ソラに咲く花、煙る夏恋。〜 #ネコミミ花火 〜
真っ白な太陽の熱が、夜に溶けた。
今夜は、お祭り。ソラに花が咲く。
約束の時間まで、あともう少し。
君と浴衣を着てお祭りに行けるのは、今年で最後かもしれない。君との花火は3回目だった。
心臓がバクバクとうるさい音を立てる。
鏡の前で、何度も確認する。
着崩れはない?お化粧は…濃すぎない?
髪飾りは?忘れ物は?あ「アレ」忘れてる!
それと…あと……。
...…心の…準備……ふぅー…。
想い出した、毎年恒例の「アレ」をぎゅっと握りしめながら、深くため息をついた。
履きなれない草履に足を引っかけて、慌ただしく待ち合わせの駅まで向かう。電車とホームの隙間が、着慣れない浴衣のせいでいつもより怖く感じた。
電車に揺られながら、何度も何度も、去年の浴衣姿の君を思い浮かべる。
君とふざけて、屋台で買ったネコミミ。
「恥ずかしいよ」なんて笑いながら、ちゃんと着けてくれた。
嬉しくて「おそろいだね」って笑ったら、君は恥ずかしそうに頬を染めて下を向く。
こんな夜じゃ、隠してもそう変わらないのにね?
そんな君が………。
そこまで想い返したところで、待ち合わせの駅の名前をアナウンスする声が聴こえた。
扉のガラスに映った自分を、もう一度確認する。
改札を抜けると、ヘンテコな銅像の前で君が待っていた。もちろん浴衣姿で。
大げさに手を振る君。力の抜けたようなヘラッとした、わたしのお気に入りの可愛い笑顔付きだ。
「そんなに手を振ったら、浴衣、着崩れしちゃうよ?」
「そっかぁ。」ネコミミが本当に付いてたら、へしょっとネコミミが折れていそうな、ションボリした顔で、君は開いてしまった襟元と、緩んだ帯を少し直した。
花火の見渡せる河川敷まで、君とふたり、歩いていく。君は何気ない顔をしながら、歩幅を合わせてくれる。
君は、わたしにだけ、バカみたいに優しい。
「バカ」なんてわたしが口にしても、怒りもしない。「そうかなぁ?」なんて、頭を掻きながら、いつもヘラッと笑うんだ。
途中、ズラリと並んだ屋台とごちゃごちゃした人混みを掻き分けて、君はリンゴ飴を買ってきてくれた。
わたしはいつも「食べ切れないからいらない。」って、無愛想に言うけど。「残ったら食べるから、買ってあげるよ!」って言いながら、君はいつも買ってくれるんだ。
ひとつだけ。買ってもらったリンゴ飴、周りの美味しいところだけ、先に食べてしまった。
もうすぐ、河川敷。
心臓のバクバクが、また大きくなった。
花火の始まる合図がした。
まるで、心臓の音が耳元で聴こえているみたいだ。
最初に上がった花火は、鮮やかなオレンジだった。君の顔が、ソラに咲いたオレンジ色に照らされて、河川敷にふたりの影を作った。
食べかけのリンゴ飴を、ギュッと握った。
「 。」
気が付くとわたしは、下を向いていた。
大事な大事な「4文字」は、ソラの花の咲く音にかき消されてしまった。恥ずかしさと焦りで、顔を上げることができない。
「こんな夜じゃ、隠してもそう変わらないよ?」
どこかで聴いたようなセリフが、頭の上から聴こえた。
この声は、君の声。
はっとして顔を上げると、そこには君の優しい笑顔。
君と観る花火は、3回目。その3年の間に、君の背はわたしを追い越していた。
見上げたわたしのお気に入りの笑顔に、ソラの花が添えられていて、とても「美しい」と想った。
『きっと、君とは長く一緒に居られないだろう。』
そう、想った。
「美しさ」は長く続かない。
きっと、花火みたいなものだから。
火花がキラキラと、ソラに零れていく。
わたしは、君の「美しさ」を閉じ込めるように、目を瞑った。
☆彡 「ネコミミ花火」
「ネコミミ花火」!いい響き♪
なので参加(o^^o)♪
☆彡 可愛い見出し画像はスズムラさん ☆彡
可愛いネコミミ画像、お借りしました!
ありがとうございます(o^^o)ノシ♪
「自分らしく」自立をするため奮闘中です。 気が向いたら応援してくれると嬉しいです(o^^o)♪ ☆☆☆ サポートのつかい道 ☆☆☆ ☆彡 イラスト・動画作成に必要なソフト等の購入費用 ☆彡 作業時間確保 ☆彡 創作の糧になる「体験」や「活動」