で。

青木さん:ちょっとだけ目的が違いますよね。アーティスト版のAISOを持ってる人は「今日はzezecoにしよう」って選べるじゃないですか?オフィスAISOはBGMとして強制的に流れるから選べないし、気を狂わせたくないなって......もし自分なら気が狂うなと思って(笑)。

津留:「聞かせる」と「気づかれない」っていうバランスが、そのままおふたりの関係性に置き換わってるような制作スタイルになっていて、面白いですね。


飲食店経営で感じたBGMの必要性

日山 :zezecoさんは初めからBGMのプレイヤーとしてAISOを使おうと思われていたんですよね。他のアーティストの方はアルバムを“終わらない化”してみたり、スグルさんはビートマシーンにしたりしていて色々なアプローチが考えられると思いますが、そのなかでBGMを選ばれたのはなぜですか?

青木さん :私はそもそもBGM音楽を聞くのが好きで、料理する時にも耳が持っていかれないちょうどいい曲を選んだりしてるんですよね。集中したい時に妙にかっこいい曲を聞いちゃうと、色々考えちゃうじゃないですか?一旦手を止めて、どういう仕組みでベースがどうなってんだ?とか考えちゃう。そうじゃない音はそうじゃない音の楽しみ方がありますし。

zezecoのふたりに共通しているのは、一緒に飲食店をやったことです。manukanは僕が作った店の店長をやってくれていて、その時に初めてBGMが必要なんだって気づいたというか。それまでは、僕の好きなゴリゴリのロック寄りの曲をかけたりしてたけど、雨の日は「こっちにしよう」とか「夕方になってきたから、音楽変えよう」みたいな感じで、店内で流す曲はリラックスさせたいなって思うようになりました。

manukanさん:一緒に選曲したりして、11時のオープンからクローズの夜11時ぐらいまでのプレイリストを作るんだけど......ランダム再生だとお客さんの雰囲気に合わなかったりもして。ランチタイムにはランチタイムっぽい曲が必要だし、ティータイムにはそれっぽい曲が必要だから、結局11時間のプレイリストを毎日ちょっとずつ変えながら、順番も変えたりして......そうやって長尺のプレイリストを何年間も作り続けてたよね。

青木さん:後から「昨日のあの時間の曲は強かったな」って消して、代わりの曲を入れるとかね。

日山:その経験がBGMを考え始めるきっかけになったんですね。

津留:AISOであれば、毎日ちょっとずつ変える必要はないですし。もともとおふたりのなかにBGMの必要性と「プレイリスト方式がこうだったらいいのに」という想いがあって、AISOに可能性を感じていただけたんですね。

青木さん:今でも友達の店がオープンして遊びに行くと、結構音が気になっちゃって......「音小さくない?」「なんか喋りづらいな」って思います。

manukanさん:どこの店に行っても、かかってる音楽が合ってるか合ってないかは気になるよね。

青木さん:自分が居心地いい時って、店の喧騒も含めて“何かがちょうどいい状態”で。お客さんがシーンってしてたら、喋りにくいじゃないですか?喋ってもいい雰囲気、ワイワイしてて席を立ってもいいような雰囲気作りも音で出来ることだと思っているんで。

日山:それはつまりサウンドデザインの話ですね。そして、聞いた時に「zezecoかっこいいね」って思ってもらうのはアート的な側面の話ですよね。今回のAISOは、そのデザインとアートが1つの作品に入るような形で完成することは出来ましたか?

青木さん:そうですね。4倍ぐらいの情報量がボツっていて、選んで選んで「これはいらないんじゃない?」っていうのも含めてですけどね。

津留:manukanさんは、苦労されましたよね(笑)。

manukanさん:AISOのシステムにおいて、ゆずれないルールがひとつあるじゃないですか。そのルールの1番いいところに気付くのに試行錯誤しました。この作り方だと思うような形が作れないなってことがあって、1番いい形にできる仕組みに気づくのに半年〜1年ぐらいかかりましたよね。だから、結局全作り直しを2回ぐらいしました......。

津留:そこらへんは、もう少しお伝えできると良かったんですが......。

manukanさん:でも、あれは作る人によってスタイルが違うんで。

青木さん:作り方が違うからね。

日山:その結果、僕とmanukanさんとでコミュニケーションが取れたのはよかったなと思っています(笑)。manukanさんがAISOのコメントで「BGMについて、色々と考えるきっかけになった」と書いてくれたのもすごく嬉しかったです。

manukanさん:日山さんとのコミュニケーションがなかったら無理でしたね(笑)。


とことん追求したのは、自然な音の繋がり

津留:zezecoさんは、おふたりでどういった方法で音作りをされましたか?

