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障碍から無碍へ(電動車椅子でGO!ほか)

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障碍と無碍について考えてきたこと。 電動車椅子ユーザーとなって、見えてきたこと。
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2018年9月の記事一覧

予想外の動き?

予想外の動き?

 車椅子の動きについてこちら側からの事情を説明させてください。
 住宅街などで車とすれ違うとき、 なぜもっと端に寄らないのか。実は道の両脇は水はけのために傾斜していて、寄りすぎるとハンドルをとられて滑り、危険なのです。
 歩道も車を乗り上げる事情などでしばしば傾斜しています。油断すると、車道に滑り落ちることがあります。低い方から高い方に操作レバー の動力圧をかけて、わざと斜めに動くのはそのためです

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車椅子ひとり旅 韓国編

車椅子ひとり旅 韓国編

 電動車椅子単独で海外旅行。これこそ僕がこの夏にやってみたいチャレンジだった。行き先に韓国の釜山を選んだ。理由は釜山地下鉄は完全バリアフリーと聞いたからだ。
 大阪港を船で十五時に出航。ディナーを食べてショーを見て眠る。 翌朝十時には釜山に着いた。フェリーターミナルから電動車椅子で十分で釜山駅。近くの安いモーテルにチェックインした。ここから地下鉄でどこへでも単独で行くことができた。八日間滞在した。

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温泉につかりたい

温泉につかりたい

 うちのお風呂には、僕に必要な手すりを十分設置してある。ひとりで入るのに不自由はないのだ。
 問題は旅先でのお風呂だ。 ホテルの部屋の場合、古いホテルほど湯船の縁が高くて、それが越えにくい。そんなときは、近くに椅子を置き、まずそれに座る。 そして、片足ずつ湯船に入れてなんとかつかることができる。が、 バランスを失って危ないときもある。
 大好きな温泉はもっと大変だ。
 入り口から洗い場や湯船まで、

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歩行者としての電動車椅子

歩行者としての電動車椅子

 電動車椅子は道路交通法上は歩行者である。だから道は右側通行。歩道を通行する。バスや電車にも乗ることができる。
 ただし、時速6キロメートル以上出るものは軽車両になる。だから通常は6キロまでしか出ないように作られている。
 これは早歩きほどのスピードだが、人は全速力で駆け出しても歩行者なのだから、疾走する権利が認められていないともいえる。が、電動車椅子は、金属の塊であるという面があるので仕方ないの

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死からの帰還

死からの帰還

三年前、コンサートの鑑賞中に私は原因不明の心室細動に見舞われ会場で倒れた。救急車の電気ショックで心拍が再生するまで13分間。通常ならそのまま死んでいる長さらしい。
 私は意識不明、人口呼吸のまま病院に搬送された。家族は「このまま亡くなるか、植物人間を覚悟してください」と言われていたそうだ。10日目、私は奇跡的に意識を回復し、自発呼吸を始めた。
 そんな私には「臨死体験」の記憶があった。果てしなく広

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街の設計に当事者の意見を

街の設計に当事者の意見を

 一般的な多機能トイレではまず自分で引き戸を右に引く。ドアは開いた状態では静止しない。右手でドアを押さえたまま、左手を体の前から回す。その左手で電動車椅子の右側肘置きにあるレバーを前に倒して前進する。トイレに入るために障碍者にアクロバットのような恰好をさせるのである。
 入ったら、狭い室内で車椅子を一回転させる。手を放すとドアが閉まるが、掛金になった鍵をかけるには向き直る必要があるのだ。それからも

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多機能トイレの使い方

多機能トイレの使い方

 多機能トイレなるものが街中に普及してきたのはいいことだ。
 障碍者用というだけでなく、赤ちゃんのオムツを替える台があったり、オストメイト対応のものもある。中には大人の障碍者が介助者によってオムツを交換できる大きな折りたたみベッドの附設しているものさえある。
 だが、こうして多機能になったトイレには時に「どなた様もご自由にお使いください」と書いてある。僕はこの言葉の意味を履き違えている人がいるので

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レディファーストの国は車椅子ファースト

レディファーストの国は車椅子ファースト

 心室細動による低酸素脳症後遺症で53歳にして身体障碍になった僕は、ちょっとしたことですぐ転倒するので、外出は電動車椅子で行うことにしている。
 自分が車椅子で移動していると、 街や交通機関のバリアフリーの進み具合、人々の親切なところや無頓着なところが、今までとは違う視野から見られて、気がつかされることも多い。そんなことを感じたまま、 書き綴っていきたいと思う。
 今回はエレべーターの順番について

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