クダマツヒロシ
日々思うことや思い出話。ヘンな風景を書き連ねる日記のようなもの
採録した怪異談(ヒトコワ含む)を記録文章として残しています。
大阪千日前のシンボルかつディープスポットでもある味園ビルが今年いっぱいで解体されるらしい。 1956年に建造されてから70年近くも変わらず千日前に立ち続け、戦後~バブル期を越えたあとも平成から令和と長きに渡って当ビルは大阪を彩ってきた。 バブル期にはキャバレーやスナックなどがテナントに連なって毎夜華やかな光を放っていたが、バブルの崩壊とともにそれらの店舗は撤退、代わりにサブカルチャー的要素を色濃く打ち出した個性的な店舗が軒を連ねるようになる。 流れる時代に沿うように、味園ビル
昨日の朝七時台のこと。 家族揃って病室まで見舞いに行って、嬉しそうに孫とタッチして「また明日来る」と引き上げた翌朝。 余命一年と宣告されてから10ヶ月。 朝、兄から連絡を受けてすぐに向かったが、待てばいいのに父は誰の到着も待たずに早々に一人で逝った。 元々せっかちな性格で家族で外食に出かけても一瞬で見えなくなるほど、一人さっさと先を歩くような人だからまぁ納得はできる。 病室を開けると目に入ったのは父に泣きつく母。その背中をさする兄。 ピィピィ鳴っている心電図の音でまるで
2023年8月9日。 京都創造ガレージにて開催された怪談イベント『怪涼重畳』今回はその様子について写真と感想を交えながらお伝えしたい。 まずは会場となった「京都創造ガレージ」について。 京都を代表するビジネス街のある烏丸駅から徒歩7分の場所にあり、普段はレンタルスタジオ&貸スペースとして利用可能な場所だ。 様々なメディアでも紹介されているこの場所で、今回は「怪談」と「涼」をテーマとして空間と映像をフル活用したイベントがApsu Shusei氏立案により『怪涼重畳』という形で
以前入院中の祖母の体験談について話してくれた敦也さんから、妹さん(ここでは仮にAさんとする)の体験談も聞かせて貰えたのでここで紹介したい。 1.黒い糸 ある夜、自室のソファーに横になり携帯を眺めていたAさんは突然自分の頬が一瞬何かに撫でられたような妙な感触を感じたという。 いつのまにか視界の端には〈黒い糸の塊〉のようなものがあり、それに気づいた途端頬に筆を滑らせたような感覚が走った。ホコリか何かだと思い手で払いのけたのだが、数秒経たないうちにすぐにまたその黒
よく関西圏の怪談イベントに足を運んで下さる敦也さんという男性。 敦也さんには九十代の祖母がおり、現在福岡市内の病院で入院生活を送っている。 つい先日敦也さんの母が祖母の見舞いに行った時のことだ。 その日は母が病室に一泊することとなっており売店で飲み物を買うために一度病室を離れた。 部屋に戻った母親を見て祖母が、 「あんた、いっぱい誰をそんなに連れて戻ってきたんね」 と母の周囲を見ながら告げた。 当然母親は一人。周囲には誰もいない。 しかし祖母は、 「ここに(自
貝塚さんは小学生の頃、家族での外出時に交差点で大型ダンプカーと自家用車の衝突事故に巻き込まれ大けがを負ったことがあるという。 幸い命は取り留めたのだが、頭を強く打ち一時は意識不明に陥るほどの重傷だったそうだ。 数日間生死の境を彷徨い昏睡状態から目覚めたのだが、目覚めたその日から体のある一部に強烈な痛みを感じるようになったという。 昼夜問わず、なんの前触れもなく激痛が走る。声も出せず脂汗が額に浮かんでくる。まるで巨人が力任せにその一部だけを握り潰そうとするような強烈な
平山夢明作品が好きだ。 最初の出会いはどの作品だっただろうか、と本棚を眺めてみる。 恐らくは中学生の頃にコンビニで何気なく手に取った「怖い本」シリーズだったか。開始2秒で鼻っぱしらをブッ飛ばされるようなあの衝撃は、後にも先にもない。その後兄の書棚に並ぶ独白する~、或るろくでなし、デブやSinker、ダイナーなどの有名作品に流れていったかと思う。 著者の圧倒的な筆力で描かれる世界は奇天烈かつグロテスクであり、登場人物は毎度想像し得る限りの「最悪な状況」に追い込まれ
寂れたアパート。死んだ自販機。幽霊が出る噂の公園――。 喫茶タルホと潰れたパチンコ屋の脇を抜けると坂があり、それを超えるとやがてまっ暗な海が見えてくる。僕の思春期の背景はいつも夜だ。 僕は友達が少ない。 学生時代を振り返ってみても、進んで友人作りに励んできた記憶はない。 携帯に登録された大半の友人は同じ神戸の狭い町内に住んでいた人間ばかりで、小学校から大学時代までを共に過ごしてきたような、いわば幼なじみだ。思い返せばだいたいどの記憶の中にも彼らの顔がある。 中