青木さん:お互いがアイデアを出しながら、ですね。作り方の関係性でいうと、ふたりいることが良くも悪くもっていうのがあって。どちらかひとりがコツコツ作れば完結したかもしれないけど、いかんせんAISOの実機は僕が持っていたんですよね。僕は色んな人のAISOを聞いて、それぞれがどういうやり方をしてるのかを研究してました。Macも1台しかなかったから(※2)、アセンブラを使って音を組み立てるのはmanukanでした。

(※2):AISOの制作ツールは現在MacOSでしか使用できないため、AISO制作にはMacが必要です。

青木さん:僕はどちらかというと監督みたいな立場で「こういうのをやっていきたい」っていうのを決めて、manukanからもアイデアがくるので、色々とやりとりをしながら進めました。そうやって組み立てた音を聞くと、manukanは色んなことをしてるつもりで作ってくれてるんだと思うんですけど、客観的にはループが早く感じたりして。それを指摘すると「大変なんですよ〜!」ってなる.......その繰り返しでしたね(笑)。

青木さん:例えば、AというドラムにBのシンセを入れてループを組むとしたら、2回目にはCが鳴っててほしいじゃないですか。それか新しくDが流れることで、ループしないように聞こえるわけですけど、manukanはすぐB´みたいなのを作っちゃうんですよ。本人は変わってるってイメージなんでしょうし、僕も変わってることはわかるんだけど......客観的に聞いたらこれは一緒やでってなって。Cを作りなさいよってなるんですよ。

manukan:違うんですよ......(笑)。

青木さん:じゃあ、Dを作りなさいよみたいな(笑)。

津留:表現の機微のところですね。

manukanさん:お互いの理想が被ってるところはあるんだけど、やっぱりふたりの人間なんで違うところもあって。結局は擦り合わせたってわけじゃないけど......でもAISOが中心にあったから、AISOに向けていったっていう感じ。

津留:今回のおふたりは役割分担がずれるところもあったから、よかったのでしょうか。

青木さん:それは良くも悪くもの良い部分ですね。悪い部分はさっき言ったような、客観的に見た人と作ってる人の衝突みたいなところです。

監督は3時間かけて書き出したものを3時間聞く役なので、それはそれで大変で。単純に聞いて良し悪しの話だけじゃなくて、「何分に音が当たってるよ」「ここがちょっとおかしいよ」とかを見つけて送ってあげなきゃいけない。
あと、僕は音量が気になったりもして......ほんとはここに欲しかったっていう音が急に静かなところにドーンってきたりしてると、そういうのもどうにか落ち着けないといけないし。BGMの役割がなくなっちゃわないように、それを伝える役でもあって。
だから、毎日3〜4時間かけて書き出したのを同じ時間をかけてしっかり聞くんです。その代わりにmanukanはそんなに時間をかけて聞かなくていいんですよ。その3時間のチェックは僕がやるから、次のことを考えてほしいなと。

日山:AISOは普通の制作と比べて、音楽チェックが大変ですよね(笑)。

青木さん:自分で全部トラックを作ってたとして、「実はここでちょっと強く弾いてんだよ!」みたいな話だと思うんですけど、客観的に聞いたらわからない場合はちゃんと伝えないとね。本人が気づいてないところで思っているよりも同じ音のカケラが印象づく設定になっていたり......っていうのもあって。それはオフィスのAISOを作ってる時にも、口酸っぱく言っていたことです。特にオフィスのBGMは大きい音量では流さないから、BがB'だろうとB''だろうと一緒に聞こえちゃうし、明らかに違うCやDをもってこないとループ感が避けられない。
オフィスでは1日最低8時間は流れるはずなんで、8時間分も聞いてチェックするんですよ。「あそこはやっぱり当たってるよ」「あれはオフィスに合わない、暗いな」とか。「あのドローンは、お客さんの対応中に来たらよくないから、外すか変えよう」みたいな作業もしましたね。

津留:打ち合わせやランチタイムといったオフィスでの具体的なシーンも想像しながら作られたんですね。オフィスのBGMってお題としては難しいですよね、強制的に長い時間聞かれてしまうので。

日山:僕自身もオフィス用のAISOを作ってきましたし、店舗や施設用のAISOを作られた方もいますが、アーティスト毎にアプローチがみんな違うんですよね。それがまた面白いなとも思います。


1stアルバム『燦然』に対となる作品として

津留:今回のAISOの『朧光(obscure light)』は、前作の『燦然』と対になるタイトルになるんですか?

