布団から 【シロクマ文芸部】
布団からポン!と音をたて、何かが飛び出した様な気がした。
「ヒャッ」その音に思わず声を出し飛び起きたが特に変わった所はない。寝ぼけていたのだろうかともう一度布団に寝っ転がった。
「え?」
熱が下がったばかりで目が霞んでいるのかと、ゴシゴシこすってみるが確かにそれはある。天井に白いものが浮いているのだ。それは雲や綿菓子の様で、ただふわふわと浮いている。
「なんだ?」
訝りながらも、ただもこもこと浮いているそれをぼーっと眺めていたが、我に返り時計をチラッとみた。
「あーーやばい間に合わない」後15分で始業の時間だ。
いつもなら少しでも早く会社に行こうと飛び出すのだが、流石に三日も会社を休んだ後だと体が思うように動かない。
どうしようと思っていると、ピコンとラインの通知音がなった。
『今日は体調いかがですか?もしまだ動けない様でしたら、課長に言っておきますよ』
同じ課の後輩、櫻井ミナからだった。そういえば会社の飲み会の幹事をした時にみんなの連絡先を聞いていたっけ。
どうしようと一瞬悩んだが「動けない様でしたら」と書いてあるのがありがたい。熱は下がっているけれど動けないのは嘘ではない。
『申し訳ありません。休むと伝えてもらえますか』そう返信した。
『わかりました。お大事にしてくださいね』
ミナからの返信をチラッと確認し、ベッドに横になると罪悪感が襲ってきた。
「みんなに迷惑かけただろうなぁ」布団に沈み込んでいく様な気分になっていると
「ポンポンッ」と今度はもこもこが二つ出てきた。
「なんだ?」しかしその不思議なものに触る勇気もなく眺めているうちに、いつの間にか眠ってしまった。
*
次の日、久しぶりの世間のペースに追いつけず、のったりした足どりで会社に着くと、ミナが笑顔で近寄ってきた。昨日は連絡をくれて助かった、おかげでゆっくり休めたと話していると、同期の大野が声をかけてきた。
「大丈夫かよ、昨日ミナちゃんから聞いて心配したぞ」
そう言い「ほれ」とコンビニの袋を差し出すとお礼を言う間もなく足ばやに行ってしまった。
「昨日ちょうど大野さんに会って。心配してましたよ」
ありがとうとミナに礼を言い、袋の中を覗いた。
「ポカリはわかるけど、このグミ何個入ってんだよ」クスッと笑うと「ひとついる?」と忍者めしという名前のグミをミナに差し出した。
「お、もしろいグミですね」
「これ、あいつ好きなんだよ」
課長もスケジュール調整を一緒にしてくれたり、食堂のおばちゃんもこっちの方が消化にいいなどと、あれこれ世話を焼いてくれた。
久しぶりの会社にぐったりとして家に帰ると、あのもこもこが倍ぐらいに増えていた。
一体これはなんだろう
ベットに寝転がると、もこもこ達はおしくらまんじゅうでもしているように、ぽにょんぽにょんとぶつかり合いながら天井を漂っている。
見ていたら何だか可笑しくなってきて「フッ」と笑いがこぼれ体の力が抜けた。
「そういえば大野、忍者めしどんだけ好きなんだよ。サンキュー」グミを見ながら独り言を言った時、もこもこがポンッとはじけた。
「え?」一瞬固まったが、もしやと思い恐る恐る声に出して言ってみた。
「ミナちゃん、心配してくれてありがとう」
ポンポンッともこもこが何個か弾けた。
「課長も食堂のおばちゃんもありがとう、仕事変わってくれたみんなもありがとう」
そう言うと、ポポポポポン!と、もこもこが弾けてキラキラと降り注いできた。
*
仕事の責任が重くなってきた頃から、あまり眠れない日が続いていた。そのせいで体力も落ちていたのかもしれない。
熱で体力を消耗したからだと思っていたが、そういえばあのもこもこが飛び出してから、ぐっすり眠れている様な気もする。
今日もぐっすり眠れるかな。
久しぶりに、小牧幸助さんのシロクマ文芸部
お題は「布団から」から始まる
ショートショートで参加です。
書きながら、最初に思っていたものからどんどん変わっていき迷走💦
結局何?って感じになってしまった。設定未完成すぎでした💦
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