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車椅子ひとり旅 韓国編

 電動車椅子単独で海外旅行。これこそ僕がこの夏にやってみたいチャレンジだった。行き先に韓国の釜山を選んだ。理由は釜山地下鉄は完全バリアフリーと聞いたからだ。
 大阪港を船で十五時に出航。ディナーを食べてショーを見て眠る。 翌朝十時には釜山に着いた。フェリーターミナルから電動車椅子で十分で釜山駅。近くの安いモーテルにチェックインした。ここから地下鉄でどこへでも単独で行くことができた。八日間滞在した。
 海辺のリゾート地。現代的なショッピング街。昔ながらの屋台の街。釜山タワー。美術館。博物館。
 水族館では日本の障碍者手帳で割引きがあった。人々は親切で、 ちょっとした段に戸惑っていると、 駆け寄って持ち上げてくれた。
 一度車椅子ごと激しく転倒し、 額から血を噴いた。居合わせた人々が助け起こし、紙ナプキンで血を拭いてくれた。眼鏡がゆがんでしまったので眼鏡屋に行くと、無料で修理してくれた上、日本語のできる人が薬局に連れて行ってくれた。
 薬局では消毒液つきのバンドエイドを額の傷ロに丁寧に貼ってくれた。
 この旅では、僕が通る間ちょっとドアを押さえておいてくれた手を含めると、無数の見知らぬ手に助けられた。僕は、千手観音の千の手とはこの意味だったのかと思った。

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