青木さん:そうですね。まず、『燦然』は何十曲も作ったうちの10曲で、1番具体的なものを集めたアルバムでした。キラキラ輝いてるようなイメージで、僕たちからすると1番曲らしいもの、完全に耳につくものだけをぐっと集めています。だから、僕のなかではすごくポップなアルバムです。どこを聞いても「何あれ?何やってんの?」っていう感じなんで『燦然』ってタイトルをつけたんですけど、『朧光』に関しては「なるべく耳に残らない、でもかっこいい」っていう対照的な曲作りになりました。『燦然』で使ってる音ネタも入れてみたり、同じ楽曲でも別のアプローチがあるよっていう作りになったんで、後付けではあるけど『朧光』っていうタイトルにしました。

津留:日山さんは『朧光』を聞かれて、どう感じました?

日山:zezecoさんの音は1音1音が本当に作り込まれてるから、めっちゃ耳が持っていかれるんだろうと覚悟して再生しました。でも、想像とは真逆にとてもリラックスできて、だんだん力が抜けていくような不思議な感覚でした。1つ1つの音は細やかで個性的なのに、すごくリラックスできるというか。

青木さん:狙い通りだよね。

津留:音はそれぞれ質感が違うものが沢山入ってますよね。デジタルノイズっぽい音もあれば、人が吹いてる笛みたいな音もあって、多国籍な印象を受けました。だけど、1つ1つの音が霞のように重なっていくと濃淡があるというか......水彩画のような綺麗な景色を見ている感じもあります。ずっと聞いていられると思う一方で、途中に「ん?なんだ今のは?」って気になる時もあって、ジャズっぽい印象もありましたね。

日山:1番驚いたのは、ビートがうにゃうにゃすごく変わった時。「すごい!何これ?」と思って、AISO史上初めての感覚でした。

津留:1曲の中でも、10バンク(※3)くらいあるんですかね?その1つ1つを「この方向性でやろうよ」と、すり合わせていったんですか?

(※3)バンク:AISO楽曲の構成単位で、シームレスに展開するテーマ群のこと。

青木さん:そうですね。作りかけてた曲とかもあるんで「あれを持ってきてみない?」とか「あれとこれを混ぜてみない?」っていう感じで。

津留:あと、バンクが変わる時はすごく柔らかく変化しますよね。あれ、すごいです。zezecoさんのAISOリリースにあたって、ナカコーさんとスグルさんにコメントをいただきましたが、コメントの冒頭が「ヤバい」「すごい」とかで、心の声が漏れているようでした(笑)。

青木さん:良かった、作った甲斐がありましたね。

manukanさん:おかげさまで作ってるうちに、本当に成長したよね。やっぱり仕様上の縛りがあるから、期待できるっていうか「これしかやっちゃダメ」ってなって、そこに関しての能力がどんどん上がって、新しい発見をしたりして。引き出しが増えたというか、こっち方面の技術と脳が増えた感じがしますね。

日山:zezecoさんのAISOは質感が独特なんだよぁ。

津留:そうですよね。「zezecoさんのAISOができたな」っていう風に思います。

青木さん:まさにそれがテーマでしたね。誰のAISOかわからなくちゃ面白くないし。

日山:僕のなかで、AISOは大体やりきった感っていうのを勝手に持っていたんですが、今回反省させられました。まだやれるよって言ってもらえた感じがします。

津留:スグルさんから最初にzezeco、downyの青木ロビンさんにと聞いた時、スグルさんAISOのもっとヤバいやつがくるかなって思ったんですけど、その予想は裏切られましたね。個人的にzezecoさんのAISOは、ファンの方が聞いても「zezecoさんってこうだよね」と満足されるようなBGMを体現できていて、すごくかっこいいなと感じています。


広がるAISOの活用方法

日山:最初の話に戻りますが、以前からAISOが気になってたとおっしゃっていましたよね。どんなところが気になっていたんですか?

