マガジンのカバー画像

story

28
自分が創った作品。質より楽しむ事がモットー。ショートショート・短編小説
運営しているクリエイター

記事一覧

お返し断捨離 #毎週ショートショートnote

お返し断捨離 #毎週ショートショートnote

「まあーありがとうございますー」

玄関からテンションの高い声が聞こえてきた。

「何を返そう」

りんごを持って戻ってきた母親はちっとも嬉しそうじゃない。

「切り干し大根でもあげれば?」

結衣が答えると母親は「ダメよそんなの」と言って「これ、いくら位だと思う?」と聞いてきた。

いつもこうだ。大袈裟に喜んで見せるが、貰った物はそっちのけで何を返そうかばかりに頭を悩ませている。

礼儀のつもり

もっとみる
【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!2/4

【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!2/4

では、こちらは毎週ショートショートのゆる募をしている企画の記事でございます。はじめましての方は是非こちらからお読みいただけると幸いです。

 一行目で掴む、これはどんな小説でも大事ではないかと思っております。皆様いかがだったでしょうか?

 というわけで【ショートショートnote】というカードゲームを使ってお題を決定し、有志でショートショートを書いている企画でございます。たくさんのご投稿ありがとう

もっとみる
アメリカ製保健室 【毎週ショートショートnote】

アメリカ製保健室 【毎週ショートショートnote】

鎖国をしていた島国にペロンの赤船がやってきて3年。

初めの頃こそ敵対していたが、今では敵国アメリカの軍人たちも浜のキャンプで釣りをしたりとのんびりムードが漂っていた。

いい奴らかもしれない。そう噂が立ち始めた頃一枚のビラが配られた。

様子を見に行った者達が、驚きながら帰ってきた。体を少し調べただけで、悪いところを言い当てられ、薬をもらったというのだ。

保健室には行列ができ、自分はここが悪か

もっとみる
布団から 【シロクマ文芸部】

布団から 【シロクマ文芸部】

布団からポン!と音をたて、何かが飛び出した様な気がした。

「ヒャッ」その音に思わず声を出し飛び起きたが特に変わった所はない。寝ぼけていたのだろうかともう一度布団に寝っ転がった。

「え?」

熱が下がったばかりで目が霞んでいるのかと、ゴシゴシこすってみるが確かにそれはある。天井に白いものが浮いているのだ。それは雲や綿菓子の様で、ただふわふわと浮いている。

「なんだ?」

訝りながらも、ただもこ

もっとみる
ツノがある東館【毎週ショートショートnote】

ツノがある東館【毎週ショートショートnote】

全国の小学校の東館西館化が終了した。

入学時の検査でどちらに属するか決められる。

因みにどの学校でもほぼ半々ぐらいになっている。性別は考慮しないのでその年によって多少のばらつきはあるが、学年で区切る事もほとんどないので問題にはなっていない。

検査は感覚器官の感度を測るもので、五感とそれ以外、いわゆる第六感も対象になる。その中で何か一つでも特に敏感なものがあれば東館で学ぶことになる。

鋭いア

もっとみる
トロンボーンの口調 【毎週ショートショートnote】

トロンボーンの口調 【毎週ショートショートnote】

夫に文句を言っている時、間延びしたような返事をされカチンときた。

「なにその返事!」

「え?」

「今間延びしたような口調で返事したでしょ!」さらに頭にきた。

「え?してないよ」

「したじゃない!ハーーンとかホーーンとかトロンボーンみたいなふざけた口調で!」

「トローンボーンの口調?あ」

「ほらしたでしょ!」

「それ、おなら」

「おなら!?」

「今おならしたら怒られると思ってケツ

もっとみる
台にアニバーサリー 【毎週ショートショートnote】

台にアニバーサリー 【毎週ショートショートnote】

目覚めると見慣れない場所にいた。

薄暗い廊下を、出口に向けて歩かされた。

外に出ると太陽の眩しさで目をつぶった。

目を開けると目の前には断頭台があった。

「なっなんだよこれ!」

戻ろうとするが無理やり押さえつけられ、台にうつ伏せにさせられた。

「なんだよ!やめろ!」

体を固定され、制服の男が手を下ろし合図した。

「やめろーー!」

シャッ!ギロチンの刃が落ちる音がして意識が飛んだ。

もっとみる
強すぎる数え歌 【毎週ショートショートnote】

強すぎる数え歌 【毎週ショートショートnote】

アパートってこんなに隣の声が聞こえるもんなんだろうか。

一番奥の部屋に住む女性は多分年上。会うとグイグイ話しかけてくるからちょっと苦手だ。美人っちゃ美人なんだけど。

彼女は仕事から帰ると歌いながら家事をする。変な歌詞ばかりだから多分オリジナルソング。この間うっかり吹き出して以来、あえて窓を開けて大声で歌ってる様な気がしてならない。