仕事柄、深夜のタクシーを利用する機会が多い。 職場のある大阪市内でタクシーを捕まえ、高速に乗り一時間。 尼崎から西宮、芦屋の街並みを眺めながら走ると、やがて車窓には六甲山系の連なりが映り、反対側には工場地帯の大型の建物が並ぶような、神戸然とした夜景に変わる。 そんな短い深夜のドライブなのだが、怪談蒐集を趣味としている僕にとっては本業のドライバーからタクシー怪談が聞けるかもしれない絶好のチャンスだ。 その日も大阪市内でタクシーを拾い後部座席に乗り込みながら「神戸まで
柴犬、ボルゾイ、パグ、チワワ、チワワ、ミニチュアピンシャー、チワワ。 母方の実家で歴代飼われていた犬の種類だ。チワワの数が多い気もするが、だいたいそんなところだったはずだ。 他にも猫や鳥、フェレットや小型のワニまでその種類は多岐に渡ったが、その中でもとりわけ犬を好んで家族に迎えていたように思う。 元気だった頃の祖父が大の犬好きだったのが大きかったのだろう。 そんな理由で母の実家はいつも賑やかだったし、犬臭かった。 記憶では物心ついた頃から祖母の自宅に行くと、いつ
「よくネット怪談とかで『この話を読んだ人は呪われます』って話あったじゃないですか。あの時はそういうのみたいでちょっと気持ち悪かったですよ」 加賀さんが高校生の頃の話。 まだ地上波のテレビ番組でも毎週決まった時間に心霊系の番組が放送されていたという。 オカルト好きだった加賀さんは毎週それらの番組をかかさず見ては、次の日学校で友人と盛り上がっていたそうだ。 その日も前日に放送があり、番組内では有名な心霊動画が紹介されていたという。 授業を終えたあと、教
恵子さんは高校生の頃、当時流行していた「スカイプ」という音声通話アプリにハマッていたという。 学校を終え帰宅すると2階の自室に直行しパソコンを立ち上げる。そこで友人数名と落ち合い、深夜まで話し込むことが日課となっていた。 友人といっても遠方に住んでいる訳ではない。学校では常に行動を共にし、休日には揃って街に繰り出すような仲の良い同級生ばかりだった。 そのため直接顔を合わせて話す内容とアプリを通じてのやり取りはさほど変わらなかったが、学校での出来事やクラスメイトの話
葛西さんがまだ小学生のときの話。 クラスメイトの友人にマジックが得意だと自慢する八木くんという男の子がいた。 得意と言っても八木くんが出来るマジックは一つのみだったが、それが一風変わったもので他の誰にも真似出来なかったため、同級生の間ではちょっとしたヒーローだったそうだ。 葛西さんを含め八木くんの特技を知るクラスメイトは、ことあるごとに「八木くんあれやって」とねだっていたという。 マジックが始まると八木くんは決まって手の甲を上に向けて両腕を前に突きだす。 その
「おばけの話とかではないですけど。いいですか?」 怪談の取材を続けていると、こういった回答をもらうことは多い。 「何もないよ」と突っぱねられたり、小馬鹿にされるような経験も少なくないので、些細な体験でも何か思い出して話してくれるだけで取材する身分としては有り難い。 いわゆる「ヒトコワ」というジャンルについても、個人的に否定的ではなかったので「もちろん大丈夫ですよ。お願いします」といつも記録用に持ち歩いているノートを開いた。 関西在住の竹中 夏海さん(仮名/30代女性)
※原文ママ 掲載承認済(記号、数字の羅列は絵文字化け) 1. クダマツさんはじめまして😊 ○○○○といいます!突然のDMすみません😓インスタライブもいつも見ています!前回●●さんの回カラミが見れて楽しかった〜😂△△さんとの会も見たいです! 神戸のイベント行きたかった!。残念。😭次は必ず! じつは私も実体験(怪談)があるのですが、もし良ければ聞いてもらえませんか? 2. ありがとうございます!ではこちらに分けて
会社にSという先輩がいる。 チームこそ違うが、僕が所属する営業職の部長代理を務めている。 仕事も出来るし人当たりも良いので人望も厚い。 四十を超えているが、スラリとした長身に端正な顔立ちで若い女性社員からの人気もすこぶる高い。 今でこそ責任ある役職に着き、「真っ当な大人」を演じているSさんだが、僕は彼の本当の姿を知っている。 本人から聞いた話。 今から二十年近く前、新入社員だったSさんはとある趣味に没頭していた。 アイドルグループの追っかけである。当時人