青木さん:自動構築していくっていう仕組みがどういうことなのかなっていうのと、実際に聞いたらどうなるのかな、自分の作りたいものでやってみたらどうなるんだろう......っていうのがシンプルに気になっていて、面白そうだなって感じでした。

あと、ナカコーくんはライブで使ったりしてたから、どうやって使ってるんだろうなって。スグルと話した時に聞いてみたら「多分出てきた音に合わせて、弾いたりしてるんだと思います。本当にランダムだから、出したいなって音が欲しい時には出ないんで(笑)。」って言ってて、そういうことなんだって思いました。

津留:そういう楽しみ方として取り入れてるんですよね。

青木さん:もしかしたら、AISOの中にあるものからキーだけはあらかじめ決めてるのかもしれないですね。

日山:今後、楽器としてAISOを使ってみようと思われたりはしますか?

青木さん:その場合にはまた仕組みを考えなきゃっていうのはあるけど、面白そうだとは思います。

manukan:アセンブラだったら、ライブで使えそうな気がしますね。バンクも設定が選べるし。

青木さん:コラボで誰かとやってみるのも面白そう。

津留:そういうのをやりたいですね。AISOは普段のビジネス的な音楽の関わりじゃなくて、僕らがいいと思うことやアーティストの方に面白いと思ってもらえるだろうってことを“ただやる”っていうプロジェクトなんです。なので、AISOがアーティストのみなさんをなんとなくくっつけるような接着剤にもなればいいなって思います。

AISOはAIによる自動作曲ではないので.....僕たちもアーティストの方々の作る能力がないと何もできないんです。でも、今のAIの急成長を見ていると逆にAISOならではの個性が、くっきりしてきた感じがあります。

manukan:AISOの仕組みを知るまでは、どうなっているかわからなかったから結構AI的なものかと思ってたけど......実際は超手作業で(笑)。外から見ていると、ラズパイにすごいテクノロジーや脳みそが入ってて、音を2〜3個入れたら自動で永久に流れるようにしてくれるのかなっていうイメージはありました。

日山:めっちゃ人の力で作ってますよね(笑)。でも、いずれはそういうのもやりたいです。

津留:ベースの音は作るとしても、それにインスパイアされるようなパターンをAIが生成してくれるお助けツール、プラグインみたいなものがあったらいいかもっていう話をしてますね。

青木さん:実際に取り入れてるって聞きましたけど、天気によって変わるとかでもいい。ちょっとリバーブになったりハイ・ローパスになったり、そういう風に自動で変わるとつけっぱなしでも勝手にやってくれるんだろうし。

manukanさん:ラズパイに時計機能はありますよね。例えば夜しか流れないとか、時間帯によって流れるバンクの指定はできるんですか?

日山:AIではなく手作業ですが、まさにオーダーメイドラインにそういうAISOがあります。

青木さん:それがあったら絶対面白いですね。
あと、AISOでやれば面白そうだなって思うのは、音が良いバーにお試しでAISOを貸し出して、日替わりBGMとして使ってもらうとか。1ヶ月くらいの間、曜日ごとに違うアーティストの音をかけてもらって、AISOを体験してもらうとかね。自分も飲食店をやっていたからこそ、そういうのは全然マイナスじゃないと思うんですよね。買い取るわけでもないから、面白そうだし1回試してみようってなると思う。お店で説明してもらったりパンフレットを置いておけば、そういう場からもAISOの面白さが伝わったりするんじゃないかな。ファンの人達も行ってみようってなるかもしれないし、そういうのも面白いと思う。

manukanさん:単純にリースをやってみてもよさそう。

津留:今はAISOを導入していただいているお店や施設を記事にまとめてるんですけど、導入するお店が増えていくとお店自体がショールームになるんですよね。そこからもう少し踏み込んで、AISOが毎日聞けるような飲食店やカフェがあれば、僕たちからすると半分はAISOのお店みたいな感覚ですし、飲食店側も割安に良いBGMが使えるなどができたら、良い関係性が築けそうです。
zezecoさんも今後、お店などのアンビエントやBGMのお仕事で「AISOでいけるな!」と思ってもらえる場合には、是非声をかけていただけると嬉しいです!