初めは驚いたが、最近は(今日はご機嫌だな)などと心で話しかけ

もっとみる
親切な暗殺 【毎週ショートショートnote】

親切な暗殺 【毎週ショートショートnote】

「アナタを暗殺する依頼を受けました。

しかし、人には親切にしなさいが私の母の口癖

最後に望みをひとつ叶えて差し上げましょう」

クソッ汚い仕事ばかりして来たツケか…

今日やっと、死ぬ前にやりたい100の事を書き終えたのにぃー

ハッ!そうだ!

「私の望みは『死ぬ前に叶えたい100の事』を叶える事ですっ!」

「エッ?それってさあ、100個じゃないの?ダメだよ1個だよ」

「ちっがうよ!『死

もっとみる
戦国時代の自動操縦 【毎週ショートショートnote】

戦国時代の自動操縦 【毎週ショートショートnote】

「新しいお告げじゃ!」

ある忍者の里では、お告げによって新しい武器の開発が行われていた。

「今度はどんな武器じゃ」

皆が集まる中、奥に座るババ様が口を開いた。

「丸い形をしておる。設計図が見えてきたぞ」

書き留めたものを見て、皆は頭を捻った。

「これはなんじゃ」
「焙烙玉じゃ!新しい焙烙玉じゃ!」
「火薬はいつ入れるのだ?いったいどう使うのじゃ?」
「ババ様のお告げを信じぬのか!全力で

もっとみる
ごはん杖 【毎週ショートショートnote】

ごはん杖 【毎週ショートショートnote】

「魔法の杖がほしいのー!ハーマイオニーとおんなじ杖が欲しい!」

「ハーマイオニー?」

「そう!ハーマイオニーになるの!」

昨日の夜、ハリポッターの本を読んであげたら娘はすっかり魔法使いの虜になってしまった。本にのめり込んでくれたのは嬉しいんだけど

「今日幼稚園行かない!杖を探しに行く!」

「えーもうバス来ちゃうよー」

探しに行くって言ったって、ちょうどいい枝が落ちてるわけでもないし、困

もっとみる
誕生日がキライ #シロクマ文芸部

誕生日がキライ #シロクマ文芸部

誕生日、だれにとってもハッピーな1日、のはず。

でも私はこの日が嫌い。

0時過ぎると、競う様に送られてくるおめでとうメッセージ

バカみたい、本当におめでとうなんて思ってるの?

私も最初の頃は送っていたよ、面白かったし

だけど段々、誰が一番遅かったとか、誰はくれなかったとか、みんな文句言われない様に、今日は誰かの誕生日じゃないかって必死になって。

くだらない、それが目的じゃないでしょ

もっとみる
忍者ラブレター 【毎週ショートショートnote】

忍者ラブレター 【毎週ショートショートnote】

午後の授業は眠気との戦いだ。いくら隣に片想い中の石田君がいても緊張感はゼロになる。

ん?このハート型に折った手紙は優香だな。大した事は書いてないけど、眠気覚ましにはなる。よし返事は、昨日覚えた忍者折りの初お披露目といこう。

最後に頭巾で口元を隠すのがポイント。ちょっと止めにくいんだけどね。

ここを開けたら、んふふ「石田君だーいすきchu❤️」よしオッケー

「次、川辺さん読んで」

ゲッ!!

もっとみる
りんご箱の妖精 #シロクマ文芸部

りんご箱の妖精 #シロクマ文芸部

「りんご箱の妖精がもうすぐきてくれるわ」
「ハイハイ、そうですねー」
部屋の中から声が聞こえてくる。

「こんにちは」
ドアを半分開けて挨拶すると、看護師がテキパキと仕事をしていた。
「もう終わりますから待っててくださいねー」
そう言われしばらく部屋の外で待っていると、看護師が出てきて声をかけてくれた。
「お待たせしました。春子さんのお孫さん?」
はいと答えるとニコッと笑って話し始めた。
「おばあ

もっとみる