見出し画像

大企業からベンチャー企業への転職(その2) ー日本の大企業とアメリカ系企業の違いー

前回の記事から話はちょっとそれますが、私はアメリカ系企業でも働いていたことがあるので日本の大企業とアメリカ系企業の違いについても考えてみたいと思います。

人数

日本の大企業は言うまでもなく日本に本社があり、日本に多数の従業員がいます。数千から数万単位の人がいるケースもあるでしょう。本当に大所帯です。
これに比べて外資系企業は、本社は規模が大きくても日本支店あるいは日本支社においては数十人のところから多くても千数百人ぐらいのところが多いのではないでしょうか。
やはり人数が違えば物事の進む速さも異なります。人数が増えれば増えるほど、スピード感はなくなるので、やはり外資系企業の方が物事を進めるのは早いと思います。
だだし、外資系の場合、外国の本社にお伺いを立てなければならないことも多く、日本で決めたことがそのまま通らないという歯痒い思いをすることもあると思います。

会議

私が勤めていた外資系企業はアメリカ系の会社ですので、アメリカの文化がありました。簡単に言えばローコンテクスト文化でトップダウンです。会議では発言しなければ参加する意味はありませんし、基本的に会議はディスカッションをする場です。そして、ディスカッションをした上で、次のやるべきタスクと役割分担を決めるのです。これはアメリカ人の面白いところだなぁと思ったのですが、議論の場で自分の出した意見が採用をされなくても、日本人ほど気にしていないところです。しっかりと自分の意見は言ったけれど、別の方向に決まったとなれば、パッと切り替えてその方向に従って動くのです。
これに対し日本企業では定例の報告会議というのが、毎週のようにたくさんあります。報告するだけで議論はほとんどしません。やったことや決まったことを報告するだけですから、聞いているだけの人もたくさんいます。会議と言うのは、どちらかと言うと過去のことを皆に共有し周知する場なのです。では、日本企業の場合、実質的な議論はどこでしているのかと言うと、事前の根回しです。私が初めて日本企業に就職した時、この会議は一体何のためにやっているんだろう不思議に思っていたのですが、会議の場では意見が分裂したりしない方が日本企業においては美しいとうい文化があり、事前に関係者としっかりと根回しをしていないと逆に問題になるという傾向があるのです。会議の場で自分の意見が否定されると面目を無くしたと思ってしまう文化なのですね。今思えば、このようなことを知らなかった私は、空気読まずに、自分の思いついた意見をかなり自由に会議で発言してしまい、皆さんを混乱させて申し訳なかったです。

上司の役割

アメリカ系企業における上司の役割には、物事を判断して方向性を示すということがあります。
ところが、日本企業では上司というのはほとんど何も方向性を示してくれないのです。そのため、日本企業に転職したばかりの頃、私は一体この会社はどういう方向を目指しているのか、そして私には何を期待されているのかということがわからずに、かなり不安になりました。特に何か困ったことがあるわけでもなかったのですが、部の目指している方向や自分の果たすべき役割について上司に相談しても具体的な話はなく、「任せるのでうまくやれ」と言うような指示しかしてくれないのです。しかし、しばらく働いてみてわかったことは、日本の会社における上司と言うのは自分の考えや方向性を示すという事はあまりしないものなんだということです。部下を信頼して仕事を任せている(「丸投げしている」ともいいます。)のです。どちらかと言うとボトムアップで自分の部下が抱えている問題を吸い上げ、部内や部門間で調整して解決するということを一生懸命やっているのです。実は私はこれに気づくまで相当時間がかかりました。上司は何も判断してくれないが、いったい何をやっているのだろう?と、ずっと不思議に思っていたのです。部下がうまく仕事をやっていれば、上司は特に何もしなくてよいのです。しかし問題を抱えたチームメンバーが入るとマネージャーは大変です。ですから、日本企業においては優秀なマネージャーの下にはあまりできない部下が集まってくる(押しつけられる)ような形になっています。

報・連・相

日本企業では社会人1年目に必ずと言っていいと思いますが、「報・連・相(ホウレンソウ)」について学ぶと思います。しかし、私が働いていたアメリカ系企業の日本法人では、新人に対して
「報・連・相なんてやっていてはいけません!それでは何の価値も出していないからです。報告して連絡して相談するだけであれば誰だってできます。自分の頭で考えて、決めて、実行できる人になって下さい。」
という教育をしていました。こうやって育ってきた私は、日本企業に転職した際、自分で判断して行動したところ、報告がなかったと怒られたことが何度かありました。結果的にそんなに悪い事はしていないと今でも思っているのですが、報告がそれほど大事だと言う認識がなかった私は当時大変戸惑ってしまいました。たまたま、問題が発生した時に上司が休暇で不在だったので、自分で判断して対処し、後読んでもらおうとメールで報告したところ、そのような場合には自分で判断せずにその場にいたさらに上の人に報告、相談すべきであったというのです。アメリカ系の企業に勤めていたときには、よくuse your own judgmentと言われていたので、何でもかんでも上司に相談すると言う感覚に私は今でも違和感を感じています。相談するのは自分で判断がつかない時で良いのではないかと思っているのです。しかし、これは社員の構造を適切にチェックする内部統制がきちんと効いているアメリカ系企業であれば許されるのかもしれませんが、内部統制が形ばかりである日本企業では都度都度上席が責任を持って判断をしなければいけないという組織体系になっていることも影響しているのかもしれません。
報告して、連絡して、相談するだけで良いのであれば一見とても簡単です。しかし、日本企業で本当に大事なのは、報・連・相をしつつも、うまく自分の意見を根回しし、自分の活躍の場を作れるように立ち回ることなのです。これは非常に高度な空気を読む力と観察力、洞察力、交渉力が要求されるスキルです。これがうまくできる人はやはり賢いなぁと日本企業では思われるのです。

そんなわけで、日本企業でもそこそこ周りに合わせて立ち振る舞っていた私ですが、だんだんちょっと私には合ってないかな、と思うようになったのが転職をしようと思ったきっかけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?