小説を読むように音を楽しんでほしい

日山 :AISOをはじめた当初からずっと変わらず大事にしていることが2つあります。1つは“BGMや空間に対して、音楽でもっとできることがあるな”ってこと。この世には、プレイリストのような既存曲の連続再生しかないっていうのは、なかなかだなと思っていて。

manukanさん:プレイリスト以外の選択肢は、有線やDJしかないですよね。

日山:もう1つは“ミュージシャン自体にまだできることがあるはず”ということ。みなさんのように考え方が柔らかくて、新しいことを発見できる力がある方も沢山いるから、面白いことが絶対にできるはず。だけど、そういったツールもないし、それを0から構築するっていうのも大変だし......そういうところでお手伝いできればと活動を続けてきました。今回は早くもzezecoさんにこの2つのことをオフィス用のAISOでやっていただけましたね。

津留:オフィスAISOはもうすぐアーティストラインの納品かもしれないぐらいの時期にロビンさんから連絡が来て、本当にびっくりしました。しかも、納期はオフィスの方が早かった(笑)。

青木さん:当初は1月にプレオープンと聞いてたので急いで作ったんですけど、それが結局は2月下旬になって......本当はもうちょっと制作の時間はもらえた感じでしたね(笑)。

津留:オフィスAISOの話は、また別の機会でお話いただければと思います。その際にまた詳しく教えてください!(後日こちらの記事も配信予定です!)
では最後に、アーティスト版を購入される方に向けてメッセージをお願いできますか?

青木さん:集中したい時よりも、リラックスしたい時に向いているかも。テレビもつけないで、1〜2時間流しっぱなしでかける。そういう風に聞いてもらえたら、どっぷり瞑想できる感じに作っています。

manukanさん:小説を読む時のように「今日何読もうかな?」って感じで、「zezecoを聞こう」っていう風に集中して聞いてもらいたい気持ちもあります。聞き流すこともできるけど、ギミックやストーリー、文法もかなり面白く作ってるんで、聞き込んでもらっても面白いかなと。

津留:2度、面白いかもしれませんね。平日は仕事をしながら聞いて、休日にお風呂に入りながら聞いたら「こんな風に作り込まれてたんだ」っていう発見もありそうです。ほんとにとても繊細なAISOですよね。

青木さん:頑張った甲斐がありました。展開の継ぎ目もかなり頑張ったもんね。

日山:システムを作った人間としても、どうやってこの音楽が出来たのかわからないぐらいです。本当にありがとうございました!


【こぼれ話】期間限定で発売中!3.5時間の録音Ver.

半年間の期間限定で、『zezeco - 朧光(obscure light)』約3.5時間録音バージョンを販売中です。
AISOから出力された数十時間の中から高音質で録音した音源を厳選し、ミックス/マスタリング処理を施し構築した3.5時間。

デバイス実機によるリアルタイム演奏ではないため半永久的な変化こそ楽しめないものの、精査し抽出した10曲の多種多様な変化は生活の中の音、旅をする様なBGMとして存分にお楽しみいただけます。

最後にこの3.5時間にまつわる、こぼれ話をお届けします!

津留:沖縄への移動中に3.5時間全部聞いてきたんですけど、めちゃくちゃよかったです。あの3.5時間はすごくいいハイライトですね。

manukanさん:よかった!あの音源は3.5時間をしっかり聞かせるつもりで、かなり厳選して作ったんで。

青木さん:自分も何度かテストで聞いたんですけど、たまたま1回だけずっと不協和音な時があったよね。5分ぐらいの間、本当にずっと不協和音で気持ち悪くて......「大丈夫、これ!?」みたいになった(笑)。

manukanさん:バンクずれてんじゃないかなってドキドキした。その後に何回も確認したから今は大丈夫だけど、「そんなのやってない!」って音の時はあったよね。

日山:ちなみにzezecoさんのAISOで、レアな音が聞ける場合もあるんですか?

manukanさん:一応そのつもりでレアなバンクを1個作ったんだけど、それ自体はあまりレアじゃなかった(笑)。何時間に1回のルートでしかでないようにしたけど、バンク数がバンク数なんで思ったより......レアな音自体はあるかも。

青木さん:たまにしか出ないギターとかね。

manukanさん:今度作る時はやります。次も作りたいな。ほんと終盤になってやっと理解度が高まったというか、極めたって言い方は良くないですけど。

青木さん:AISOはいいのできたし、ほんとに終始楽しかったし、勉強になった。

manukanさん:うん、それがでかい。

青木さん:本当に偶然性からできた曲みたいなのもあって「それ、面白いからこっちに持ってこようぜ」って。

manukanさん:普通に曲を作ってたらできなかった、普通のシーケンサーを使ってたらこの曲はできないから。AISOがあったから、この作品自体ができたみたいな。

津留:そう言っていただけると嬉しいです。AISOがなければ出来てなかったクリエイティブってことですもんね。

●録音バージョンが気になる方はこちらから、ご購入いただけます!


●ティザーMVも公開中です。こちらもぜひご覧ください。


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Text,Edit: Mihoko Saka

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